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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第二章 割れる大地と海の悪魔
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第六十九話 地元の英雄

 

「どうしてこうなったのかなぁ・・・」


 何故かルピーさんが用意していたサイズピッタリな可愛いドレスに身を包み、アズリエルの姿で王城まで来た俺は頭を抱えてうずくまっていた

 いやまぁここで欠席するのも手なんだが・・・


〖アズリエルさん?はやく行きましょう!〗


 果たして俺に、この弾けんばかりの笑みを浮かべる彼女を裏切れるか?

 いや、気構え的な物であれば間違いなく裏切れるんだが


「なぁルピーさんや、やっぱり俺は欠席するとするよ」

〖ここまで来て何を言いますか!ささ、ズズイッと奥まで行きますよ!〗


 ルピーに引っ張られるように門を通り抜ける

 周りから温かい視線を向けられているが、恐らく子供に手を引かれるお姉さんの図に見えるのだろう


 実際にはルピーの物凄い筋力に引っ張られているだけなので、へたに逆らうと腕が持っていかれる


「はぁ・・・こうなったらさっさと用を終わらせてさっさと帰ろう」


 成すすべなくルピーに引っ張られていると、城に入ろうとする人間が発光して消えていく姿を目にする

 いつも学園に通う時にそんなギミックは無かったはずだが・・・一応門番に確認してみる


『ああ、今回のイベントは人が多いからね、知名度毎にそれぞれ別のルームに飛んでいるんだよ』


 知名度というとクエストとかで得られるポイントの事か?

 俺はなんやかんやで滅多にクエストをしていないし、クリアしても基本アズリエルに加算されている為0に近い


「そして俺の知り合いには知名度が高い奴らが多い・・・となると!」


 同じルームになる可能性は限りなく低いってわけか

 これは希望が見えてきた


 希望を胸にそのまま門を通ろうとした所で兵士に止められる


『あ!お待ちください、貴方はかの有名な地元民の英雄・・・アズリエル様ですよね?』

「・・・」


 俺はなにやら拝むような仕草をする兵士から顔を逸らす


「チ、チガウヨ?」

『いいえ!名誉会員23085番の私の目はごまかせません!ささ、貴方様はこちらへ』


 23085番ってなんだ!?なんでそんなにいるんだ!?


 俺は頭を抱えたくなる気持ちを抑え、兵士に連れられて最上位ルームに移動する

 ルームの中はまさに舞踏会場といった所だろうか?

 豪華絢爛な装飾が並び、地元民貴族が笑いながら談笑し、最高級の食事を食べている


 そんな様子をワープしてきた冒険者達がポカンと見ている

 ちなみに冒険者組のほとんどが俺の知り合いなのは気のせいだろうか?

 世の中狭いのか俺の知人がヤバイのか


『す・・・すげぇ!これぞ舞踏会!』

『想像通りの光景だ!』

『ま・・・待て!あそこにおいでになるのは!?』

『あ・・・アズリエル様!?』


 何やら先程の兵士同様に俺を拝みだす一部冒険者達

 これは関わらないように・・・無心で豪華な食事に手を出すとしよう


『ああ・・・なんという気品に溢れたお方だ・・・』

『このような場でもあの堂々とした立ち振る舞い・・・俺達とは次元が違うぜ!』


 何やら拝んだり跪く冒険者達を無視していると、一部の貴族達がいやらしい顔を浮かべ笑い出す


『は!流石野蛮な猿共だな!まさに我々とは住む世界が違う』

『おお!汚らわしい!我らが英雄に近寄らないでもらいたい!』

『国王陛下も何故このような催し物を開いたのか』


 これぞまさに貴族といった感じの台詞だな

 そしてその言葉を聞いた冒険者が貴族から少し離れた位置で食事を始めてるぞ?


「おいおい・・・絶対この催し物失敗だろう」


 まぁ俺にとっては好都合だ、一部の緑髪を除いて地元民を避けて俺に近づくやつがいないから、知り合いと絡んでボロを出す危険が無い

 となると後は地元民から話しかけられないように少し離れた場所に移動するとして・・・

 一番端っこの席ではウチのハングリー娘が舞踏会の邪魔だからと兵士に隔離されてるし、あれとは知り合いと思われたくないから距離を取るとして・・・


 俺は地元民とも冒険者とも距離が離れた人が少ない場所に陣取る


「しかし皆の視線が凄まじいな・・・」

「それはそなたがそれなりに美しく、英雄と呼ばれているからであろうな」

「ハハッ!美しいとか笑わせてくれますね、アンタ誰ですか?」

「我を知らぬか?英雄といえどやはり凡人か」


 何やら胸を張りながら俺を見下ろす金髪男

 どっかで見た事あるんだが・・・


「我はグラフ王国第二王子にして三賢者の一人、いずれグラフ三世の名を継ぐ者である!」


 ああー・・・割と重要人物じゃないか

 確か公式設定では知略と謀略で他国の侵略を抑えてるとか

 なんか近寄りがたいオーラがあると思ったよ


 しかしそんな奴がなんで俺に話しかけ・・・ああ、俺しか周りにいないのか

 不自然に人がいない場所だと思ったら、地元民はこの人を避けてたんだな

 耳を澄ませば双方からひぞひぞ話が聞こえてくる


『流石はアズリエル様だぜ!王子相手に物怖じしてないぜ?』

『一体何を離されているのだろう・・・きっと俺達には想像も出来ない高度な会話をしているに違いない』


 会話の内容はよく聞き取れないが悪目立ちは避けるべきだな

 第二王子から離れようとした所、第二王子がしげしげと俺の顔を観察している事に気が付く


「ふむ、顔つきは悪くないが出会うのが遅かったであるな、あと5・・・いや10年速く出会っていれば求婚していたやもしれぬ」


 おまわりさーん!

 こいつロリコン通り越してペドフィリアじゃないか!


 近寄りがたいオーラというか近寄っちゃいけない人物だ!?


「はっはっは!どうやらそなたも我の威光に当てられてしまったようであるな!やはり天才とは孤独な物である」


 これが天才?三賢者の一人?次期国王候補?


 俺が頭を抱えていると、変態が何やら得意気に鼻をならす


「まぁそんなに畏まらんで良い、音楽班!曲を鳴らすのである!」


 変態の掛け声と共に音楽が流れだし、貴族達が優雅にダンスを始める

 その動きはこの前ホームで見たグレイのダンスとは比べ物にならないもので・・・


「へぇ・・・綺麗なもんだ・・・」


 気づけばポツリと呟いていた

 周りを見てみれば他の冒険者も似たような感想なのか

 一曲目が終わる頃には冒険者達はダンスに見惚れて・・・


『まぁ!舞踏会なのに踊れないゴブリン共がいるわ!』


 貴族達が冒険者達を煽る言葉で我に返っている


「なぁ変態よ、国王は何故こんな糞イベントを許可したんだ?」

「我が父グラフ二世はグラフの貴族至上主義を何とかしたいのであるよ」


 その結果最悪な空気になってるぞ?


「そうであるな、そなたも食べてばかりおらず踊って来ると良い」


 この空気で?何言ってんのこいつ?

 まぁでも確かに食べてばかりだと逆に目立つか・・・

 しかし相手が・・・


 まずアズリエルは一応女っぽい見た目だし、女の人は駄目なんだろうな

 となると男性陣になるのだが・・・知らない人と踊るのは怖いな

 そうなると知り合いになるのだが・・・


 まずグレイ、これは無い

 ダンスは上手いだろうが俺を見る目がヤバイ


 次にフーキ、これも無い

 あいつは観察眼が鋭いからな、下手したら正体がバレる


 俺の知ってる人でかつ正体に気付く可能性が低く、俺に興味が無さそうな人・・・


「・・・!いた!」


 二曲目が始まる前、俺は冒険者グループの眼鏡青年の前に移動する


「ランズロットさん、一曲付き合って頂けませんか?」

「おや?アズリエル様ではないですか、私でよろしければ喜んで」


 様付けに若干はやまった感はあるが、この際仕方ない


 ランズロットさんが俺の手を取り舞台の中央に陣取る


「私は踊りが得意じゃなくて・・・ランズロットさんは踊れますか?」

「ダンスは・・・苦手だな・・・」


 ランズロットさんが険しい顔をしているが・・・やるしかない!


 そうして始まる二曲目の演奏


 地元民の英雄が踊るという事で、地元民は遠慮しているのか前に出てこない

 練習で少しは上手くなったが・・・やはり難しい!


 しかしそんな俺のミスをランズロットさんがカバーしてくれる

 苦手という割には上手いもんだ


『ふ・・・ふつくしぃ・・・』

『流石アズリエル様・・・』

『まさか我々の事を案じて!?』

『あああああああ!アズリエルさーん!!!!!俺と、俺と踊ってくださぁい!!!』


 演奏が終わると同時に冒険者グループから拍手が溢れ、一人の緑髪がつまみ出されている

 その様子に貴族達は悔しそうな顔を浮かべる


『ふん!なかには踊れる猿もいるみたいね!』

「おやおや、国の英雄にその言葉はいけませんかな?」


 第二王子の一声に嫌味を発した貴族が顔を青くして跪いている

 もしかしなくても使われた感?


「そして冒険者諸君、先の男は中々良い踊りをしていたが、君達もどうであるか?」


 冒険者達は、第二王子の言葉にハッとした表情をしている


『アズリエル様が俺達に恵んでくれたチャンス、物にするぞオメェら!』

『『『おう!!!』』』


 冒険者達は互いに頷きあい・・・三曲目が始まると前に出て踊り出す


『はん!猿真似で・・・な!?』

『ほほぅ・・・』

『うむ!美しい!』


 冒険者は元々身体能力は高い

 つまりお手本となる物を見れば、フーキ程ではないが大抵の冒険者は踊れるのだ


「我の想像通りの結果となったな」


 遠くで変態の声が聞こえた気がするが、そんな事はどうでも良い

 良い具合に俺から視線が外れたし、今の内にドルガさんの依頼もこなしていくか


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