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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第二章 割れる大地と海の悪魔
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第五十話 MEDICALTIME

 

「と、いう事がありましてね、ドクターに何か良い提案はありませんかね?」


 眼鏡の青年、俺の担当医になったドクターが、針がちょっとだけ動いた握力測定器を見ながら呟く


「レベル1設定の筋力だと普通の子供並みの筋力と・・・良い提案と言われてもね、どうして私にそれを聞くのかな?」

「俺の知り合いで唯一の常識的な大人ですからね」


 レベル1の貧弱ステータスでは持ちあげるのさえキツイ測定器を渡す


「大人・・・アズ君とはあんまり歳は変わらないから、その呼び方は少し複雑な物を感じるよ」


 何やらションボリした様子でカルテに何かを書きこむドクター


「お医者さんは歳をとってみられると喜ぶと思ったのですが」

「アズ君に言い換えれば見た目より若いと言われるような物だが?」

「それは嫌ですね、気をつけます」


 昔から見た目より若い!と馬鹿にされてきた上に、今ではこのチンチクボディだからな


「それで・・・変なテンションになって知人におかしな言動をとってしまい、顔を合わせづらいと」

「説明ありがとうございます、あとこれは知人の話ですからね?」

「はいはい、それで?おかしな言動というのは?」


 何やら優しい視線を向けられているが、頼っている立場だから甘んじて受けよう


 ドクターから視力測定で使う何か黒い棒的なやつを受け取りながら、その時の状況を説明する


「そうですね、強いて言うなら厨二病的な・・・かつキザッたらしい言動をとっていましたね、右で」

「アズ君の歳だとおかしい話でもないと思うけど?じゃあ次はこれ」

「何をおっしゃいますか!・・・そこは上ですかね」


 視力測定で使う棒を握りしめながら、あの時の事を思い出してうずくまる


「近年では厨二病が許されるのは小学生までです!中学生ですら忌み嫌う病気なのですよ!・・・あとこれは知人の話です」

「そういうものですかね・・・ふむ、やはり視力は異常に高いな」


 ドクターはカルテに何かを書き込むと、思案するように顎に手を当てる


「その子はまだ子供なんですよね?」

「はい、少なくともつい最近まで性別を間違えてたレベルには子供ですね」


 正直アズリールにならなかったら今でも気づいてなかっただろうし・・・しかし何でアズリールの状態だと気づけたんだ?もしかして何か隠された能力でもあるのか?


 アズリールの可能性に険しい表情を浮かべていると、ドクターに頭を撫でられてしまった


「私からのアドバイスとしてはそこまで気にしないほうが良い、ぐらいですかね・・・これからの人生、そのくらいの事でクヨクヨしていては心が持ちませんよ」

「はぁ・・・やっぱりそうなりますよね・・・」


 ◇


『アズちゃんおはようございます!』

「ああおはようルピー、でもさっき会ったばかりだろ?」


 一緒に朝食を食べたばかりだろうに・・・その歳で痴呆か?


 怪訝な表情が顔に出ていたのだろうか、ルピーが頬を膨らませる


『私達は今お忍びでここに通ってるんですよ?冒険者だと悟られるような言動は避けるべきです!』


 ああ、なるほど

 今の俺とルピーはただの同じクラスの同級生っと・・・だがなルピー?ルピーの場合は初日にドラゴニュート討伐とかいう馬鹿げた事をしたせいで、同級生から冒険者だよねって噂されてるんだぞ?


「・・・・ま、言わないけど」


 プンプンと怒るルピーに優しい視線を向けていると、最近見慣れた学友が近づいてくる


「いつも思ってたんだがアズはどうやってルピーさんとコミュニケーションをとってるんだ?」


 ムーたんが首を傾げながら前の席に座る

 俺は普通にチャットを読んでいるだけだが・・・チャットというシステムが使えないNPCからすればそうなるか、俺もボロが出ないように注意した方が良いかもしれない


「それでムーたんは俺に何か用か?」

「用が無いと話しかけちゃいけないか?」

「そ・・・そんな事は無いんけどさ・・・」


 どうにもこの前の事が頭をよぎってムーたんの顔を直視できないんだよ・・・

 対面に座るムーたんに気まずそうにしていると、ルピーが鼻をスンスン鳴らし出す


『ラブコメの波動を感じます!』

「はぁ?ラブコメ?」


 何を言っているんだこいつ?

 ムーたんも変な顔・・・ああ、何言ってるのかわからないんだっけ


「なぁなぁアズ、ルピーさんは何を言いたがっているのだろうか」

「ん?ああ、なんでもラブコ」


 待てよ?今ここで素直に教えたら間違いなく面倒な事になる


「何でもないよ、お腹がすいたんだふん!?」


 最後まで言い終わる前に、ルピーの肘鉄が飛んできた

 ルピーさん?貴方の火力だとダメージが馬鹿にならないんですが?


 しかし・・・俺は通訳するつもりは・・・ああ、なるほど


 メモを取り出すルピーを見て納得する


『ラブコメの波動を感じるのですよ』

「ら・・・ラブコメ?」


 まぁムーたんには聞きなじみの無い言葉だろうよ


『つまりムートンさんから、恋の匂いがするんです!!』

「なぁ!?」


 ガタリと立ち上がり、ムーたんの手を掴むルピー

 盛り上がる前に俺は退席して・・・と思ったら首根っこ掴まれてしまった


『それで!?ムートンさんは誰かを気にしてる風に見えます!誰なんですか!?』

「そんなんじゃない・・・ただこの前少し話した人を探してて・・・」

『まぁ!一目惚れってやつですか!?』

「だから違うって・・・その人にちょっと伝えたい事があっ」

『もう告白を考えておられる!?』


 ルピーがキャー!?と目を輝かせながら、弾丸のようにメモをムーたんに見せている


 ああ、何とかして逃げ出したい、これ絶対この前のアレだろ?

 しかし俺のそんな希望が通される事なく話が続いていく


『是非探すのを協力させてください!!どんな方なんですか!?』

「そ・・・そうだな・・・髪はまるで大地に溶け込むような茶色で、厳しさの中にも優しさが見える瞳・・・」


「ほぅ・・・」と恥ずかしいセリフを語るムーたん

 あああああああ!!!やめてぇ!?もう許してぇ!?


『わかりました!私の知り合いに掛け合って、全力でそのような人物を探します!』

「いや、これは大事な事なんだ、手出しは無用だ」

『自らの手で恋を勝ち取るつもりでおられる!?』


 再びキャー!!と騒ぐルピーと、近くで聞き耳を立てていた女子達


「だからそんなんじゃ・・・はぁ・・・アズ、お前からも何か言ってやってくれよ」

「ムーたん、それはね幻、夢だ、アズリールなんて人はこの世に存在しない」

「なぁ!?アズてめ!言うに事欠い・・・僕アズリールさんの名前言ったっけ?」


 あ、やっべ


「なぁアズ、もしかしてお前アズリールさんの事知ってるのか?」

「し・・・シラナイヨ?」


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