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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第二章 割れる大地と海の悪魔
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第四十八話 精霊の力

 

 清廉な気配漂う洞窟に銀色の風が吹きすさぶ


「この姿には、なりたくなかったんだけどな」


 腰まで伸びた水色の髪を払いながら、前方の忌々しい物を無視してゴーリラに杖を向ける


「悪いなゴーリラ!少し止まっててくれよ?」


 杖の先端が冷気を帯び、ゴーリラの体に白い霜がついていく


『ピー、周囲温度の低下を確認』


 ギギギ・・・とゴーリラから異音が聞こえてくる


 よし、機能停止とまではいかないまでも、動きを鈍らせる事には成功したぞ・・・今の内に!


 ゴーリラの動きが遅くなったことを視認した俺は、氷の道を滑りムーたんに接近する


『護衛対象の危険を感知!護衛対象の危険を感知!』


 けたたましいサイレンの音と共に、ゴーレム要素を回収しだしたゴーリラの腕がもげる

 何だ?何をする気・・・


『ロケットパンチ』

「ちょお!?」


 急いで前面に氷の盾を展開するが、ゴーリラの腕が氷の盾を粉砕!玉砕!大喝采!しながら接近してくる


「回避ぃ!?」


 飛びのくように後方に滑る事でなんとか回避できたが・・・


「おいおい、火力パネェな」


 地面を抉るような跡を残して飛来してきたロケットパンチに自然と喉が鳴る

 しかも今のでムーたんから距離が離れてしまった、最悪だ


「しかし今こいつ何て言った?護衛対象?」


 地面からニョキニョキ生えてきた腕とドッキングするゴーリラを睨む


『保全完了、攻撃形態に移行』


 なるほど、完全耐性に加えて自動回復持ちか、とんだチート野郎だな・・・


「だが俺に対して今のは致命的なミスだよなぁ?」


 俺は再び杖の先端に氷の道を作り出す


『精霊の構築を確認、護衛対象への守護を強化』


 ゴーリラがムーたんと俺の間に割って入り、迎撃の為に腕を振り上げる


 護衛対象ってんだ、当然ムーたんをターゲットすればお前から来てくれるよなぁ?


 振り下ろされる腕を滑るように回避、そのまま腕に氷の道を作る

 相手の動きが把握出来れば、避ける事など造作もない


「よし、このまま!回り込ませてもらうぜ!」

『氷結の状態異常を確認、熱動力による解除の試行』


 氷に着地したと同時にゴーリラから熱が発せられ、氷が溶け始める

 どうやらそう簡単には行かせて貰えないらしい、だがしかし!


「まだまだぁ!」


 着弾と同時に氷が溶けるが、そんなのお構いなしに氷をぶつけまくる


『対象に攻撃意欲感知できず、警戒モー』


 突如ゴーリラの声が途切れ、体が傾く


『地面の泥沼化を確認、緊急脱出を』


 お前自体は完全耐性があるようだが、フィールドにはそんな耐性ないみたいだったからな!


 溶けた氷で簡易的な沼を作らせて貰ったぜ!

 そして逃すつもりは無い!


 少しでも時間を稼ぐ為に沼を氷結化、ゴーリラを固定する


『地面の氷結化を確認、脱出プログラム起動』


 ゴーリラが足を分離させながら氷の沼から抜け出そうとする


 ・・・何でわざわざ?溶かせば良い・・・ああーなるほど!


「隙あり!!」


 泥沼から抜け出す前に、ゴーリラに飛び乗った俺は手を突き付ける


「お前、つまる話土精霊の集合体だろ?」


 先程腕を再構築する時に見た光景

 普通に見ればそれだけの話だが、精霊が視える俺には別の光景が映し出された


 そう、腕を再構築する際、土精霊が合体分離を繰り返している姿を


 俺はゴーリラの表皮から土精霊を分解、振り落とされないように体を氷で固定する


「まぁまぁ慌てなさんな、じっくり分解してやるよ」

『被害甚大!被害甚大!氷結状態解除失敗、氷結状態解除失敗』


 そりゃあそうだよなぁ?この氷の対象はお前じゃなくて俺、警告音で騙されそうになったが・・・


「ゲーム設定の穴ってやつか?熱で氷を溶かしてるわけじゃなく、ただ自分に掛かった氷結状態をクリアしてただけ、だからフィールド効果とかは解除出来ない」


 精霊が分解されるに従い、ゴーリラのHPがどんどん白くなっていく


 まぁ正解かどうかはさておき解除されないって事は!


「チェックメイトだこんにゃろう!!」

『動力源に多大な被害を確認・・・機能・・・停・・・』


 プツンという音と共に、HPが真っ白になったゴーリラが崩れ落ちていく


「ま!ざっとこんなもんよ!」


 ゴーリラの残骸目掛けてピースをかます


「おっと、そんな事してる場合じゃねぇ!!」


 急いでムーたんの様子を確認する

 HPが少し減っているが、死ぬほどのダメージは受けていない


「でも一応・・・ヒール!」


 ムーたんのHPが回復したのを確認して抱える

 ミッションコンプリート!


 一時はどうなるかと思ったが、Lv10、格上のゴーレムをソロ退治とか、実は俺凄いんじゃないか?


『確認、修復、確認』

「・・・は!?」


 警告音に背後を確認すると、サイズは小さいがゴーリラが形成されていっている


「やばい、復活とかまであんの!?」


 急いで杖を構えようとしたが、ムーたんを抱えているせいで構えられない

 あ、もしかしてまた死に戻りしなくちゃいけないかな?


 そんな覚悟を決めるが、ゴーリラは静かに指をこちらに向けてくる

 なんだろう?首を傾げながらも空いてる方の指をゴーリラに突き付ける


 俺とゴーリラの指がぶつかる瞬間、脳内に声が響く


『勇敢なる者よ、現へと帰るが良い』


<土の精霊、ゴリラと契約が完了しました>

<アーツ:プロテクションを覚えました>


「やっぱりゴリラじゃねぇか!!!!!」


 ゴーリラは俺の叫びに呼応するように黄色い玉となり、首にかけている指輪の周りをクルクル周りだし、コアらしき物を残して跡形も無く消え去る


 それはまぁ良い、良いんだが・・・コアらしき物から警告音が鳴り響いてるんだが?


『守護者の消失を確認、自動生成・・・失敗、自爆シークエンスの移行』

「ああ、もう面倒臭くなってきたけど・・・!!」


 ズドンという音が聞こえてきたので、半ば反射的に頭上に氷を展開、振って来る瓦礫を防ぐ


「どーしてこんなに面倒な状況に!?俺が何かしたか!?したな!全部俺のせいじゃん!!」


 くそう、自業自得ってやつか

 まぁそれ自体は別に良い!いつもの事だし!?

 最悪死に戻りすればホームの天井とこんにちは出来る


「問題は・・・」


 俺は腕の中でスヤァ( ˘ω˘ )と眠るムーたんに視線を移す

 ムーたんはNPCだぞ!?この前のアップデートのせいで自動復活機能は撤廃された、つまりここで俺が諦める事はムーたんの死を意味する


「生意気なやつだが見捨てて良い程クズなやつでも無い!」


 徐々に重さを増していく瓦礫に悲鳴をあげながらも、氷の層を厚くする

 だが・・・これ以上は・・・!?


 慌てる俺の瞳の前を黄色い玉が横切る


「もしかしたら・・・!精霊化!!!」


 --------------------------------------


 いつの間にこんなに暗くなったのか

 頭上に煌く沢山の星々


 そしてそんな星々と同じように僕を見下ろす青年の姿


「確か僕が授業を受けていたのは昼前だった筈・・・それで・・・」


 確かゴーリラに捕まって・・・それから・・・

 青年に下ろされ、地面に立たされた僕は夜風に体を震わせる


「・・・寒い」


 僕を抱えていた青年が溜息を吐きながら何かをかぶせてくれる


「・・・あの、お兄さんは誰なんですか?」


 風邪でもひいたのだろうか?

 頭がボーっとする中、目の前の人物に質問を投げかける


「余か?余はそうだな・・・」


 青年は何かを考えるように目を瞑ると、静かにほほ笑む


「アズリール、豊穣の大地を司る者だ、夜風は体に悪い、早急に帰宅するが良いぞ、可愛いお嬢さん」


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