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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第二章 割れる大地と海の悪魔
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第六十三話 後世まで続く汚名

 

「ふぅむ・・・まずい事になったな」


 俺は目の前で白目を剥いて倒れるサラリーマンのおっさんをフーキ棒でつつく


 見た感じただの下っ端社員みたいだから助かったが、不審者さながらの入場をした身としては複雑な物がある


「あ・・アズ?何か今人の悲鳴が聞こえた気がしたんだが?」

「ああいや、ムーたんを迎えに来たのかな?給仕っぽい人がドアで頭ぶつけちゃってさぁ」

「気を付けてくれよ?給仕といえど家の者に手を・・・お、お父様ぁ!?」


 後ろから覗き込むように視線を向けて固まるムーたん

 ・・・お父様?


 という事はなんだ?この人はこの家の当主?

 しかもグラフでトップ3に入る名家の?


『シープ卿!どうかなさいましたか!?』


 俺は慌ててこちらに駆け寄って来た兵士の頭を殴り、ムーたんの親父さんごと部屋に引きずり込む


「なななななにしてるんだアズ!?」

「おおおお落ち着くんだムーたん!まずは素数を数えよう!1,2,3・・・」


 ふぅ・・・

 冷静さを取り戻した俺は改めてサラリーマン風のおっさんと兵士を見る


「俺達は何も知らない、こいつらが勝手に気絶してた、いいね?」

「いいわけあるかぁ!お父様はこれからかの占い師様と会談があるというのにぃ!?」


 俺の襟首を掴んでムーたんが追い込まれたような形相を浮かべている

 どちらかというと俺の方がまずい状況な筈だが?


「素直に言ったら許してもらえないかな?」

「それはダメだ!今回の件は国王陛下直々の依頼の一つ、間違っても反故にはできない!」

「反故にしたら?」

「首が飛ぶ」


 首が飛ぶっていうのは比喩表現じゃないんだろうなぁ・・・絶対階級の定めってやつだろうか?


 まぁ俺としても?学友の親父さんのピンチを助ける事はやぶさかではないが、面倒事に巻き込まれたくないという気持ちもある


「・・・ここはアズが当家に忍び込んできたスパイで、お父様は名誉の」

「オーケイ!つまり占い師の案件をなんとかすれば良いんだな?」

「そういう事になるが・・・何か良い案があるのか?」


 俺はムーたんの親父さんから衣服を剥ぎ取り、その衣装を装備する


「俺が親父さんのふりをする」

「ええ!?」

「元々俺のせいだし!大丈夫、こういう時のアドリブ力には自信がある」


 何よりこのままスパイとして扱われれば、今後のグラフでの生活がブラックアウトしてしまう


 俺はキメ顔で宣言すると

 呆然とするムーたんを無視して、せめて顔が隠れるようにフードを被る


「顔は隠せるとして・・・背丈が圧倒的に足りてないぞ?」


 ムーたんの言葉に足元を確認する


「なるほど、盲点だった」


 ムーたんが頭を抱えているが、気づかなかったんだからしょうがない

 しかしどうしたものかね?


 俺が次の策を考えているとムーたんが近づいてくる


「仕方ない、アズ、お前を信じる」

「ん?大船に乗ったつもおわ!?」


 ムーたんは俺の股の下に頭を入れるとそのまま立ち上がる


 なるほど肩車か、その発想は無かった


「しかしムーたんよ、こういう場合俺が下なんじゃないか?」

「何のこだわりだよ!そろそろ預言の時間だ、準備は良いか!?」

「仕方ない、ムーたん!任せた!」

「任せろ!」


 肩車により謎の一体感を覚えた俺とムーたんは、まるで元々一人の生物だったかの如く急ぎ部屋を飛び出す


「ムーたん!占い師の場所は知ってるのか?」

「当然だろう?僕を誰だと思ってる、この家の跡取りだぞ?」


 誰も何もムーたんだと思っていたが・・・ここは任せて良さそうだな

 しかし自分で提案しておいてなんだが、意外と誰も気づかんもんだな


 不思議に思いながらこちらから目を逸らす給仕達を見ていると、ムーたんが小声で捕捉をいれてくれる


『お父様はその・・・何というかとても頭皮が薄いんだ、まじまじと顔を見られるのを嫌うんだよ』


 グラフでも指折りの大貴族当主、娘に頭皮の事を言われる

 何と哀れな・・・


 何やら目頭にくるものに耐えていると、大きな扉の前でムーたんが足を止める


『アズ、準備は良いか?』

『いつでもおっけーだぜ!』


 ムーたんが俺の返事を聞き、ドアに手をかける

 部屋の中では黒い肌が特徴的な、角をはやした人物が笑顔で迎えてくれている


『お待ちしておりました、シープ卿』


 いや?人間種じゃないよね?ていうか悪魔種だよね?

 先に硬直が解けた俺は、微動だにしなくなったムーたんの背中を叩いて我に返す


『本日はわたくしめの為に人払いまでして頂き恐悦至極に存じあげます・・・しかし随分と珍しい恰好をしておられますね?』


 人払い?ムーたんパパは依頼人が悪魔種って事を知っているのか

 ・・・見られちゃまずいから・・・という事なんだろうなぁ・・・余計帰りづらくなった


「え、ええ!私は頭皮が薄いと噂されているようなのでこうやってローブで隠しているのですよ」

『そ・・・そうでありましたか・・・』


 俺の言葉に悪魔種が良い具合に目を逸らしてくれた、具体的には頭部から

 なんか下から怨嗟の念を感じるが、後にしろ!今はそれどころじゃない!


『それで今回の占いなのですが、この国で悪だくみをしている人物を・・・でありましたね』


 ムーたんパパの言葉遣いがどんなのかは知らんが、とりあえず山場は乗り切れたらしい

 悪魔種は訝しみながらも椅子に座り語りだす


『君臨せし王の子、亡き殻になり今も彷徨う』


 悪だくみをしている人物を占うったんだよな?なんかよくわからん事言い出したぞこの悪魔

 だがまぁどんな答えだとしても、俺はそれっぽい事を適当に返せば良い


「それは・・・この国を揺るがしかねない大事と認識して良いだろうか?」

『そうとっていただいて問題ありませんよ、しかし面白い結果が出ましたな・・・実は悪魔領においても現悪魔王に対してのクーデターが頻発しているのですよ・・・』


 いや、知らんよ

 こいつは占いに来たんだよな?なんで悪魔領の話をしだしてんの?


『かつては悪魔の王に使えたわたくしめはどうすれば良いでしょうか・・・!!!』


 いや、だから知らんよ

 というか何でこいつの方が焦燥にかられた顔してんだよ!!


 俺が悪魔の言葉に頭を抱えていると

 ムーたんが窓に向かって歩き出す


 流石のムーたんもこんな占い師でおこなのか?

 そう思っていると、ムーたんが追い詰められたような声で呟く


『あ・・・アズ・・・』


 バレたらどうするつもりだ!?

 俺は急ぎ悪魔の方を確認する


 どうやら悪魔の位置までは声は届いていないらしい

 ・・・その為に窓際まで来たのか


 ムーたんは軽く震えている


 恐らく相手が悪魔種という事で怯えているのだろう

 俺はムーたんを安心させるように優しく言葉をかける


『どうしたムーたん?人間には見えないかもしれないけど、あれはきっと顔色が悪い悪趣味なアクセサリーをつけたおっさんだよ』


 しかしムーたんは体を震わせる

 余程悪魔種が怖いのか?


『緊張してトイレに行きたくなってきた!』


 どうやら違ったようだ

 ムーたんを覗き込もうとした俺は窓の外を眺める


「今日も良い天気だ・・・」


 しかしまずい事になった

 このままではムーたんが色々な意味で散ってしまう


「占い師様・・・少し席を外してもよろしいですかな?」

『そ・・・そんな!どうかシープ卿!かつて知恵の賢者と言われた貴方様のお言葉をお聞かせください!』

「ええい!話を聞かんとは言ってないだろう!?このまま行くと私が後世まで尻を拭き続ける汚名を背負う事になるのだ!!」

『あ・・・そういう事でしたか、失礼・・・わたくし達悪魔は無縁の物でしたので・・・』


 そう言いながら占い師がトイレの扉に向けて手を広げる


 ああなるほど、貴族邸では部屋に隣接してトイレが設置されてるのか、なるほどなるほど・・・


 よりマズイ!


 BGOのトイレ、それは現代日本でどこにでもあるトイレ

 そう・・・扉の向こうにはしきりの一つも無い普通のトイレだ


『ムーたん・・・漏らしても良いがバレるなよ?』


 そんな俺の言葉を聞いたムーたんはだがしかし

 トイレに向かって歩き出す


『おいムーたん!?わかってるのか!?あの狭い個室じゃどうやっても『アズ!!』


 俺の慌てた声はムーたんの声にかき消される


『すまない・・・僕と一緒に穢れてくれ・・・』


 そんな呟きと共に再びトイレに向けて前進を始めるムーたん

 俺が無言でムーたんの首を太ももで絞めると、ムーたんの動きが鈍くなる


 冗談じゃない!

 これは早急に悪魔に助言をしないといけない


『シープ卿・・・?』

「いえ、少し波がおさまってきたようです、お話を続けましょうか」

『し・・・しかしシープ卿の上半身と下半身が人間種とは思えぬ程回転し』

「黙りなさい!君は今叡智の賢者の前にいるのだぞ!」


 俺はもがきながらもトイレに向けて前進するムーたんの足止めをしながら急いで頭を回転させる


「その者、黒き衣を纏いて紫色の野に降り立つ・・・」


 俺は外を見ながら昔見たアニメの言葉を適当に口にする

 占い師は『おお・・・』と息を漏らす


「そして国の命とも言えるなんか大事な物を奪うであろう・・・!」


 続け様に放った俺の適当な言葉が言い終わる頃には、目を輝かせながら俺の前で跪いている


『それは・・・新たなる悪魔の王の誕生という事ですね・・・!』

「え?ああ・・・そういう事になるでしょう・・・」


 俺が震える悪魔に適当に相槌を打つと、感極まったのかついに涙を流し始めてしまった


『ありがとうございます!ありがとうございます!』

「いえ・・・良いのです・・・良いから・・・良いからはやく出てけ!?出てかないと大変な目にあうぞ!?」


 てめぇがブンブンと上下に手を振るったせいかムーたんが一際大きく震えてるんだよ!?


 その後、何度も礼を言いながら俺達の前から立ち去る占い師の背中を見送った俺達は、急ぎトイレに向かい駆け出すのであった


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