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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第二章 割れる大地と海の悪魔
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第四十四話 入学式

 豪華絢爛な装飾、目がくらむ程ピカピカした玉座の間

 玉座では筋骨隆々な白髭が両手を広げている


「よく来た、未来のグラフを担う子供達よ」


 現在開校式という事で、この国の未来を担う子供達、合計30人が玉座の間に集められている

 いやいやなんで学校の挨拶を国王が・・・


 俺は椅子に座って延々と長いセリフを喋っている国王の言葉を聞き流しながら周りの子供達を見る


 フードで顔が隠れているので正確には把握出来ないが

 おそらく歳はバラバラ、今の俺の外見年齢と同じくらいの子供達だ


 ・・・ただまぁ一人明らかに年長者がいるんだよな


 俺はチャット画面を開く


『なんでルピーがいんの?』


 そう、最近我が家でよく見かける金髪っ子が混ざっているのだ

 成長が速いとか言って入ったんだろうが、12歳以下はちょびっとだけ無理がないか?


『巷で噂の人攫いに関して、フーキさんと調査をしているんです!』


 ああ、なるほど

 確かにフーキなら人攫いなんて放っとけないだろうな


『しかし二人でか?俺も誘ってくれれば良いのに』

『アズさんは最近お店で忙しそうだったので』


 ああ、そういえば最近はお気に入りのグラスを拭く作業で忙しかったな

 しかし二人も冒険者が紛れてボロが出ないだろうか?


 何気無しに国王を見ると、悪戯っぽい笑みを浮かべてこちらを見ている事に気づく


 なるほど、全て計算の内という訳か


「さて、諸君等のこれからの成長に期待する、何か質問があるものはおるか?」


 なに、何でも申してみよと国王が子供達を見渡すが、皆青い顔してるぞ?

 この歳の子に国王に質問させるとか鬼畜すぎませんかねぇ?


「さて、質問者もいないみたいじゃな・・・それでは講師の者を紹介する」


 ◇


 国王の話が終わり、玉座の間から立ち去る一同

 おいおい、何人か脂汗かいて倒れてるぞ?


 仕方ない、ここは年長者としての行動を心がけるか・・・


「おいお前!」

「ん?俺か?」


 倒れた子供達の介抱をしていると、薄い茶髪を短く整えた子供が話しかけてくる


「そうだ!名前は何て言うんだ?」

「俺はアズ、君は?」


 何故かこちらを睨んだまま黙り込んでしまったので握手を求めてみるが、振り払われてしまった


「ふん!お前みたいなチビに名乗る名前なんて無い!」


 ふむ・・・どうやら教育が必要かもしれんな

 俺は握手の為に出した手で茶髪のガキの襟首を掴む


 そんな俺の様子を察した茶髪が望むところといったように俺の襟首を掴もうとして・・・


「・・・僕はムートン・・・シープ・ムートンだ」


 何かに気付いたように、ローブについた羊のような紋章を見せながら自己紹介しだす

 何だ?急に?


 ムートンの視線の先には、金髪の青年が二人立っている

 あれは確かこの国の第一王子と第二王子だっけか?

 二人共BGOに恐ろしく合った金髪をしており、ときおり俺達新入生を見て手を振っている


 なるほど、王子達の前で問題を起こしかねないと判断したって所か


「よろしくなムーたん!」

「おい?その間違い方には何故か悪意を感じるんだが?」


「ふん!」っと口で言いながら、ムーたんはさっさと教師の後ろについて行ってしまった


「・・・まぁ歳相応ってやつなのかな?」


 こめかみを押さえながら玉座の間から教室に移動すると、昭和の教室のような景観が目に映る

 あえてこの一帯だけ木造にしている意味はあるのだろうか?


 教卓の上には、謎の水晶が置いてある


「何だこれ?」


 水晶を覗き込んでいると、担任らしき人物がニコリと笑みを浮かべる


「これは触れた生物のランクを測定する魔道具ですよ」

「おお!?ランク測定アイテムキター!」


 異世界鉄板アイテムに鼻息を荒くしていると先生が俺に手招きをする


 これはあれですよ!主人公が最強のチート力を持ってるパターンですよ!

 これは間違いなくド派手な演出間違いなし!


 意気揚々と水晶に手を触れると水晶の中が軽く光を帯びる


「どう?どう?」


 満面の笑みを浮かべて皆の方を見ると、全員に顔を背けられた


「・・・」


 俺は口をムニムニさせながら自分の席に腰掛ける


「適正C・・・ゴミだな」

「なんだとぅ!!」


 正面に座っていたムーたんと取っ組み合いになりそうになった所を、先生に止められる


「コホン!では次にシープ・ムートン君!」


 ムーたんは先生に呼ばれてニヤリと笑みを浮かべる


「まぁ見とけって?」

「フシュー!フシュー!」


 威嚇する俺にムーたんがドン引きしながら水晶に触れる


 すると水晶の中が軽く揺れる


 その様子を見たムーたんが黙って俺の隣の椅子に腰掛ける


「おいあれって・・・」

「うるさい黙れ」


 羞恥からきてるのだろう

 可哀想に・・・耳まで真っ赤にして・・・

 俺はムーたんの肩に手を置く


「構うなって言っ・・・」

「戦闘力たったの5か!ゴミめ!」

「なんだとおおおおお!!!」


 再び取っ組み合いになりそうになった俺達の間に目が眩む程の光がほとばしる


「おー適切Aなんてなかなかの逸材ですね!」


 先生の言葉にルピーが嬉しそうにしている

 そんな様子を見た俺達は無言で向き直る


「流石見た感じ気品に溢れたお嬢さんだ、どこかの凡骨とは大違いだな」

「その凡骨よりランクが低いのは何シープ家なんでしょうねぇ?」


 再び睨み合いを開始していると、はいはいと先生が両手を叩く


「仲が良いのは結構ですが授業の方に入りますよ」


 そう言いながら短杖を振りかざすと目の前に扉が現れる


「「おお!魔法使いっぽくてカッコいい!」」


 先生が扉に手をかけると、扉の向こうから光が漏れだす


「国王陛下より一刻も早く君達を鍛え上げて欲しいとの指令が出ているため・・・」


 開け放たれた演習場の扉から光が溢れ出す


 暗めの部屋から急に明るい場所に出た事により、俺達は視界を奪われ

 目が眩んだまま直進した俺は何か巨大な影にぶつかる


「うわった!?なんだなん・・・だ?」

「おい?どうしたんだ?間抜け面が更に間抜けになってる・・・ぜ?」


 後ろからついてきたムーたんが俺の視線を辿り絶句する


 体長3メートルはあろう二足歩行の巨大な体躯に、不釣り合いな小さな羽

 その体躯は硬い鱗と隆起した筋肉で覆われ

 頭にはねじ曲がった二本の角が猛々しくそそり立っている


 目の前の巨大な生き物は侵入者に気づいたようにこちらに視線を向けると威嚇するように雄叫びをあげる


『ぐぐ、ぐ!オイラーーーー!!』


 いやちょっと色々まって!?

 間近で化け物の雄叫びを聞いた俺とムーたんが耳を塞ぐ中

 学友の一人が目を輝かせて語りだす


『わードラゴニュートってやつですねーなんでも龍人種と魔物のハーフで知性に乏しいらしいですよー』


 あれか!ドラゴンは性欲旺盛っていうあれのせいで出来た産物って事か!?

 俺がトラウマに震えていると、ズドンという音と共にムーたんが宙を舞う


「む・・・ムーたんー!!!」


 急ぎ吹っ飛ばされたムーたんを確認する

 反応は無いけど・・・死んではない


『アズさん!その子は!?』

「気絶してるだけみたいだ」


 慌てて近づいてきたルピーが、ドラゴニュートに小太刀を構える


 しかし・・・ドラゴニュートは本来レベル15の冒険者がフルPTで戦う敵だった筈だ、ソースはwiki

 それを戦闘経験の無い子供達の前に解き放つとか・・・


 これはいくらなんでもムリゲーですよ

 ドヤ顔をかましている先生を睨む


「これ、先生が手配したんですよね?」

「ええ!この国の未来を担う人材の育成の為に飛びっきり強そうな魔物をと!」


 強そうっていうかガチで強いのが来ちゃってるんだが?


「ムーたんが気絶してるんですが?」

「問題無いですよ?直撃の瞬間防御魔法を放ったので!死にはしません」


 それはすごいがお前のせいだからな?

 ドヤ顔をかます先生を再度睨む


「それで?この後どうするんですか?」

「この後・・・ですか?」


 首を傾げる先生


 俺は炎のブレスを吐くドラゴニュートを指さす

 先生はなるほど!と手を叩くと明後日の方向を向いて口笛を吹きだす


「おい」


 尚も明後日の方向を向く先生は暫くすると諦めたように神妙な顔でこちらを見る


「・・・良いですか?これはミスではありません、決してそこを間違えないように」


 薄々感じていたがこの先生ダメ人間じゃないか?


『アズさん!ここは私が抑えますのでその子を医務室に!先生は皆さんの避難誘導を!』

「は・・・はい!!!」


 情けない返事をする先生を片目にムーたんを担ぐ


「ルピー!出来るだけはやく助けを呼んでくるから!頼んだぞ!」


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