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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第二章 割れる大地と海の悪魔
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第六十八話 アズリエルの災難

 

 グラフには冒険者達が寄り付かない区域という物がある


 そこは街の中であるにも関わらず、常に危険が付きまとう区域

 あるものはその辺で寝転がり、あるものは道行く人に物をねだる

 耳を澄ませばいつでも誰かの言い争いが聞こえてくる


 ここはグラフにおける貧民街


 そんな所からこんにちは、アズリエルです


「いやー、ここはいつ来てもすさまじいなぁ」


 俺は何かが引きずられたような赤い跡を避けながら街道を歩く


 グラフはこの国でもっとも犯罪報告件数が少ない国として有名である、これはwiki情報じゃなく学園で教わった

 しかし報告件数がもっとも少ないだけで、犯罪は普通に起こる


 犯罪行為のラインが高いのか、それとも犯罪を隠すのが上手いのか・・・どちらにせよ国の暗部を覗いた気分である


 ちなみに何故冒険者が少ないかというと、常にスリに会う可能性が高く、喧嘩で相手をボコボコにしようものならば詰所に連行されるからだ

 そんなリスクを負いながらここに来るのは、相当な馬鹿か相当な強者かだろう


「まぁ俺は馬鹿でもないし強者でもないんだがな」


 俺はスリをしようとしていた子供・・・少年の手を掴む


 これでも中学の頃はスリに会う事を想定した訓練をして来たからな、このくらいならお手の物だ

 まぁ少年の手には俺の物であったポーションが握られてるし、あとちょっとですられてた訳だが


 しかし金目の物じゃなくてわざわざポーション?

 換金目当て・・・にしては安すぎるし、大きさ的にもRを盗む方がリスクが小さいと思うが・・・?


「・・・なんでわざわざポーションを?」


 少年は怯えたように俺を見上げて口をパクパクさせている

 スリで生計を立ててるとかならこのくらいで怯えたりしないと思うが・・・訳アリか?


 俺は怯える少年を胸に抱き寄せ、頭をポンポン撫でる

 撫でるとフケやらなんやらが落ちていくが、まぁ良いや


「大丈夫、悪いようにはしないから」


 少年は俺を見上げたままポカンとすると、たどたどしくも口を開く


『いも・・・とが、怪我・・・て』


 なるほど、それでポーションか


 まぁ俺としてはポーションくらいここであげても良いが、ポーションってそれなりの値段するからなぁ

 それにタダで何かあげるのは、この子の為にもよくないだろうし・・・ええい仕方ない!渡りに船だ!


「君、妹さんの所まで案内してくれるかな?あと、何かお礼を考えておきなさい」


 少年は俺が何を言ってるのか頭を傾げると、何か納得したように顔を輝かせる


『こっ・・・ち!お・・ねぇちゃん!』


 誰がお姉ちゃんか!

 まぁこんな子供に目くじらたてても仕方ないので好きに呼ばせてやるか・・・


 はしゃぐ少年に手を引かれ、視線を上に向けたところで凍り付く


 そこにはニマニマとした表情を浮かべる金髪娘


〖人知れず余の為に善行を重ねる・・・流石正義の変身ヒーロー!私、感服しました!〗

「すみません、人違いです」


 俺は何やら物凄い勢いでチャットを流す金髪娘を背に、少年に手を引かれて歩き出す


〖何をおっしゃいますか!私の目はごまかせませんよ?しかしまさかこんな所でアズさん・・・いえ、アズリエルさんが善行を重ねていたとは・・・〗

「ところで少年よ、妹さんはどうして怪我を?」

『喧嘩・・・巻き込まれて』


 ああ、この辺りは喧嘩が多いらしいからな

 しかしそれで巻き込んだやつらはこんな子供達を放置したのか?本当にクズだな

 まぁこの地域ではそれが普通なのかもしれんが


〖許せませんね!ここは私達でその不届き者を成敗するというのはどうです?アズリエルさん!〗


 どうもこうもないが


『あの・・・人?ずっとついてきてる』

「あれは関わっちゃいけない人だよ、目を合わせちゃいけません」

〖魔物でもついてきているのですか?それならば私がお手伝いしますよ!〗


 物凄い勢いでチャット欄が流れていくので、俺は無言でチャットを非通知設定にしておく

 しばらくすると俺がチャット欄を見てないのに気づいたのか、右下の方を指差しだす

 その動作久しぶりだな、まぁ見ないけど


 そのまま少年に案内された居住スペース?で妹さんにポーションを飲ませ、お礼に綺麗な石を貰った

 インベントリで確認しても粗末な石としか表示されないし、普通にただの石ころなのだろうが、恐らくあの子にとっては宝物なんだろう

 折角なので間違えて捨ててしまわないようにロックをかけておく


 たまには良い事をするのも悪くない


 俺はウンウン頷いて、背後でずっと何かを入力しているであろうルピーに振り返る


「それで?なんでルピーさんは俺についてくるの?」


 ルピーはやっと俺が話しかけてくれたのが嬉しかったのか、何やらドヤ顔をかましながら沈黙している

 ああ、チャット非通知のままだった

 このままでは会話が出来ないのか


〖それでですね!私はこう言ってやったんですよ、貴方に貝は似合わないってね!〗


 あ、いや、通知ONにしても会話出来ないわ

 というかそこだけ聞くと逆にどんな話だったのか気になるんだが・・・まぁこの後のチャットいかんではどういう内容か大体予想出来る筈・・・


〖そういう訳で、アズリエルさんに貧民街の場所を教えたのは私ですからね、私がここにいるのは必然ですよ〗


 どういう訳で!?話の繋がりぶった切ってない!?


 ま、まぁいいや、このくらいの不思議、精々2~3日不眠症になるくらいだ


「そうだったのか!じゃあ俺はこの辺でお暇させてもらうな!」


 とりあえず適当に話を合わせてルピーさんに背を向けるが、フードを引っ張られて止められてしまう


〖何をおっしゃいますか!今日はこれから舞踏会じゃありませんか!〗


 どうやら逃がしてはくれないようだ

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