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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第二章 割れる大地と海の悪魔
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第五十六話 RPGの重大イベント中って一部機能が制限されますよね?あれってお約束なんでしょうか

 

「レベルが10になりました!!」


 --------------------------------------


<Lv10

<HP70 MP40 力18(+1) 防御6(+3) 知力45(+13) 俊敏5(+2) 運25 


<スキル:人形使い、自然界の盟友、精霊術、自然、独力

<アーツ:エレガントクック、精霊化、アイスピックハンマー、プロテクション


 --------------------------------------


 今までのステータスと比べると、力と知力と運が大きく上昇している!

 防御と俊敏は相変わらず貧弱だが、まぁ氷を滑ったりジローで移動したりとサボってるから仕方ないか


「しかしそんな事よりもぉ!!!遂にレベルが10を超えたという事が重大なのですよぉ!!!」


 俺は誰に言うでもなく机をバンバン叩く

 レベル10!それが意味する事それすなわち!


「転職が出来るようになるという事である!」


 長かった・・・ルピーがフードファイターになって大分たつが、俺もやっと冒険者という職から卒業する時が来たか


「まぁ問題があるとすれば・・・」


 俺は誰もいないテーブル席に静かに座り直し、手を組んで虚空を眺める


「ここが船の上で、転職する施設が無いって所だよなぁ」


 なんだろう、何でRPGでは重大イベント中って一部機能が制限されるんだろう?お約束ってやつだろうか


 レベルが10に上がった喜びと転職出来ない悲しみの何とも言えない狭間でユラユラしていると、部屋の扉がノックされる


 はて?俺の部屋を訪れるような変わり者はこの船には・・・結構いるな

 しかしグレイはリバースして部屋で寝込んでるし、馬鹿兄とメアリーさんは会議中だし・・・となると一人しかいないか


 こっそり扉の隙間から外を見ると、最近ご無沙汰な我らが風紀委員が「留守かいな」と頬を掻いている


「ようフーキ、こんな時にどうしたんだ?」

「お?なんやおるんならもうちょい早う・・・どないしたん?」

「最近何かと自分の不注意を祟る事が多いからな、少し用心してんだよ」


 扉を少しだけ開けた状態でフーキを見ていると、溜息を吐かれてしまった


「まぁアズにとっては良い心構えやと思うけど・・・まぁええわ、ちょい面貸してくれへん?」

「え?何?俺これからフルボッコにでもされんの?」


 扉を閉めようとした所で、無理矢理こじ開けられてしまった


「違うて、さっき赤金のクラマスと戦った時杖お釈迦にしてもうたやん?」

「なんだその事か、あの杖はちゃんと水葬しといたぞ?」

「いや何やっとん!?修理すれば・・・まぁアズやから仕方ないね」


 何か勝手に驚いて勝手に諦められているが、その残念な奴を見る目はやめてもらいたい


「何も考え無しに水葬したわけじゃないぞ?ほら、ここって海の上だから修理出来ないだろ?少しでもインベントリを軽くする為だよ」


 武器って何気に重量が凄いんだよ

 修理も出来ずに邪魔になるくらいなら、捨てた方がマシと判断したまでだ


「なるほどね、でもアズは一つ勘違いしとる」


 フーキがなんかニヤニヤしててイラッとするな


「キャー!!!変な男が部屋に無理矢理ー!!!」

「ちょちょちょ!!!!」


 おかえしに悲鳴をプレゼントしたら口を塞がれてしまった

 まぁ久しぶりに慌てたフーキが見れたので良しとしよう


「ももが?もがもももがもが?」

「・・・もう叫ばへん?」


 いつになく真剣な表情のフーキに首を縦にふっておく

 だがこの状況でその台詞は逆にやばたんな気がするぞ?


 何やら挙動不審に周りを確認し汗を拭うフーキから距離をとり、再び扉に隠れるように話を切り出す

 もしフーキに暴れられたら俺のステータスだとどうしようもないからな


「それで?勘違いって?」

「RPGのボス戦も前って必ずお店があるやろ?」

「あるな、大抵そのエリアの最強装備が・・・まさか?」

「そのまさかやね」


 ナンテコッタイ!!!こんな所で遊んでる場合じゃねぇ!!


 俺は扉をバタンと開き、顔をぶつけてうずくまるフーキを無視して階段目掛けて駆け出す


「あ、ちょ!?どこにあるか知っとるん!?」


 ◇


『やあ、いらっしゃいませ』


 大型船の船底に位置する酒場の隣、開店していないと物置としか思えない場所で黒髪ロングの青年がニコリと笑みを浮かべる


「あ、どもです、お店ってレイノールさんのお店だったんですね」

『・・・ええ、お久しぶりですお客様!いついかなる時でも、お客様に必要とされるものを何でも用意するのがモットーでありますので!!』


 レイノールさんが輝かんばかりの笑顔を向けてくる


「なぁなぁフーキ、やっぱ商売人ってすげぇな!一度しか顔を合わせた事がない俺の事覚えてるぞ!」

「いや、あれは覚えとらんのやないかな・・・というかそれを言ったらアズもやろ?」

「ん?ああ、俺の場合は単純にそんなに人と接する事が無いからな」


 フーキが何やら「せ、せやね」と苦笑いを浮かべているが、今はそれどころではない


「それでそれで?レイノールさん、杖は置いてますか?」


 キョロキョロ周りを見回すが、見た感じ周りに商品らしき物は置いていない


『ええモチロン!今在庫があるのは・・・樫の杖、うみなりの杖、雷帝の杖、風封棒(ふうふうぼう)等ですかね』


 商品の名前を言いながらインベントリからアイテムを取り出すレイノールさん

 なるほど、これは冒険者ならではの商店の開き方だ、これは革新的な便利な技法なんじゃないか?


「一番最初のやつ以外全部強そうですね、しかし杖だけでそれだけ持ってるとなると重量制限がヤバくないですか?」

『能力としてはどれも似たりよったりですよ、ただ特殊な細工がしてあるのです・・・重量制限に関してはとっくにオーバーしていますので、同じ商店の者が来るまで私は一歩も動けませんよ』


 革新的便利技法かと思いきや、商品が売り切れるか『あがって良いよ』って言われるまで働かされ続けるブラック技法だったでござる


 まぁそれは良いや、レイノールさんも気にしてる感じじゃないし


「それで?特殊な細工ってどんな感じなんですか?」

『そうですね、例えばこのうみなりの杖!何と装備者はウォーターのアーツを使えるようになります』

「ほほう!装備するだけでアーツとな!」


 ウォーターがどんなアーツかは知らんが、アーツ乞食の俺としては是非とも欲しい


『お次にこの雷帝の杖!これは装備者の雷属性を数倍に引き上げる能力を持っております!』

「雷属性を数倍!?」


 上がる量が半端なくないか!?惜しむならば俺は雷属性と無縁といった所か


『そして最後にこの風封棒(ふうふうぼう)!なんとこの商品・・・』


 な・・・なんなんだ!?どんな効果なんだ!?


『とても細工が細かい!以上が現在売りに出せる杖の説明になります』


 俺がズコーッと倒れていると、レイノールさんがニコニコしだす


『それで?お客様のご予算の程はおいくらでしょうか?』

「ん?ああ、そですね・・・今は15Rですかね」

『15・・・』


 レイノールさんがみるからに意気消沈している

 仕方ないだろう?温泉作ったりお店作ったりで使い切っちゃったんだから


『それでは買えてもこの樫の杖くらいですかねぇ・・・次に安い風封棒(ふうふうぼう)でも50R、うみなり雷帝は共に200Rからとなっております』

「やっぱそうなりますよねー・・・じゃあその樫の杖を」


「買います」という前に、フーキがジャラリとRをレイノールさんの前に並べる


「・・・どういうつもりだフーキ?」

「いや何、今回樫の杖がダメになったんはわいのせいでもあるからね」


 恥ずかしそうに頬を掻くフーキに思わず吹き出してしまう


「ぷ・・・そっかそれならありがたく頂くとしようかな、ありがとなフーキ」


<風封杖:力+1 知力+5>


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