第二章 中世の街グラフ!
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グラフ王国
国民数第3位、犯罪報告件数が最も少ないと言われ
豊かな緑の大地に囲まれ、街の中心にはグラフ城を構える
多くの民が新たな人生を歩む事を夢見て訪れる街である。
グラフ幻想譚
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「おー!すっげぇー!」
道中モンスターに出会う事なく、無事にグラフ街についた俺は年甲斐もなくはしゃいでいた
目の前に広がるザ!異世界の街並み
かつてゲームの画面越しにしか見れなかった物が目の前にある!
この感動がわからないやつはいない!
俺は露店に見える物を物色しながらフーキとの待ち合わせ場所に向かう
ここまで遅れたのだから少しぐらい遅れても変わらないだろうという魂胆だ。
ついでに露店を回って買えそうな装備を買っていくつもりだ
ちなみに今の所持金は100R、Rと書いてリンと読む
それにしてもどの露店も見た事ないものが並び興味が絶えない!
食材屋にグロテスクなミミズのような物もあるがあれは食べ物か!?名前は・・・サンドワーム
店主に聞いた所、サンドワームを麺類にするのがこの国の主食らしい
店主が「はーっおのぼりさんか!」みたいなニヤつき顔で話しやがる、情報には感謝だが顔面を殴りたい衝動に駆られる。
次に回るは当然武器屋!と思ったがその反対側に世界観にそぐわないファンシーな露店が見える
これは逆に気になる!露店には現実世界でよく見るぬいぐるみや、異世界ならではの気味の悪い人形・・・に可愛い服を着せてある者やらその他色々
商品を眺めていると、部屋で抱き枕の様な扱いを受けているうちのぬいぐるみにそっくりな商品を発見
ぬいぐるみを見ていると女店主が話しかけてくる
ってかデカイ!横にも縦にもデカイ!体は横に成人男性三人分は余裕であり、高さは190㎝くらいだろうか、紫の髪をかきあげ笑顔で話しかけてくる
「あらぁん!あなたその子が気に入ったの?今なら100Rよぉん?」
・・・全財産じゃないか!
武器や防具はこれから絶対必須だぞ?誰がこんな物買うんだよ!
ぬいぐるみを棚に戻そうとした所で、店主が極上のスマイルをしている事に気が付く
「まいどあり☆折角だから名前をつけてあげてぇん?」
「は?」
しばらく呆然としていた俺は、デカい店主のせいで見えなかった看板に気が付く
<触るの厳禁!!購入者のみ手に取ってください>
「・・・クーリングオフで」
「あらぁん!グラフにそんな言葉は存在しないわぁん!!」
詐欺じゃないか!?
なんとかして返品しようとするが、棚に戻そうとするとシステムに邪魔される上に勝手にルピーが差し引かれている
しばらく口をムニムニさせながら店主に抗議の視線を向けるが、店主はどこ吹く風だ
「・・・買ってしまったからには仕方ないが・・・解せぬ」
改めて購入したぬいぐるみに視線を落とす
名前か・・・ぬいぐるみに名前とか少し恥ずかしいな、俺高校生だよ?
しかし折角全財産はたいて買ったんだ・・・名前くらいつけてやろう
見た目はつぶらな目をした熊のぬいぐるみ
熊太郎・・・熊の助・・・熊次郎・・・クマジロウ・・・ジロー・・・
「よし!こいつの名前はジローだ!」
思わず大声で叫んでしまった
周りの冒険者や町人の生易しい目が痛い!
命名と同時に現れたシステムログをイソイソと閉じ、縮こまりながら路地裏に移動する
まったく、このゲームを始めてからこんなのばっかりだな
路地裏で一人悶絶していると、背後に人影が揺らめく
「はー・・・こんなところでなにしとるん?」
聞きなれた声に振り返ると、フーキが不機嫌そうにこちらに近づいてきているのが見える
髪の色をライトブラウン、瞳の色を青に変えて、完全にこの街の住人に溶け込んでやがる
「いやなに、これからの冒険で武器防具、情報は必須だろ?」
俺が不敵な笑みで切り返すと、フーキもニヤリと笑みを浮かべる
「よし!こいつの名前はジローだ!」
「やめろぉ!この野郎!どこから聞いてやがった!?」
「ぬいぐるみを物欲しそうに眺めてたあたりやね」
そんな所から見てたのかよ、あと物欲しそうには見てないぞ?
「っとそういえばさっきのシステムログは・・・と」
<スキル:人形使いを覚えました>
<人形使い>
<人形をあやつる事が出来る>
まさかの新スキル
スキルの確認の為にステータスウィンドウを開く
<Lv2
<HP16 MP7 力2 防御1 知力5 俊敏3 運7 残6P
<スキル:逃走、見切り、隠密、自然、独力 枠外、人形使い
オウ!また意☆味☆不☆明なスキルが追加されてやがる!!
しかもモンスターと戦ってもいないのにレベルが上がってる?
レベルが上がる時のステータス上昇値も今までの行動補正という感じだろうか
しかしレベル上がってるのにも驚きだが見事に知力と運しか上がっていない
運が上がるような要素があっただろうか?むしろ下がっててもおかしくないだろうに
思考を巡らせていると、黙り込んだ俺を不思議そうに見ていたフーキが声を弾ませる
「お!レベルあがっとるやん!」
「みたいなんだけど、なんでレベル上がったんだ?経験値が増えるような事してないんだが」
「あぁ、BGOはモンスターを倒すとかじゃなくて時間経過でレベルが上がって行くからやね」
時間経過でレベルが上がる!?レベルという概念が存在するオンラインゲームで?
廃人も真っ青な糞仕様じゃねぇか!
そう思ってるとフーキが笑みを浮かべる
「ちなみにそのことを知ったプレイヤーが放置で今Lv5らしいけどHPの値しか上がってないらしいよ、付け加えるとスキル、引きこもりとか動かざる者とか魂亡き者ってスキルを取得したらしいね」
なるほどちゃんとしたステータスを上げるのならそれなりの行動が必要なわけか
しかし放置して手に入れたというスキルの詳細が気になるが、どうやらフーキもそこまでは知らないらしい
「そういや人形使いのスキル見た感じやと人形で戦う?感じやけど人形のステータスとかってあるん?」
言われて気づいた!
アイテム欄のぬいぐるみのステータスを確認する
<ジロー>カテゴリー(人形)耐久値(100%)
<Lv2
<HP8 力2 防御2 俊敏1 運1
<スキル:無し
<和の国に生息するテディベアに似せてつくられたぬいぐるみ、アズによりジローと命名された
使い魔的なポジションだろうか?
強くはないがあるのと無いのとでは雲泥の差である
しかし原型のモンスターがいるのにも驚きだが、モンスターの名前がまんまテディベアってなんやねんw
スキルから見切りを外して人形使いに、アイテムストレージからジローを出す
床が白く光ると同時にジローが本物の熊のような(見た目はぬいぐるみ)動作でのそのそ歩いてこちらを見上げている
さっきまで全財産を使わせた親仇にも見えていたが、なかなかどうして可愛いではないか
「あーそのスキルなら独力と相性良いかもしれんね?アイテム枠やからPT含まれんやん」
とフーキからの助言
なるほどPTには含まれない・・・
PTを組んでもお荷物にはならないし、ソロだったら独力の2倍効果と人形使いで戦いやすい
「つまり俺にソロ専でいけという事か?」
フーキを小突くと、ジローもフーキを攻撃する、これは面白い
調子に乗ってフーキを攻撃!素手なのでパンチ!
現実世界で姉をサンドバックに磨き上げた力4のブロー!
そしてジローの爪の無いモフモフパンチをくらえ!
しかし一人と一匹の攻撃にフーキはどこふく風である
「あれ、やっぱPVPとか申請しないとダメージ入らないんだ?」
「いやいや、ダメージは通るんやけどね、誰かさんを待ち続けたせいかわいのステータスがね?」
フーキのステータスを見る
<Lv2
<HP22 MP2 力4 防御13 知力2 俊敏2 運1 残0P
<スキル:耐久、護りの心、無手、絆、勇敢
「ステータス割り振ったのもあるんやけど防御がえらいことなってん」
フーキが満面の笑みで(目が笑っていない)俺を見る
まじすんません!
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スキル説明
<護りの心>
防御を固めている間、防御力が二倍になる、ただしそれ以外の行動はすることができない
<引きこもり>
宿屋での体力回復量、空腹力回復量が二倍になる、宿での滞在費が1.5倍になる
<動かざる者>
行動をせずにいるとレベルが上がりやすくなる
<魂亡き者>
スキルを装備している状態でログアウトするとNPCとなり街中を散策する、ただしレベルは上がらない