第一話 始まりの地
うつらうつらしながらおはようございます
早朝特有の寒さに体を震わせながら首を傾げる
なんで俺は布団も掛けずに・・・思い出した
どうやら昨日はあのまま寝落ちしたらしい。
寝る時抱いてたぬいぐるみがベッドの下で仰向けに倒れて、悲しそうな目でこちらを見ている。
そんな事はいつもの事だから良いんだよ
枕元に投げ出したスマホからLINEの返信を確認
常備しているカロリーメイトを食べながらLINEをポチポチ
「ログインできねぇwてか緊急メンテきたw」
「あれだけやらないって言っといて結局やってるやん」
そう、俺は最初やる気がなかったが、このLINEの相手である古川美樹事フーキにゲーム性を話される内に火がつき、気づいたらダウンロードしていたのだ。
何を言ってるかわからないと思うが、俺も何を言ってるかわからん
「ゲーマーとして当然、てか昨日ログインできた?」
「いや、まぁわいもログイン出来んかったから早めに切り上げて格ゲーしてた」
こいつ・・・てか反応はやいなおい、即既読おつです
まぁそれが正解っぽかったなぁと思いながら
OPのリアルさ、白い空間でのSAN値直送で盛り上がる。
「まぁしばらく学校休みだからのんびりやろーぜ」
適当にLINEを切り上げ、鳴り出した目覚まし時計を叩きながら朝食を作りに台所に移動する
うちは海外に行ってる父母に三つ上の姉が一人、二つ上の兄が一人の五人家族である。
ちなみに両親はいつ帰ってくるかは未定だ、小さい頃からなので特段気にした事はない
必然的に子供達三人でローテーションを組んでご飯を作る事になったのだが・・・
俺は基本姉兄が苦手なので一人ご飯を二階の部屋で食べる。
二人のご飯をラップにかけさっさと二階に上がる・・・それがいつもの作業なのだが今日は運が悪かったようだ
「ひ~ろ~お〜はよ~!」
寝巻姿のままの愉快なバカに捕まってしまった
「おはよう、そしておやすみ」
「そんなこと言わずに〜朝ごはん一緒に食べよ〜よ〜」
「やめろぉ!歳を考えろ歳ぉ!」
抱きつきながら頭をナデナデしてくるという暴力的行為に悲鳴をあげながら、数少ない選択肢から<にげる>を選択
しかしガッチリホールドされている!!
恐らくこのまま食卓まで誘導するつもりなのだろう。
だが俺も慣れたものだ!俺はせっかくだから<たたかう>を選ぶぜ!
ホールドされた状態からご飯片手に姉の腹にブローをいれる。
「ちょ・・・ひろ・・・痛い!地味に痛い!」
拘束が緩んだ瞬間に階段を駆け上がる。
「むぅ・・・明日は逃がさないからね!」と後ろから聞こえたが気にしない。
姉が苦手な理由は主にスキンシップの激しさがある。
姉こと、青葉 里見は隙をついては抱きついてくる。
本人曰く抱き心地が良くナデやすい位置に頭があるらしい。
決して仲が悪いわけではないのだが、苦手な部類なので極力避けたい相手の一人である
ちなみに兄は今日友人宅にお泊まり中で家にはいない。
そんな事より俺ははやくBGOをしたいんだよ!
部屋のPCを起動し、朝食を食べながらBGOの公式サイトを見る
<緊急メンテナンス終了のお知らせ>
無事メンテナンスは終わったみたいだが、サービス開始直後のオンラインゲームは油断できない
ここからのメンテ地獄は基本だ。
LINEでふるやんに待ち合わせ場所と時間を伝えて早速ヘッドギアを装着。
昨日のリベンジマッチの開始である!
自分の部屋から草原になった所でウィンドウを表示、opをスキップ
流石に二回は見なくて良い、余程気に入らない限りゲームが終わるまでに二回以上見る事は無い。
そのまま昨日の白い空間にすんなりログイン
画面が暗転し、自分の周りをNOWloadingの文字がクルクル回る
文字の回転に合わせ自分もグルグルしていると、唐突に大きな広場らしき場所に画面が切り替わる
急に変わるものだからグルグル回転したままの到着である・・・
少し恥ずかしいと思っていたら、俺の後からログインした人も何人かグルグルしてる。
その気持ち・・・わかります!
気を取り直して周りを見渡す
そこは紛れもなくRPGの王道ともいえる街並み・・・が見える少し離れた丘の上
街まで歩いて10分って所だろうか?
まずは街に行くのが目標といった所だろうか?
首を傾げていると、目の前に新たなクエストの文字
<自由に動き回ろう>
大雑把だなおい
そんな感想を抱きながらも、新しいゲームでする事といえばとりあえず装備確認だよな
白い空間で磨き上げられた手つきで、メニュー画面から装備を選択
< ボロい服(上下) >
< ボロい靴 >
< 素手 >
なんだか浮浪者にしか思えないボロい服であるが、これぞRPGの醍醐味だろう
周りも全く同じ服装なので、丘の上は軽い浮浪者スポットだ
何万というボロい服を着た浮浪者を、果たしてあの街は受け入れてくれるのだろうか?
苦笑しつつ周りに合わせ街に向かう
「しかしPT募集の声が多いな」
開始数分でもうPT申請の数が2桁超えちゃったよ!
そしてサービス開始直後ってのもあるがリアルでこの人数が叫ぶとうるせぇな・・・
少し離れた所で叫んでいる黒髪ロングの男はどこかの営業かってぐらい叫んでるし
あっちではなんかガラの悪い金髪と赤髪がメンチ切って・・・あぁいきなりPVPはじまってるよ・・・
とにかく並みの祭りの比じゃない!
若干インドア派の俺にこの空間はヤバイって☆
PVPで少し開けた空間の隙間を縫って行列から抜け出した俺は、街道を外れて草原目掛けて走り出す
ここまでですでに10分はかかっている
「誰だ歩いて10分って言ったやつは・・・」
街まではまだ半分といった所だろうか、かと言ってあの行列には正直入りたく無い。
少し迂回して街に向かう事にしよう。
なーに、こうやって寄り道するのも乙なものである
周りに誰もいなくなった事に安心し、草原に大の字に横になる。
草の匂いが心地良く、頬を撫でる風はゲームの中とは思えない程鮮明で感動物である。
空は快晴、延々と続く青い空の端には天まで届く大きな竜巻も見える、なにあれ龍の巣ってやつですか?
不意にチュートリアル完了の文字が出る。
それと同時に今まで灰色だったメニュー項目が白色に代わっていることに気づく
なんの事だ?と頭をかしげながらメニュー画面を弄っていると、フーキとの待ち合わせの時間を過ぎている事に気づく
急ぎフレンド情報を開きフーキを検索
見事にヒットしたので音声チャットを繋げる
「あーこちらアズ!フーキ!汝は古きやんか?」
我ながら謎の言葉だが本人なら通じるだろう
「せやけど待ち合わせ場所ついたん?」
「残念ながら最初の街道で人の多さに参って草原でマッタリしてる」
「うそやろ・・・わいもう待ち合わせ場所つくで・・・」
「悪いと思うが反省はしていない!」
「まぁそんなところだろうとは思ってたけどさ・・・そういえばステータスとスキルどんなんなん?」
言われて気づく、まだ自分のステータスを確認すらしていない事に。
メニューを開きステータスを確認
<Lv1
<HP15 MP5 力2 防御1 知力4 俊敏3 運5 残3P
<スキル:逃走、見切り、隠密、自然、独力
能力は全体的にHP+MP合計20 基本ステ合計15、自由割り振り3
スキルは5個でその内2個はエピックスキルである(このスキルは後に習得できず、外す事はできない
随分と偏ったステータス・・・てかこれはなるとしたら盗賊?にしては俊敏が低い気がするし、魔法使い?にしてはMPが少なく感じるが。
それにスキル独力、調和ってなんだ
俺はスキルの説明欄を開く
<独力> エピックスキル
<PTを組んでいない時ステータスが2倍効果、PTを組んだ人数×1.1のステータス減少効果>
バッドステータスじゃないか!これでは魔法使い等の後衛職の選択肢も厳しい!
<自然> エピックスキル
<自然と一体化する事で自然の力を扱う事ができる、また休憩時回復量が2倍になる>
こっちは説明見てもいまいちわかりづらいな・・・しかし回復量2倍はうれしい・・・のか?
スキル総合で見るとソロ専か後衛職が良いのか?どちらにせよなかなか苦難の道と言える
「ちなみにステータスやスキルはフレンド登録したら相手も見えるで」
フーキに言われ、送られてきたフレンド申請を承諾する
「あーご愁傷様?キャラデリできないシステムやもんなぁ」
「やかましい!フーキこそステータスはどうなんだよ」
フーキの憐れむ様がまるで目の前にいるかの如く伝わってくるのが腹立つ
文句を言いながらフーキのステータスを開く
<Lv1
<HP18 MP2 力3 防御7 知力2 俊敏2 運1 残3P
<スキル:耐久、会話、無手、絆、勇敢
んー完全にタンクですね!これは!
それにしても絆と勇敢・・・完全に熱血主人公タイプじゃないか!
「これは完全にタンク一筋?」
「せやね、それ以外考えれんステータスやもん、ちなみにステータスとスキルはチュートリアル完了までに行った行動で数値が変わるっぽいよ」
「まじか」
ってことはあれか、最初町に行く団体から抜け出して一人草原にいたからこんな能力に?
でも運が高いのはなんでだろう?
「とりあえずはよ町に来てや・・・それまで情報収集でもしとくからさ・・・」
フーキの悲しそうな声質に仕方ないなーと思いながら初めての町に向かうのであった。
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<絆> エピックスキル
フレンドとPTを組んだ時フレンドの能力を1.1倍増量効果
<勇敢> エピックスキル
敵の威圧スキルを無効にし、HPが1%を切ると能力が1.5倍効果
アズ「チートや!こんなん絶対チーターや!」