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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第一章 空の王者と愉快な仲間達
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第二十七話 空の王者

 

 本日はイベント一日目

 いつも通りの快晴の中、アズは一人人混みに揉まれていた



「うへぇ・・・めっちゃ人多い・・・やっぱ一人で来るんじゃなかったな」


 メンテナンス終了直後にログイン、フレンド達と合流を心みた俺だが・・・


 フーキは何やらブツブツと不気味に呟きながら中空を操作してて怖いし

 ルピーは何か買い物に出かけたらしく留守だし、結局一人で参加する事になった


 まぁそれは良い、いつもの事だ


「問題は・・・」


 周囲の人間に流されながら顔を顰める


「スタートダッシュの時並みに人が多い事か」


 スタートダッシュの時に街までもたなかった俺だぞ?

 今回のイベントもへたしたら不参加で終わりそうなんだが・・・


 あまりの人の多さにゲンナリしていると、後ろから最近聞きなれてきた声が聞こえてくる


「よ!アズじゃないか!奇遇じゃん!」


 爽やかな笑みを浮かべながらグレイが話しかけてくる


「あぁ・・・肉か・・・グレイじゃないか、てっきり寝て過ごすんだと思ってたぞ」

「今なんて言いかけ・・・まぁ良いか、特に意味はない、こういうイベントには参加したくなるだろ?」

「否定はしないかな、じゃ!そういうことで」


 早々に立ち去ろうとしたが、グレイに首根っこ掴まれてしまった


「まぁまぁ同じ屋根の下で暮らす仲だろ?折角だから一緒に見学しようぜ」


 俺は見学じゃなくて参加しに来たんだが?

 というかお前の発言を聞いた周りの冒険者が、何故か驚きと妬みの視線を向けてるぞ?


『ひっきーが俺らの天使と暮らしているだと!?』

『あの野郎・・・宿から出ないから大目に見ていたが許せねぇ!』

『この前の入居者希望の張り紙・・・まさか!?』


 何やら殺気を放つ周りの様子にビクビクしながらグレイを見上げる

 しかしグレイはどこ吹く風で自慢げに語りだす


「ああ!また俺の新たなスキルが発動してしまったか!」

「新たなスキル?お前アーツじゃなくてまたスキル覚えたのか」


 ちなみにグレイはまだアーツを一つも覚えてないらしい

 俺の時といい、アーツはレベルが習得条件ではなさそうだな


「無意識の敵視ってスキルでな、装備していると一定範囲内の生き物から自動でヘイトを稼ぐのさ!」


 セルフ肉壁か、良い心がけだ

 というかそんなバッドステータスともいえるスキルをわざわざつけてるのか?


 俺はドヤ顔で周りを見回すグレイを見て納得する

 ああ、これはただ自慢したいだけだな


 まぁいいや、こんな大きい子供の相手をしている程俺は暇じゃないんだ


 そそくさと情報サイトにアクセス、今一番盛り上がっている掲示板の上位に目的の物を見つける


<ドラゴン討伐スレ>


 他にも<ランクマッチやばたん>とか、<BGOで美少女キャラを探すスレ>の勢いが凄いようだ

 ・・・む?何か新しく<俺らの天使にまとわりつく羽虫を排除するスレ>とかいうのが物凄い勢いで上がって来たな

 少し気にはなるが今は放置で良いだろう、今度覚えてたら覗いてみよう


「ふむふむ、なるはやで参加したつもりだったが結構情報が出回ってるな」


 なんでもドラゴンはグラフ草原で戦闘行為を行っているプレイヤーにランダムでエンカウント、その後何人でも乱入可

 ん?今何人でもって言った?これもしかしたら何もしなくても蒸発するんじゃないか?


「しかしランダムか・・・」


 俺はブルーラット退治でエンカウントを待っていたであろう旧冒険者組に視線を向ける


 最初はエンカウントの為に躍起になっていたであろうそいつら

 今はもう戦い慣れてつまらないからと、初めて間もない新人冒険者の手助けをしている

 そんな微笑ましい光景を見ながらホッコリする


 運営は旧冒険者組と新人冒険者組の垣根を払う優しいイベントを発案したのかもしれない


 そんな中、どこかで見た赤髪が新人のブルーラットを横取りしたり絡んだりと目に余る行動をしている

 それを見かねたのか、少しいかついおじさんプレイヤーが赤髪に近づいていく


『おいお前、ちょっといい加減にしないか!』

『ハッ!クソにも役に立たねぇ雑魚がこの赤金の鷲のクラマスたるダ』


 赤金の鷲のクラマスが何か言い終わる前にいかついおっさんのパンチが炸裂

 そのまま乱闘になり、それを肴に周りの冒険者が賭けをし始めた


「皆エンジョイしてんなー」


 グレイに至ってはすでに赤髪の勝利に数百Rかけてるぞ?お前実は実家が裕福だったりする?

 盛り上がりを見せる冒険者達、誰もがどちらが勝利するかをワイワイガヤガヤと見守る中

 赤金の鷲のクラマスが残忍な笑みを浮かべる


『へっ!まぁ少しはやるようだな!・・・少し本気を見せてやんよ』


 そう言いながらめっちゃでかいツーハンドソートを片手で上空に放り投げると、俺達を指さす


『お前等よく覚えておけ、そして恐怖しろ!俺こそが赤金の鷲のクラマス、ダ』


 赤金の鷲のクラマスの目が怪しく光り、黒い何かが飛び出そうとした瞬間

 上空からブレスが噴射

 文字通り消し炭になったダなんとかさんのいた場所にドラゴンが降り立つ


『で・・・でたぞー!』

『こいつはトカゲじゃねぇ・・・ドラゴンだ!』


 叫び声と共に冒険者千人以上の魔法等遠距離攻撃が弾幕を形成

 ドラゴンのHPが一気に削れ、怒涛の攻撃によりドラゴンが砂塵で覆いつくされる

 どこかの後衛職が呟く


『や・・・やったか?』


 呟いた後衛職と周りにいた冒険者の足元が赤く発光、燃え上がる火柱で消し炭になる

 火柱の影響でドラゴンが目視できるようになったが・・・HPは80%くらいだろうか?


『ドラゴンは80%をトリガーとして強力な隕石を落としてくるぞ!』


 ほー、そうなのか

 確かにドラゴンが上空に飛翔し、翼で丸まるようにこちらを威嚇している


 そして現れる赤い光、場所は超広範囲の均等に四か所

 恐らくあそこに隕石が降って来るのだろう

 まぁ来るとわかっていれば避ける事など造作も・・・ん?


『『『『人混みが邪魔で動けない!?』』』』


 飛来してきた隕石により、数十人単位のパーティーが全滅した


 それを見た前衛職が撤退するように叫ぶ


『ここは俺達に任せて先にいけー!』


 ドラゴンがブレスを放ち前衛職もろとも叫んだ冒険者が消し炭になる

 眼鏡の冒険者が言う


『僕は看破のアーツで相手の戦闘力を見ることができる!やつの戦闘力は53Lvです!』


 眼鏡の冒険者付近が、ドラゴンの鉤爪で全滅する


『オーウ!私達は他のオンラインゲームで散々ドラゴンを討伐してきた猛者デース!あの程度の空の王者もどき余裕デース!』


 ヘビィボウガンとライトボウガンを装備したPTがドラゴンと交戦

 ドラゴンのブレスの動作を見てその中の一人がローリングしながら回避を試みる


『その程度のブレス!避ける事など造作もないデース!』


 ブレスで全滅したPTを見ながら周りの状況を再確認する


 最早当初の冒険者の10分の1もいないだろう


 運営が優しいイベントを発案したと思ったがそんなことはなかった

 あんな化け物初心者の草原に出して良いもんじゃないだろ!


「いやぁ!これはすごいな!ドラゴンを見れただけで満足だし!俺は帰って寝るとするか」


 こいつ・・・本気で見学に来ただけなのか?

 グレイが満足満足とその場を立ち去ろうとしたので、ジローにのしかからせ動きを封じさせる


「・・・おいアズ?これじゃ動けないんだけど?」


 俺は無言でお馴染みの蔓をつくりグレイをす巻きにする


「アズさん!?なんで俺をす巻きにするのかな!?」


 俺は最上級の笑顔でグレイをジローに担がせる


「無意識の敵視・・・でしたっけ?すごいスキルですよね?」


 ジローにグレイを空中に投げさせ、風で吹き飛ばす


「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 絶叫と共にドラゴンの前に落ちるグレイを確認して残りの残存兵力に告げる


「あの方がヘイトを固定してる間に遠距離攻撃でありったけの攻撃を加えてください!」



 数分後、強力なDPS集団を失った割に、大分ドラゴンのHPを削った俺達だが

 グレイの奮闘虚しく全滅する事になった


 結果的にはグレイが死んで全滅という形になったが、回復アーツが無い現状でよく踏ん張ったよ

 ちなみに今回の功績者のグレイさんは死んだ魚の眼をしながら


「やっぱり外に出るんじゃなかった」


 とうわ言のように何度も呟いていた

 一体何が彼を追い詰めたのだろう?


 無意識の敵視で敵視していたであろう冒険者も今ではグレイに同情の眼を向けている


 そして俺はドン引きされていた、何かしたかな?

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