第十五話 アーツ?何それ美味しいの?
次なる街を求めて街道を進軍するアズ一向
どうやら今は戦闘中の模様だが?
「崩拳!」
『神楽舞o(`ω´ )o』
フーキの掛け声とルピーのチャットが流れると共に、目の前を漂っていたモンスターが粒子となって消えていく
この地に来てからずっと周りを漂ってる火の玉
名前はそのまま火の玉で、カラーは青色
色的にもしかしてブルーラットより弱いんじゃないか?
エンカウントと同時にフーキやルピーが瞬殺するから知らんけど
小さくなった事でジローに乗って移動する事が可能になった俺は、ジローの上で欠伸をしながら二人の様子を見守る
ん?ルピーがフーキにアイテムを見せている
ドロップ品でも出たのだろうか?
『これは!これは食べれますかね?』
「いやぁ・・・火の玉やし食べれんやろね」
ルピーがションボリしながらアイテムをインベントリにしまっている
お前はどこぞの蛇か?
その内倒したモンスターを見ながら、で?味は?とか言ってきそうで怖いな
「それにしても・・・」
俺はニヤニヤしながらフーキに詰め寄る
「技名を叫びながら攻撃とか、フーキって地味に厨二病患者だよな」
うちの兄貴がオープン厨二病だとしたら、フーキはムッツリ厨二といった所だろう
フーキは俺の言葉を聞いて一瞬間抜けな顔を見せるが、ニヤニヤしている俺を見て呆れたようなものに変わっていく
「なぁアズ、魔法とかアーツは何覚えとるん?」
「何だ急に?・・・そうだな、俺は精霊術と・・・自然界の盟友が戦闘では役に立ちそうかな」
ブルーラットと戦った時に少しだが見ただろうに
怪訝な顔でフーキを見ていると、これでもかというほど溜息を吐かれてしまった
「それはスキルや、メニュー画面の上から三番目」
「三番目?」
メニュー画面を開いて確認する
「ああ、???になってる、多分まだ未開放のコンテンツだな」
「えー・・・」
なるほど、フーキの態度から察するに、ここにアーツやら魔法が開放されるのだろう
納得したように首を縦に振る俺を無視して、フーキがルピーに視線を移す
「ちなみにルピーさんは何覚えとるん?」
急にロリコンに話を振られたからか、ルピーがあたふたしている
やめてやれよ犯罪者
『えーと!神楽舞、一攻陣、方陣展開、飢餓の狂騒です!』
そうチャットを流しながら、技の詳細情報が送られてくる
<神楽舞 > <単体に攻撃力+20%のダメージ
<一攻陣 > <20秒間攻撃力+50%、守備力−50%、自身に一攻陣のバフを付与
<方陣展開> <付与されている陣系バフを消失させ、その陣系バフにより様々な効果を得る
<飢餓の狂騒> <満腹度を50%消費し、10秒間攻撃力200%上昇効果
送られてきた情報を確認して目を輝かせる
「ほー!こんな物もあるのか!」
ただ無意味に叫んでたわけじゃなかったんだな!
これはあると無いとでは全然違うぞ?
どうやら俺はいつのまにか技縛りプレイをしてしまっていたらしい
「それで?どうやったら開放されるんだ?」
「えーと・・・それはやな・・・」
フーキが言いづらそうに言葉を濁す
何だ?珍しい
『レベルが上がった時に覚えましたよ!』
ルピーがハイハイ!と手をあげながら新しい情報を提供してくれる
「なんだ、じゃあ俺は単純にまだ何も覚えてないだけか」
「せ、せやろうね、その内覚えるんとちゃう?」
フーキがここぞとばかりに便乗してきた、いつもズバズバ言ってくる癖にさっきからそわそわしてどうしたんだ?
「というかルピーはチャットを流してるけど技名は叫んでないよな?」
「ん?ああ、アーツはチャットでも発動可能やで」
「・・・叫ぶ必要無いじゃん」
俺の言葉にフーキがやれやれと手を広げる
「マクロ組んでるならまだしも、戦闘中にチャット打ってたら発動が遅れるやろ?」
まぁ一理ある
だが俺が知る限り、フーキという男はマクロを組みに組んでレイドダンジョンに挑むタイプの男だったと記憶している
更に強まる俺の視線に、フーキは観念したようにポツリと呟く
「折角のRPGやで?そっちのが燃えるやろ?」
「結局それじゃん!なんやかんや言ってやっぱりムッツリだな!この厨二男!変態!ロリペド野砲!」
「なんか酷ない!?」
フーキがわめいているが、無視だ無視、厨二がうつる
そんなやり取りを見てルピーがアタフタしているが、俺達にとってはこれが日常会話だからな、慣れてくれ
「ちなみにフーキの崩拳はどんなスキルなんだ?」
「崩拳は簡単に言うとダメージ+デバフやね、ほれ崩拳!!」
そう言うや否や、フーキが俺目掛けて拳を突き立てる
体が少し宙を浮き、少し後方に吹き飛ばされるが
よろめきながらも体勢を立て直す
「おい!いきなり攻撃してくるとは良い度胸してるじゃなイカ!!」
俺の抗議の声にフーキがアッカンベーしている
「百聞は一見にしかずや、左下のHPゲージの上にアイコンがついとるやろ?」
む?確かに二つついてるな
俺はデバフと思われるアイコンに手をかざす
<防御ダウン、妖精の呪い>
なるほどな、ここにバフやデバフが表示されるのか
具体的な数値や効果までは見れないみたいだが、何が掛かってるかはわかるということか
「というか妖精の呪いってなんだよ?さっきの説明じゃそんなの言ってなかったじゃないか」
まったく、こっちが知らないからって好き放題し過ぎだろ!
しかし俺の抗議の声に、フーキが首をかしげる
「それはPT組んだ時からずっとついとったで?」
なん・・・だと・・・?
確かに思い出してみれば結構前からついていたような気がする
ルピーとヌレー河川に行った次の日ぐらいだったか・・・?
・・・というか
「なんで俺にデバフがついてたの知ってんの?」
フーキが明後日の方向を向いて口笛を吹いている
こいつ・・・ここで倒してしまっても構わんのだろう?
そんな杖を構える俺の肩をルピーがちょんちょんと叩き、チャットを流す
『PTメンバーの状態は左上に表示されてます!』
左上を確認して納得したように頷く
「殴る必要なかったじゃん!!」