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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第一章 空の王者と愉快な仲間達
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第十八話 和の国、村雲

「いやーオーガは強敵でしたね」

「ほんま危なかったわ、思ったより強かったんよ」


 各々の感想を抱きながら、粒子となって消えたオーガを見送る

 オーガ、お前は強かったよ、初戦闘のブルーラットの次くらいに


 どこか満足したように両手を合わせていると、あたりにグーッという音が鳴り響く

 視線の先ではルピーが顔を真っ赤にしながらお腹を押さえている


『お腹が空いて死にそうです!』


 ああ、飢餓の狂騒のせいかな?

 ルピーのHPが徐々に減っているのを見るに、満腹度が0なのだろう

 早いとこ何か食べ物をやらなくては


 ちなみに赤鬼と青鬼は、オーガがやられたのを見た瞬間、『弟者ー!!!!!!』と叫んで、『覚えたぞ旅人!決して許さんぞー!!!』と叫びながら、将軍に追われてどこかに行ってしまった


 まぁ色々あったが・・・


「「『到着-!!!!』」」」


 俺達三人は街の入り口でバンザイする


「いやー、外の景観から予想はしてたけど・・・」

「和の国って感じやね」


 ファンタジー世界になんでや!と思うが、これはこれでRPGの鉄板だろう

 街の入り口では、NPCがずっと「ようこそ村雲へ!!」って言っている


「ほらほらフーキ!これはもしかしてRPG特有の同じセリフしか言わないやつじゃないか?」


 ワクワクしながら入口のNPCに話しかけると、何言ってんだコイツって目で見られた


 なんだ違うのか・・・まぁBGOのNPCは各々が自立した人工知能で動いてるらしいし、普通の人間と話してるイメージの方があってるか・・・


「え?じゃあなんでずっと同じセリフを?」

「これが私の仕事なんですよ」


 仕事か・・・それなら仕方ないな


 世知辛い現実を知って少し萎えていると、フーキ達が恥ずかしそうに俺から距離を取る


「なんで二人共俺から離れんの?」

「あ、いや・・・知り合いと思われたくないだだだだ!?」


 距離をとったフーキの手に思い切り噛みついておく

 お?遂にダメージが通ったぞ?

 不思議そうにしながらもフーキをかぷかぷしておく


「アズのレベルが上がったせいでダメージが通るんや!やめんか!!」


 そう言いながら俺を引き離し、フーキが痛そうに手をさすっている


 いつの間に上がったんだ?

 俺はワクワクしながらステータスを開く

<Lv7


<HP45 MP27 力13(+1) 防御6(+3) 知力35(+4) 俊敏5(+2) 運20 

<スキル:人形使い、自然界の盟友、精霊術、自然、独力


 おお!ここに来て力が大分上がってるぞ!!

 しかし防御とか俊敏が上がってないのはジローで楽をしたせいだろうか?

 このままじゃあ接近戦は厳しそうだな

 でも今は、そんな事はどうでも良いんだ、重要な事じゃない


 俺は新しく解放されたメニュー欄の三つ目に目を輝かせる


「フーキ!遂に俺にも新しい技が開放されたみたいだぞ!」

「おお、良かったやん!アズのレベルやったら三つ四つ覚えてるのが普通やからね、正直言いづらかったから助かるわ」


 え?普通はそんなに覚えてんの?

 ・・・・まぁいい・・・今はそんな事(ry


 気持ちを切り替えつつ新しく覚えた技を読み上げる


「えーと、何々・・・スキル名は・・・エレガントクック・・・!?」


 自分でいきなりエレガントとか言い出すの?

 これを戦闘中に叫ぶのには抵抗があるな・・・


「ぷっく!・・・こ・・・効果は・・・?」


 フーキが笑いを堪えているのが腹立つ・・・

 まぁいい、その効果に恐れおののくが良いさ、なんせエレガントだからな!


「効果は・・・対象の<味>と<品質>を1段階上昇させ・・・・」


 俺は最後まで読み上げる事無く真顔でメニュー画面を閉じる

 隣ではフーキが「ぶっは!生産系やん!」とか腹を抱えて笑ってやがる


「新しい技習得おめ・・・やめ・・・真顔のまま近寄ってこんといて!?」


 真顔でフーキに迫っていると謝りだしたから許してやるか


「それより!はよう新しい装備見繕いにいこうや!」


 フーキのやつ・・・少年のような顔してやがる・・・まだ少年か・・・


「いや・・・とりま軽く食事をとってからで良いんじゃないか?」


 チラリとルピーに視線を向ける

 ルピーは俺の視線に首を傾げると、納得したように手を叩く


『私はさっきアズさんからもらったラット肉で少しお腹膨れてるので防具屋を探しましょう!』

「ほう、経験が生きてきたな」


 どうやらルピーも成長しているらしい

 先程からチラチラとフーキを見ているのを察するに、変態に弱みを握られない為に覚えた処世術といった所か?


「そんじゃあ防具屋探すために散開するかー」


 そう宣言した俺は二人に向けて背を向け、二人が見えない所まで来たことを確認


「さて・・・と・・・」


 近くの茶屋に入ってお茶とお団子を注文する


「ルピーなら乗って来ると思ったんだけどなぁ・・・」


 流石に一番満腹度が減少しているであろうルピーにああ言われた手前言い出せなかったが、俺の満腹度も大分減っているのだ

 回復してからでも問題ないだろう


 決して情報収集が面倒だとか、俺は攻略サイトを見ながらゲームをするタイプだとか、そういうわけではない


 運ばれてきたお茶を飲みながら一息


「うまい・・・骨身に染みるぜ・・・」

「お主、その歳で茶の味がわかるのか?」

「ええまぁ・・・」

「ここの茶は美味いだろう、我が国でも指折りであるぞ」

「はぁ・・・まぁ美味しいですけど」

「それにこの茶屋は団子も美味い!ほーれ、食ってみろ」


 さっきからなんなんだ?

 俺は団子を頬張りながら話しかけてきた人物に視線を向ける

 ん?んー?ドコカデミオボエガアルゾー?


「オイシイデスネ」

「そうかそうか!ところでお主、この国のもんじゃないな?」


 突然背筋に寒気が走る


「最近異国の者が世を騒がせていると聞く」


 今はマトモな服装だが、見覚えのあるチョンマゲ・・・村雲の国の将軍が、凄まじい眼光で俺を睨んでくる


 ああ!疑われてますねぇ!しかも異国の者?タイミング的に十中八九俺達冒険者の事だろうな!


 しかし今それを言ったらマズイ気がする

 とりあえず話を合わせるんだ・・・今は村雲一のうっかり者を演じるんだ!


 俺はそう自分に言い聞かせると、将軍に向けて笑みを浮かべる


「怖いですよねぇ!俺はバリバリの村雲の民なんでそんなやつ許せませんよ!」

「・・・ちなみにこの事は民衆には広めないよう兵達に言ってある」

「やや!まぁ俺も今初めてきいたんですけどね!一般論!一般論としてですよ!やだなぁ!!」


 将軍は「そうか・・・」と呟くとゆっくりとお茶を啜る

 どうやって茶屋から逃げようかと思考していると、将軍がこちらを睨んでいるのが視界に映る


「あ・・・あのー?ナニカゴヨウデショウカ?」

「お主よく見ると良い体つきをしているな」


 ひぃ!?

 将軍の発言に後ずさる


「お主は余の国の民と言ったな?ならば国の為に働くのが世の道ではないか?」


 何言ってんだこいつ!?

 絶対厄介毎を押しつけようとしてやがるだろ!?


 だがまぁ早くここから逃げたいので頷いておこう


 将軍は首を縦に降る俺の姿を見て満足そうに頷く


「デアルカ、それでこそ余の国の民である!」


 あはははは・・・絶対村雲の民って信じてねぇなこれ

 苦笑いを浮かべる俺を見て、将軍がニカっと笑う


「して小童、お主の名は何と申す」

「・・・アズです」

「ほう!また随分と南蛮かぶれな名よのう!」

「ははは・・・はぁ」


 将軍に背中を叩かれながら、今日一番の溜息を吐く


「実は最近この国で妖精のイタズラ被害が多発しておる」

「へぇ!妖精ですか!」


 テンションだだ下がりだった俺は、妖精という言葉になんとか心を持ち直す

 RPGと言えば外せませんよね!妖精!


「そこでお主には調査及び討伐を依頼したい、報酬は弾むぞ?」

「是非やらせてください、どのあたりにいそうとか目星はついてるんですか?」


 報酬という言葉を聞き、条件反射で承諾してしまった・・・

 まぁいいか、なにより妖精には一度会ってみたいからな


「うむ、隣国であるグラフの地より北に位置する大森林である!」

「ふむふむ・・・へぁ?」


 思わず変な声で聞き返してしまった

 え?来たばかりなのにグラフに逆戻りすんの?


「それでは頼んだぞ!!」

「え?あ!ちょ!?」


 あたふたする俺を置いて、一人茶屋を出ていった将軍を見ながら呆然と呟く


「えー・・・まじかー・・・」

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