第四章 増殖するG(ゲーマー)
現在BGOは緊急メンテナンス!
そんな暇な休日の一日、現在俺はフーキと愚痴半分、面白半分にLINE通話で盛り上がっていた
「そういえばフレンドから聞いたんやけどLv5からはステータスの伸びがよくなってスキルの習得がなくなったらしいで」
「へぇ?ログインダッシュ組はもうLV5かよ」
時間経過によるレベルアップシステムでよくこんなにレベル差が出来たものだ
しかしフレンドだと?
ほぼ俺と行動してた癖にどうやって出来たんだ・・・
「これだからコミュ力の化け物は・・・」
「ん?なんて?」
「なんでもないでーす」
俺も次ログインしたらフレンド作って自慢してやる
・・・まぁそれは置いといて
Lv5からはステータスがいままでの倍上がるようになる
スキルに関しては、まだまだ攻略班によって議論が交わされているらしいが、Lv5まででスキルを覚えれなくなるのであれば、これから行動を厳選してスキルをとらなくてはならないな
ちなみに放置の人はスタートダッシュ組を遥かに凌ぐLv9で、HPはすでに80を超えているらしい(尚、他のステータスは一切の上昇無し
「とりあえずわいはもう休むーおつーノシノシ」
時計を見るともう22時だ、ゲーム内は常に朝だから時間の感覚がずれるな
しかし時間を意識しだすと急激にお腹がすいてくる、枕元のカロリーメイトをもしゃもしゃ食べる
「やっべ・・・昼飯と夕飯作ってねえや・・・」
部屋からでて一階に降りると、机の上に姉からのメモ書きと夕食が置いてあるのに気づく
【ゲームに夢中なんだろうけど当番は忘れちゃだめだよーあと夜更かしは美容に悪いよー】
手紙の文章が姉の声で再生される
すぐ抱き着いてこなければ良い姉なんだけどなぁ・・・
姉が作った料理を食べつつ居間でテレビを見ていると、不意に家のチャイムが鳴る
「こんな時間に来客?」
念の為チェーンを掛けたまま外の様子を確認する
月明りの下
少し哀愁漂う表情で、目を閉じ少し上を向いた短髪黒髪の男が立っているのを確認
「我!冥府の地より今!この約束された大地に舞い戻った!」
「・・・」
無言で玄関扉を閉めようとしたら、靴を挟んできやがった
「我が半身アズリエルよ!今すぐこの結界を解き、早く我に生贄を捧げよ・・・」
ガタガタとドアの隙間から顔を覗かせ、興奮したようにドアを開けようとする不審者・・・馬鹿兄がそこにいた
兄は中学で厨二病を発症、治らずに現在に至る
現在は闇のレジスタンスに所属している魔王にして漆黒の堕天使とかそんな事をこの前言っていた
ちなみに名前は青葉太郎という平凡な名前だったりする
「ここは約束された大地じゃありません、お引き取りください」
馬鹿兄の靴を蹴って無理矢理玄関扉を閉める
「な・・・!今すぐこの扉の封印を解くのだ!でなければ・・・っく!?我が右手が疼く!?」
外でぎゃいぎゃい騒ぐ馬鹿兄に溜息を吐きながら、俺は諦めてドアのチェーンを外す
こんな夜中に玄関前で騒ぐのはやめて欲しい・・・
扉が開いた事を確認した兄が、再びポーズを取りながら家に入って来る
「明日帰ってくるんじゃなかったの?」
「冥府の地にて我が忠臣より、とある機密文書を入手したのだ」
楽しそうにポーズを変えた馬鹿兄が、ドヤ顔でこちらを見下ろしている
殴りたい!このドヤ顔!
「っく!我がイグニスが封印を解こうとしている!?」
「はいはい、腹減ったんだな?わかったからとりあえず夕飯食べろよ」
ポーズを取ったまま居間に入る馬鹿兄に頭を抱えつつも
夕飯をレンジで温めてテーブルに置く
馬鹿兄はチラッと夕食を見て目を輝かせると、イスの背もたれに手を掛けて、飛び越えるように座・・・ろうとして盛大に後ろに倒れる
俺はそんなどうしようもないバカに冷たい視線を向けておく
「それで?急ぎの用事ってなんなの?」
しばらく地面をのたうち回っていた兄は、大仰に手を広げて電灯に手をかざす
どうでも良いがいちいちポーズを変えるのはさすがである
「我が忠臣に誘われ、BGOなる新天地に出向く事になった」
「へぇ・・・また新しい遊びぶふぉ!?」
口の中の物を吹き出す
「ゲームが嫌いな馬鹿兄がBGOを!?」
「いかにも、故に我はこれより新たなる体を手に入れなくてはならない」
新たなる肉体・・・キャラクリの事か?
「・・・どちらにせよ今日は緊急メンテでBGOはできないよ?」
「緊急免帝!真良い響きだな!」
あっ駄目だこいつはやくなんとかしないと(手遅れ
緊急メンテナンスの詳しい説明もほどほどに話を切り上げ部屋に戻る
兄との会話は疲れる、一々文章を解読しないといけないからな
まぁ何を言ってるのか大抵わかるから良いが・・・これ以上思いかえすのはやめよう
「それにしても」
自室に戻った俺は、特大ぬいぐるみを両手に抱えてベッドに倒れ込み、今日の戦闘の事を思い出す
フーキと俺、二人に足りないのはやはり火力だろう
前衛と後衛、一見してみるとベストコンビなのだがDPSが無さすぎる
フーキは色々な人とフレンドになってたみたいだし、火力持ちを紹介してもらうか・・・?
いや、なんかそれはフーキに負けた気がして嫌だな
「となると俺もフーキみたいに新しいフレンドを探すとするか」
酒場では一時的、永続的な付き合いを求めて冒険者がフレンドを募集するらしいし、そこから冒険者ギルドでクエストを受けてRを稼ぐ方向で行こう
ぬいぐるみを抱きかかえて思考を巡らせていると、次第に瞼が重たくなってくる
「明日・・・は・・・がんば・・・zzz」
翌日、朝目が覚めると、相変わらずぬいぐるみが床に転がっている
さすがにゲーム内で似たようなぬいぐるみと旅をしているからか、少し罪悪感が沸いたのでベッドの上に座らせ頭を撫でる
もうこいつの名前もジローで良いかもしれない
「さっさとBGOをやりたい所だが・・・朝飯ぐらい食っとくか」
今日は確か兄が食事当番の日だ
兄の食事は見た目は悪いが味は良い、包丁片手に「静まれ!我がアーティファクト!」とか、トマトを人間の生き血!とか話しているのを見るとゲンナリするけど
階段をどたどた降りながらキッチンに視線を向けると、姉が料理をつくっていた
「あれ?兄貴は?なんで姉さんが料理つくってんの?」
居間の椅子に座りながら姉に問いかける、ちなみに姉が当番の時は流石に一緒に食べる
作ってもらってる相手に対してのせめてもの礼儀だ
「んー今朝起こしにいったらひろと同じ機械頭にかぶっててねー、仕方ないから私がつくってるんだよー」
姉は朗らかな笑みを浮かべる、約束事を守らずにゲームとは・・・良い度胸である
昨日同じ事があった気がするが気のせいだろう
「でもでもーおかげでひろと一緒にご飯が食べれてお姉ちゃんとっても幸せだよー?」
適当に相槌を打ちながら朝食を終えた俺は、皿を洗うと同時に階段に向けてダッシュする
途中姉に捕まりそうになったが、捕まる寸前に姉に先制攻撃を加え、痛みに悶絶している隙に部屋に駆け込む、後ろから「ぐぅ・・・腕を上げたねひろ・・・バタリ」という声が聞こえた気がするが気にしない
部屋について頬を一発叩き気合をいれる
「よし!今日の目標は新しいフレンド探しとスキルの厳選だ!」
ヘッドギアをかぶり今日もBGOの世界にダイブする




