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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第一章 空の王者と愉快な仲間達
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第十六話 三匹の鬼

「おー!!!あそこ!城が見えてきたぞ!!」


 モンスターを退治しながら街道を進軍する事一時間、俺達はついに新たなる街を目の前にしていた


「短いようで長い一時間だったなぁ・・・」


 溢れ出る火の玉をルピーが真っ二つにしたり

 襲いかかってきた一つ目をフーキがアイアンクローで潰したり

 竹槍を持った傀儡人形をフーキとルピーが連携して倒したり・・・

 あれ?俺何もしてなくないか?


 一人口をムニムニさせていると、ルピーが嬉しそうに前方を指さす


『あの橋を渡れば城下町まで数分も無さそうです!』


 そうチャットを流しながらルピーが指差す先には、赤色の装飾がされたデカイ木製の橋が佇んでいる


「「うわぁ・・・」」


 俺とフーキが同時に嫌そうな声を上げる


 そんな俺達を見て、ルピーが不思議そうに首をかしげる


『どうしたんですか?はやく街に行ってご飯にしましょう!』

「あ、うん、せやね」


 先頭を歩いていたフーキが、頷きながらも俺達に振り向く


「あのあからさまな景観、わいはボスやと思うんや」


 奇遇だな、俺もそう思う

 だって明らかに橋の幅が広いし、ここ以外渡れる所がないもん


 驚いているのはルピーくらいだ、もしかしてゲームあんまりしないのかな?


「そこで、わいが開幕にボスのヘイトを稼ぐから、ヘイトが固定されるまで攻撃せんで欲しい」


 俺とルピーは防御が紙だからそれが妥当な所だろうな


『ヘイト?が固定されたのはどうやって見れば良いんですか?』

「ああ・・・なるほど・・・ルピーさんはアズの指示に従ってくれる?」


 フーキが何かを悟ったように、優しい目でルピーを撫でる

 それ、セクハラですよ?


 ルピーが『わかりました!』とチャットを流したのを確認したフーキが、おそるおそる橋に踏み込む


「来るとしたら・・・そろそろやろうな」


 橋の真ん中まで来た辺りでフーキが呟く


 それと同時に橋の下、両サイドの川の中から、赤色と青色の生き物が勢いよく飛び出してくる


 全身の肌の色はそれぞれ赤と青、各々頭に一本と二本の角を生やし、虎柄のパンツをはいている


「よくぞ来た!矮小なる旅人よ!」

「我ら!鬼神三兄弟!」

「「貴様らの武器を貰い受ける!!」」


 そう言いながら、両手を開いて威嚇するように二体の鬼が迫ってくる


 二体の頭上には、それぞれ赤鬼LV50、青鬼LV48の文字

 言うまでもなく名前の色は真っ赤っかだ


「おいフーキ!推奨レベルおかしくないか!?」

「・・・せやね」


 あれ・・・?同意した割にフーキの目が燃え滾ってやがるぞ?


「・・・BGOにはフィールドの途中復帰は出来るけど、全滅すると街からやり直いしっちゅう仕様があるんや」


 つまりここで全滅したらフーキのここ数日の努力?は無駄になるという事か?

 俺の怪訝な表情を見てフーキが頷く


「そんなの・・・認めれんに決まっとるやろー!!!」


 フーキの絶叫が橋にこだま、赤鬼の腹にモロに拳が直撃する


 しかしフーキの渾身の一撃は赤鬼の腹筋により防がれ、1ダメージも与えられてない


 赤鬼は残忍な笑みを浮かべる


「なんなんだぁこれは?ふぅん!!!!」


 赤鬼が軽い叫びと共に腹筋に力を込めると、腹筋を引き締めた衝撃でフーキが後方に弾け飛ぶ

 おいおい、あのフーキさんが瀕死だぞ?


 ぎりぎり耐えたフーキがポーションらしき物を飲んで回復しているが、完全に鬼達に取り囲まれてしまっている


「良いだろう、まずは」

「お前から」

「「血祭りにあげてやる!」」


 そう言いながらフーキを指差す赤鬼

 やるじゃないかフーキ、ちゃんとタンクの役目を全うとしたな


 俺は赤鬼と青鬼に詰め寄られるフーキを見ながら痛覚設定を遮断、橋からの脱出を試みる事にしよう


 これは全滅を避けるための必要な措置、決して我が身愛しさに友を売ったわけではない・・・なんで痛覚遮断したかって?このレベル差であいつらの攻撃食らったらちょー痛そうだもん!


 こそこそと鬼達の視線から外れ、混乱しているルピーの肩を叩く


「逃げるぞルピー、こっちだ」

『で!でもフーキさんが!』

「大丈夫だ、普段堅実プレイがもっとーなアイツがわざわざ叫んでヘイトを稼いだんだ、そういう事なんだろう」


 恐らくフーキも同じ考え・・・全滅だけは避けたいといった所だろう


 繰り返すが決して我が身愛しさに友を売ったわけではない!


 尚も腑に落ちない表情のルピーの手を引き、橋の出口に向けて突っ走る


「あとちょっと!」


 出口目前、気が緩んだ瞬間に背後でドスンという音が聞こえる


「どこにいこうというのだね?」

「デスヨネー!!!三兄弟って言ってたもんねー!?」


 ボスからは逃げられない!!


 急いで旋回、杖を構えて臨戦態勢に入る


 そこには赤鬼青鬼より一回り小さいが、全身緑色

 両手に銀色のメイスを持った白髪白髭の鬼が・・・


「おい!一匹異物混入してんじゃねぇか!!」


 俺は目の前のオーガLv10を指差す


「な!我が弟をバカにするか!?」

「貴様、余程愉快な死体になりたいとみえる」

「「「覚悟!!!」


 あ、やっべ!


 三体の鬼のヘイトが一気に俺に固定されたのを確認、迫り来る巨体に体を竦める


「絶体絶命ってやつですかねぇ!?」


 冷や汗を流しながらも杖に力を込める

 何とかしてこの場を退却せねば!?


 近くに漂っていた精霊を集め風を巻き起こすが、鬼達は心地良さそうに胸毛やら髭やらすね毛を揺らす


「はっはっは!我ら三兄弟を愚弄した罪」

「あの世で」

「「「後悔するがぁぁぁ!?」」」


 各々の武器を振り上げた鬼達が、奇声をあげて何かに弾き飛ばされる


「今度は何だ!?」


 俺は唐突に橋を横切った物に視線を向ける

 しかし見失った!?どうなってんだ!?


「最近巷で鬼が暴れてると聞いて張っていたが・・・見事に尻を出したな」


 突然の乱入者、しかし誰一人と見つけることが出来ず、全員周りをキョロキョロしている


「やれやれ、この程度の擬態も見抜けんとは、貴様等本当に鬼か?」


 そんな呆れた声と共に、橋の木目がゴリゴリと動き出す


「「「「ま・・・まさか・・・」」」」


 橋は不自然な動きをすると真上に突き出し根っこのように人が這い出てくる

 そう・・・木目と思っていたそれは・・・尻だった


「「「「ええ!?そう出てくるの!?」」」」


 俺達はあまりの出来事に驚愕で目を見開く


 上半身を黒装束、頭には立派なちょんまげ

 そして見事なまでのフンドシ装備の変態老人が、橋の上で仁王立ちしているのだ

 というか変態の癖に地味にイケボなのが腹立つな


 あまりの出来事に体が硬直した俺達冒険者PT

 そんな俺達を無視して話が進んでいく


「ま・・・まさか尻を硬質化する事によって橋に擬態するとは・・!?」

「落ち着くのだ弟よ、所詮尻を木と同じ性質に変えた程度の事よ」


 何か変なワードが聞こえた気がしたが・・・耳がおかしくなったのかなぁ

 自分の耳に自信が無くなってきている俺の横で、フーキが考えるのをやめている


「・・・鬼が来るまでずっと橋に擬態してたのか?よく息がもったな」

「恐らく全神経を尻に集中させた事により」

「尻呼吸を可能にしたのであろうな」


 鬼さん解説どうも

 フーキなんて「知らんがな」で終わらせたぞ?

 そんな俺達を見ながら変態が鬼達に歩を進める


「今日は気分が良いな・・・」


 そう言いながら鬼の前に立つと、腰をかがめだす


「全てを断ち切れ、真ケツ流奥義ぃぃ!!!斬!尻!剣!!!」


 変態の掛け声と共に大地が震え、赤鬼と青鬼は胸元を引き裂かれながら弾き飛ばされる


 そうはならんやろ・・・


「一流の剣士が剣を磨くように一流の尻士が尻を磨くのは道理」


 尻の切れ味に満足したかのようにウンウン頷くと

 変態はケツを叩きながら鬼達に名乗りを上げる


「やーやー我こそは!村雲城が将軍!源の清盛なり!」

「なんかもう滅茶苦茶だよ!?」


 なんなんだよ!なんなんだよもう!

 というか将軍?あれが一番の偉い人なの?

 下半身は完全に足軽のそれだけど?

 だー!もう突っ込むのがめんどくさい!!!!!


 将軍は頭を抱える俺に見向きもせず、鬼達に尻を向ける


「世を乱す悪鬼共に天誅をくださん!」


 そう言いながら将軍がジリジリと尻を鬼に近づける


「ええいこしゃくな!弟よ!そこの旅人は任せた!」

「我らはこいつの相手をする・・・人間相手に使いたくなかったが・・・このこん棒を使っ・・・む?生暖かい?」

「残念だったな、それは私のオイナリさんだ」

「「ゲェ!?」」


 そんな会話をしながら、赤鬼と青鬼が将軍と戦闘を開始する


 俺は残されたオーガLv10に視線を向ける


「アズ、これはもしかして?」

「ああ!もうなんかめちゃくちゃだが・・・イベント戦だ!!!」


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