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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第二章 割れる大地と海の悪魔
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第五十二話 スニーキングミッション

 燦燦と日が照り付ける一人の砂浜で、冷たいメロンソーダーを飲む


「あ~やっぱ夏は海水浴だよなぁ!」


 なんかふわふわして良い気持ち・・・しかし何で誰もいないんだ?

 そう思いながら海を見ていると、最近見慣れたアイツが突然現れ水をかけてくる


「冷た!?今どこから・・・ああ!これ夢か!」


 しかし夢の中で海水浴とは中々しゃれた・・・あれ? 

 確か寝てる時に水の夢を見ると・・・


「す・・・スタアアアアアアップ!!!!」


 急速に覚醒する意識の中、俺は下半身を確認する

 ふ・・・ふぅ・・・濡れてない、セーフ、この歳でお漏らしはキツイ


 安堵の息を吐いていると、見慣れた顔が俺の顔を覗き込んでくる


「お・・・おいアズ、大丈夫か?」

「おうムーたんおはよう、そしてその台詞はそのままそっくりお返しするぜ」

「僕は問題無いよ」

「そっか」


 まぁ見た感じ毒は解けてるみたいだし、ひとまずは安心か?


「しっかし・・・何処だここ?」


 ガタンという大きな音と共に、埃の匂いが鼻の中に充満する


 揺れるカンテラがキィキィとなり、不衛生な布の隙間からネズミがチューチューないているのが聞こえる


 目の前には大きな鉄格子


「見たところ牢屋の中のようだが・・・」

「ああ、僕達はあの金髪仮面に拉致されたんだ・・・と思う」

「思う?まず間違いなく拉致されただろうな、それに今は船の上か」


 俺は周りを見渡しながら状況を確認する


「アズもそう思うか?地面が揺れてるからな、僕も船の上だと思っていた」

「あ、うん」


 俺の場合はマップが船の形で、その外側が青一色だったからだったんだが・・・・

 まぁいいや


 他には・・・同じく攫われてきたであろう子供が4人か


<クエスト:誘拐された子供が発生しました>

<成功条件:海賊に誘拐された子供を無事に家まで送り届ける>

<失敗条件:NPCの誰か一人でもHPが0となる>


 まさかのクエスト発生ですか、そうですか

 ステータス画面を開いて、フレンドにメッセージやチャットを送る


<システムログ:このエリアではチャットを送る事はできません>

<システムログ:このエリアではメッセージを送る事はできません>


「やっぱダメか」


 BGOってなんやかんやでチャット不可エリア多いな・・・お!ログアウトは出来るのか

 こうなったら一度ログアウトして皆に連絡を・・・


 そう思いながら周りの子供達を見回す


『うぅ・・・おかあさん・・・』

『おうちに帰りたいよぉ』

『グスッ・・・ひっぐ』


 もしもその一瞬で海賊が来たら・・・そう思うとログアウトし辛いなぁ

 しかし俺は強い部類じゃないし、一人で守り切れる自信も無い


 どうしたものか考えているとムーたんが立ち上がる


「皆!大丈夫だ!僕はこう見えて冒険者なんだ!」


 子供達が「ほんとうに・・・?」と期待の眼差しでムーたんを見つめている


「僕の名はムートン、シープ・ムートン!君達を無事家まで送り届ける事を宣言する!」


 ムーたんは子供達の視線にたじろきながらも声高らかに宣言する

 その宣言はむしろ冒険者っぽくないが・・・途端に子供達の雰囲気が明るくなった


 このBGOの世界で、冒険者というのはそれだけ強力な存在なのだ


『おうちに帰れる!?』

『そうだよ!助かるんだ!』

『ムートンさん!ムートンさん!』


 そんな明るくなった子供達とは対照的に、俺の顔は険しくなる


 ムーたんはただのNPC、何の才能も無い子供が勇気を振り絞って皆を奮起している

 ほんとの冒険者の俺が・・・何を臆病になっているのか


「俺も冒険者だよ・・・アズだ」


 それによくよく考えたら囮の目的は達成したのだ、これ以上隠しておく必要は無いだろう


『君・・・でも冒険者に子供はいないはずじゃ・・・』

「それはムートンもだろ?それに俺はこう見えて君らより大分年上だ」


 ムーたんと一緒に使えそうなアイテムを子供達に分配する

 何も無いところや、カバンから出てきた大量のアイテムに驚きながらも、全員必死に握りしめている


「でも正直相手の実力が未知数なうえ俺は強くない」


 俺の言葉に子供達が不安の表情を浮かべるが、背中を向けて牢屋の鍵の開錠を始める


「だから自分の身は自分で守るぐらいの気構えでいてくれ」


 厳しいかもしれないが事実を正直に伝え、開錠を終え振り向く


『僕達も・・・がんばる・・・!』

『冒険者が二人いるんだ!大丈夫だ!』

『ここここの私に恐れなんてありません!』


 泣き言の一言でも飛んでくると思ったが、、さっきまでの泣き顔が嘘のようだぜ


「君達には僕がついている!安心してくれ!」


 最後にムーたんが改めて宣言する

 ふむ、珍しくムーたんが頼もしく見えるな


 子供達の相手をムーたんに任せ、看守室のドアにこっそり穴を開けて中の様子を確認

 中にはボサボサ頭を掻きながら欠伸をしている海賊が一人と、居眠りをしている海賊が一人


「皆はそこで待ってて・・・ムートンはこっちに」


 子供達を牢屋の中で待機させムーたんと二人、扉の両横に張り付いて扉をノックする


『ぁあ?なんだぁ〜?』


 ボサボサ頭が扉を開け中に入ってきた所でムーたんに合図をする


 示し合わせた通りムーたんが杖で海賊の腹を思いっきり殴る


『カ・・・が・・・てめ・・・!』


 海賊は苦しそうに息を整えているが、そんな暇は与えない!


 反対側の壁に張り付いていた俺は、空中回転しながら脳天をうちぬく


 海賊のHPゲージが一気に白くなりその場に崩れ落ちる


『やっやった!』

『流石冒険者!』

『いいですわよ!』


 子供達が歓声を上げる


『う?なんだぁ?おい!相棒!』


 子供達の歓声でもう一人の海賊が目を覚ましてしまった

 眠気眼で海賊がサーベルを構えるが、隠密で後ろに回り込んでいた俺は、海賊の肩に乗り首元を掻っ切る


『!?っ!?』


 海賊は何が起きたかわからないといった表情を浮かべたまま痙攣している


 ウンウン頷き改めて子供達に静かにするよう合図する

 両手で口を押さえてコクコク頷く子供達にホッコリしながら先に進もうとして・・・

 真っ青な顔のムーたんに気づく


 視線の先には海賊の死体

 ああ、死体が消えるまで少し時間があるからなー・・・


「無理しなくていいんだぞ?」


 ムーたんは少しの沈黙の後に首を横に降り、笑顔を向けてくる

 顔は真っ青、足取りはフラフラなままだ

 とてもじゃないが連れていけないな・・・


「俺が船の中の海賊を始末してくるから、ムーたんは子供達の護衛を頼む」

「な!?僕も行くぞ!?」

「その足じゃ無理だろ?それに子供達を守るのも大切な仕事だ」

「だけど・・・うん、わかった」


 珍しく素直だな


 しかしフラフラなムーたん一人では心配なので、用心棒にジローを出現させる


『きゃー!何この子可愛い!』

『魔物!?』


 ジローの出現に驚く子供達をムーたんに任せ、一人看守室の先にあった階段をのぼる


「ドアは4個か・・・」


 物音をたてないよう一番近いドアから確認していく


 一つ目のドアからは海賊の談笑が聞こえる・・・休憩室かな?

 中の様子を確認すると4人の海賊が寝台で話しているのが見える


 二つ目のドアからは調理場独特の匂いがするので調理場だろう

 中には痩せた海賊と小柄な海賊がコック帽をかぶり料理を作っているのが見える


 三つ目のドアからは人の気配は感じないが何の部屋かわからない

 中の様子を確認すると麻袋と樽が大量に置いてあるのが見える


「ここも外れ・・・けど隠れるのに使えそうだ」


 四つ目のドアからは冷たい風が入って来るのがわかる


 穴をあけて様子を見ると、外の景色が見える


 RPG特有のガレオン船には少なくとも視認できるだけで3人は海賊が見える

 船はまだ出航して間もないのか、遠目に浅瀬が見える


「この距離なら・・・いける!」


 しかし今無理矢理突破するのは危険か・・・

 挟撃を避ける為敵戦力の殲滅にとりかかるとしよう


「ふむ・・・まさかこのアイテムを使う時がくるとはな・・・」


 調理場の前に立ちドルガさんから受け継いだコック帽を取り出して装備する


 これなら小柄な海賊に見えなくもないんじゃないか?

 深呼吸をして調理場の扉をノックする


「こ・・・交代だ!」


 中に入ると小柄な海賊が歓声をあげて失神する

 その表情はまるで地獄から解放されたかのようだ


 この世界の厨房はどこもこんなのなのか・・・?

 調理場の中に潜入すると痩せた海賊がチラ見でこちらを確認する

 バレテナイバレテナイ!


『おい!そこの!調味料とれ!』


 大鍋をかき混ぜながら俺に指示を出す海賊に安堵しつつ

 背中を見せた海賊の首元を、包丁で切り裂きHPゲージを白く染める

 ついでに失神している海賊のHPも白く染めておく


 不意打ち状態でダメージが大きく上がる状態での弱点特攻

 これに耐えれるやつは余程の体力馬鹿だろう


「なむなむ・・・さてお次は」


 倒した海賊に両手を合わせると次の作業にとりかかる・・・それは・・・


 調理人として許されざる行為・・・料理に一服盛る!


 完成した鍋に薬を注ぎ込み、木製のカップにいれて休憩室に持っていく


 これで安全に敵の数を減らせるはずだ!

 我ながら完璧な作戦に黒い笑みを浮かべ、休憩室の海賊に声をかける


「料理できたぞー!」


『うっひょー!待ってました!』

『はらへり~はらへり~』

『いっただっきまーす!ひぎっ!?』


 一人目の海賊が食べ始めた所で痺れ薬の効果が発動してしまった

 やばい!はやすぎる!


『おい!どうした・・・!?』

『ま・・・まさか!?

『よく見たらお前血だらけじゃねえか・・・!』


 三人の海賊は痺れている海賊を見て驚愕の表情を浮かべ・・・

 バレた・・・!?

 完璧な作戦が失敗した俺は包丁を構え臨戦態勢に入る


『気絶するほどうまいのか!?ひぎっ!?』

『うめえ!うめぇ!ひぎっ!?』

『ひゃっほーう!新鮮な肉料理だ!ひぎっ!?』


 全員馬鹿で助かったよ

 状態異常で動けない海賊を殲滅して子供達と合流する


「おーい!とりあえず安全は確保してきたぞー」

『ほ・・・ほんひい!?』

『流石冒険者ひい!?』

『私は心配なひい!?』


 なんだ・・・?皆の様子がおかしい

 まさか敵!?

 後ろを振り向くが誰もいない

 困惑する俺にムーたんが近づいてくる


「アズ・・・血だらけだから少し・・・結構怖いぞ?」

「ああ!なるほど!」


 いつもこのぐらいの返り血では誰も反応しないので、感覚が麻痺していたようだ

 しかし今着替えれる物が無いんだ、我慢してくれ


 怯える子供達を人質に取られないよう、樽の部屋に誘導する


「次はここで待っていてくれ・・・」

「アズ!さっきは見苦しい所を見せたが・・・今度は僕も行く」

「んー・・・でもなぁ」


 外の海賊に不意打ちは通用しないだろう


 最悪俺がやられても騒ぎを聞きつけた仲間が助けに来るかもしれない


「ムーたんはいざという時の為に皆を守ってくれ」

「けど!」

「じゃあもしもの時は助けてくれ」


 納得してない様子のムーたんの頭をポンポンと撫で外への扉の前に立つ


「あとは外の敵をなんとかするだけだ」


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