第二十一話 妖精ごっこ
妖精ごっこ
地球で言う所の鬼ごっこに該当するごっこ遊び
数百年前、まだ妖精信仰が熱かった時代の産物で
追う側の人間が全裸になって追われる側の服を剥くというスポーツ
しかし現在では妖精が身近な物になった事と
全裸を否定する人が増えてきた為、忌諱するのものが多い
グラフ幻想譚
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「アタシの名前はロッテ、ロッテ・リアであります」
ロッテはこれでもかという程胸を張って、ドヤ顔でこちらに視線を向ける
妖精という事で小指サイズを予想していたが・・・
思ったよりもデカいな、人間の幼稚園児並みのサイズはある
「探す手間が省けたというかなんいうか・・・」
まぁそんな事はどうでも良いか、話は通じそうだし平和的に会話で解決していこう
さてどうやって切り出そうかと考えていると、ロッテがニヤニヤとしだす
「アンタの事情は大体知ってるでありますよ!子供に戻るまでずっと見てたでありますからな!」
ほう?じゃあ自分がクエスト対象だって事は理解してそうだな
いつから見てたのかは知らんが話がはやい、だったら・・・ん?
「おいちょっと待て、子供に戻るまで?まるで子供になる事を知ってたみたいな言い方だな?」
「当然でありましょう?何を隠そうアンタを子供にしたのはわわわわ!?」
ドヤ顔で何かの針を取り出したロッテに風をぶつける
しかしロッテが風に手を触れると、風は辺りに霧散してしまった
「暴力反対であります!」
「うるせぇよ?お前か?お前のせいだったのか?」
お前のせいで俺はこんなチビになっちまったんだぞ?その罪、万死に値する
俺の殺気が伝わったのか、ロッテが焦りながらアイテムを取り出す
「ままま待つでありますよ!!これをあげるからその話は許すであります!」
「アイテム程度で俺の味わった屈辱が・・・お!ベリーレアアイテムじゃん!」
すっげー!!このレベルじゃ各エリアのボス討伐程度しか入手手段が無い品だぞ!
「・・・まぁ俺は大人だからな、子供のイタズラにいちいち怒ったりなんかしませんよ」
そう言いながらそそくさとアイテムをインベントリにしまい、情報を確認する
精霊石っていうのか!
ジャンルは宝石・・・遂に俺のアイアンリングのソケットが埋まる機会が来ましたねぇ!!
「ちょっとちょっと!アタシを無視しないで欲しいであります!」
イソイソとソケットを埋めようとしていたら、顔を掴まれて無理矢理視線をロッテに向けられてしまった
近い近い!というかこいつまだいたのか?俺は何の用事も・・・
ああ、そういえばこいつの討伐クエストがあったな
俺は改めて杖を構える
「あれ!?アンタ許してくれるんじゃなかったでありますか!?」
「おう、子供にした事に関してはとりあえずボコボコにするだけで許す、俺は大人だからな」
「なんだ・・・許してくれるであり・・・あれ?」
ロッテが首を傾げている、何かおかしな事を言ったか?まぁいいか
「だが今回は妖精討伐のクエストを受けてるんでね、悪いがここでキルさせてもらう」
俺は大地に杖を突き付け、土の槍をロッテに射出する
しかし再びロッテが手をかざすと、土が霧散してあたりに砂ぼこりが舞う
「ごほっごほっ!ふ、ふふん!アタシはこれでも精霊を使役する妖精でありますよ?アーツも無しにアタシに自然の力が通用すると思わない事ね!」
なるほど、どうやら相手も自然のスキルや精霊術・・・もしくはそれに近い力を持っているようだ
このまま戦ったらイタチごっこだな・・・
とりあえず近接スタイルに移行する為にスキル画面を開こうとしていると、ロッテがドヤ顔でこちらを見ている
「まぁそんなに焦らないで欲しいであります、ここは新妖精ごっこで勝負を決めるでありますよ」
「断る」
知ってるんだぞ?妖精ごっこ
どこから情報が現れたのか、少し前にBGOの匿名掲示板でそんな遊びがあると話題に
実際BGOの世界でやろうぜ!とかいう連中が現れ、集団でお城の牢にぶち込まれるとかいう事件になったのだ
ちなみに俺は知らん、ちょうどその時はログアウトしてたからフーキ情報だ
「大丈夫であります!あの時は全裸になるのが駄目だったみたいでありますからね!ルールはちゃんと改訂し直したでありますよ!」
あの時・・・?
こいつもしかしてその件にも絡んでたりするのか?
「ルールは簡単、アタシを捕まえるだけ!もしアンタが勝ったらなんでも願いをかなえてあげるであります」
「ん?今なんでもって言った?そうだな、まず俺の身長をデカくしてくれ・・・それから和の国でのイタズラは控える、それとそうだな・・・」
「願いは一つであります!」
「じゃあデカくするのでいいや」
「アンタ・・・まぁいいであります!それでこそアタシの見込んだ人間でありますよ!」
一瞬呆れたような表情を向けられた気がするが気のせいだろう
なんか「流石アズでありますね!」とか言われてるし
ロッテは何か満足したように頷くと、ズズイッと俺に近づいてくる
「ふふん!アンタにはこれくらいのハンデがないといけないでありますな!」
そう言いながらロッテが髪を近づけてくる
「ほら、吸うであります」
「え?なんか漂ってて臭そうだし・・・いやなんだけど」
ロッテはズルッとその場でこけると、恨みがましい視線を向けてくる
「ふ、ふん!アンタは本当に無知でありますな!いいでありますか?妖精の粉には吸えば一時的に羽が生えて空を飛べ」
「なんか思ったより甘い匂いだな!」
「・・・」
ロッテが口元をムニムニさせながら俺を見ている
情緒不安定だな、妖精って皆んなこんななのか?
「もういいであります」
最後にロッテが何か大きく呟くと、俺の背中に妖精の様な羽根が生えてくる
「おお!すげぇ!」
「飛び方は習うより慣れろであります!」
ロッテはそう言うとフワリと浮かび上がり
何かを唱え出す
俺がそんな様子を傍目に羽根を動かしていると
ロッテの目の前に小さなワームホールの様なものが出現する
「なんだなんだぁぁぁぁ!?」
突如ワームホールから風が流れ出てきたかと思うと
俺とロッテはワームホールに吸い込まれる
「うおー!なんだこれ!?」
ワームホールの先はピンク色のトンネルのような場所が続いている
俺が高度を維持しながらまじまじそれを見ていると
ロッテが俺の横にフワリと降りてくる
「ここは妖精の小道、あのピンク色の靄は超凝縮された魔力の塊なので間違っても当たらないようにするであります」
そういうのは飛ばす前に言って欲しかったなぁ・・・
「それじゃあ準備は良いでありますか?」
俺は初飛行にワクワクしながら首を縦に振る
「それでは・・・デュエル開始-!であります!」




