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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第一章 空の王者と愉快な仲間達
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第十三話 クランシステム

 

「やってしまった」


 ボロボロの服をマントのように羽織った馬鹿兄を見下ろしながら、どこかスカッとした気持ちで呟く


 馬鹿兄こと†エンドシャドウ†が突然POPしたので、ついつい石つぶてを放ってしまった所、見事にクリティカルヒット

 HPが半分消し飛び、気絶の状態異常を引き起こして地面に突っ伏してしまっている


 杖でつつくが全く反応がない


「どうしたもんかな、これ」


 グラフ草原の東に居を構えたとか言っていたが、まさかこんなただの岩山を秘密基地にしてるとは


 まぁサービス開始したばかりのゲームで、ゲーム初心者がクラン拠点を持ってたらそれはそれですごいが・・・

 そう思いながら岩山という名の拠点を見ていると、中から新しい人影が出てくるのが見える


 深い深い青色の髪を後ろで束ね、メイド服のような物を着た綺麗な女の人


 そんな女性がニコニコと俺の方に歩いてくる


「あら、可愛いお客さん」


 察するにこの人、馬鹿兄が言ってた忠臣って人なんだろうな

 こんな綺麗な人といつ知り合ったのやら


 ヨダレを垂らして気絶する馬鹿兄を見下ろし、何とも言えない気持ちになる


「あらあら、それはもしかしてうちのマスターかしら?」


 俺の視線を追い、馬鹿に気づいた女性の目が細まる

 心無しか空気が冷たくなるのを感じる


 あ、やべぇ!

 この状況、どう考えても俺が馬鹿兄を倒した風にしか見えない


「あ!これはその!?違うんです」


 どもりながらも言い訳を発そうとした所、口を人差し指で塞がれてしまった


「大丈夫です、きっとうちのマスターが何かしたのでしょう?」


 クスクスと笑う女性に肩透かしを食らう


 なんでこんな出来た人が馬鹿兄と一緒にいるんだ?


「私はメアリー、この人と同じクラン、†断罪者†の副マスターです」

「あ・・・俺はアズです、この馬鹿の・・・血縁みたいな者です」


 つられて挨拶をすると、メアリーさんが目を見開く


「あらあらあら!マスターからよく聞いてますわ!貴方がアズリエルちゃんね!!」


 なんだ?馬鹿兄は俺の事をメアリーさんに話しているのか?

 ・・・というか!


「あの?メアリーさん?俺はアズです、アズリエルではないです」


 俺の言葉にメアリーさんは首を傾げる


「あら?確か昔貴方が「オーケイ!もう良い!それ以上イケナイ!」


 人には決して触れてはいけない話題があるんだ・・・あるんだよ!


 メアリーさんは焦る俺を見ながらクスクス笑うと、超至近距離で俺の顔を見つめ出す


「んーそれにしても、とっても可愛いわね」

「やめてください・・・高校生にもなってそんな事言われたら泣きますよ?良いんですか?ここで子供のように転がり回りますよ?」


 メアリーさんは俺の避難の声を「それはそれで見てみたいわね」と軽く流すと、腕に巻いていたベルトからナイフを取り出し俺目掛けて振り下ろす


 突然の出来事に対処が遅れたが、ナイフの扱いに慣れてないのか頬を少しかすった程度で済む


「のわ!?な!?何するんですか!?」


 驚きながらも杖を構える

 フレンドリーに話してた相手が急に襲ってくるとか、人見知りを超えて人間不信になるぞ?


 なんかヤバそうだし・・・ここは軽く一発かまして撤退するとしよう


 俺は杖で地面を殴りつけて砂をメアリーさんにぶっかけると、距離を詰めて杖を振りかぶる


 しかしメアリーさんは俺の攻撃を避けようともせず、笑顔で一言


「貴方の攻撃は私には届きませんよ」

「なぁ!?」


 その言葉の通り、俺の攻撃はメアリーさんの目の前で停止

 何か硬い物を殴ったような痛みだけが俺の腕を駆け巡る

 何が起きたかわからず困惑していると、メアリーさんがナイフを突きつける


「貴方は動けない」


 メアリーさんのナイフを避けようとした俺は、体が微動だにしない事に気が付く


「な・・・なんで・・・!?」


 メアリーさんは混乱する俺に向けて満面の笑みを浮かべる


「私の言葉は万物あらゆるものに干渉します、貴方は私の言葉に逆らう事が出来ない・・・動いても良いですよ?」


 冷や汗を流しながら、動くようになった体でメアリーさんから距離をとる


 万物あらゆるものに干渉する能力

 まさかそういうスキルか!?

 言葉にしただけで相手の行動に干渉するとか・・・そんなのチートだろ!?


 緊張からか自然と喉の音が鳴る


 メアリーさんはそんな俺を見て・・・


「なーんて、冗談です」


 両手を前で叩いてナイフをしまってしまった


「・・・は?」


 目を点にしながらしばし・・・


「え?でも確かに攻撃は当たらなかったし・・・動けなかったし?そういうスキルなんじゃ?」

「そんなスキルあったらチートですよ、アズちゃんはセクシュアルガードをしてませんね?」


 メアリーさんがそう言いながら、チャットからURLを送って来る

 俺は頭にはてなを浮かばせながらもリンクを開いて内容を確認する


「なるほど・・・」


 リンク先の説明を読んで納得する

 内容を要約すると、プレイヤーは数段階に分けて他プレイヤーからの干渉を防ぐ事が出来る・・・という物だ

 設定すれば他者から触れられる事を無くす事も出来るみたいだ


 ちなみにBGOでは初期設定ではオフになっている


「アズちゃんの唇に簡単に触れたからもしかしてと思ったけど・・・可愛いんだから最低限のプロテクトはつけておいた方が良いわよ?」


 なるほど・・・唇の干渉は比較的早い段階で制限される

 唇に触れたって事はプロテクトをつけてないと考えたわけか

 あと可愛いはやめろ


「でも動けなかったのは?」

「そっちは簡単、麻痺中だったからよ」


 ああ・・・そんな初歩的な物だったのか

 メアリーさんの話術に騙されて気づかなかった・・・

 恐らくナイフに麻痺とかそんな感じのエンチャントがかかっているのだろう


「少し呑気に構えてるみたいだったから、お姉さんとして警告をね?」

「それなら普通に言ってくださいよ・・・なんでわざわざこんな方法で・・・」


 というか多分見た感じ俺と同い年くらいだろ?


 俺の溜息に、メアリーさんが目をキラキラさせる


「だってこっちの方がカッコイイじゃない?」

「・・・」


 まともな人だと思っていたが・・・

 なるほど、どうやらこの人も厨二病患者だったようだ


 何故馬鹿兄と一緒にいるのか、全てに納得がいってしまった


 メアリーさんは冷たい視線を受け尚ニコニコと笑顔を浮かべている


「さて、それではこれから大事な用事があるので、マスターは頂いていきますね」


 メアリーさんはそう言いながら、未だヨダレを垂らしながら気絶する馬鹿兄を担ぐ


 すげぇ力・・・


「大事な用事って?」


 大した事じゃないと思うが、そう言われると気になるじゃいか


「私達は領土戦の準備中なのですよ、現在東以外の地域は全て大クランが占領してしまっていますので、頑張らないといけないのです」


 思ったより大した事だったわ

 しかしもう大クランとかあるのか、なんかカッコイイな


「ちなみに北の大森林は小鳥の会、南の河川は漁業組合、西は円卓の騎士団が収めています」


 統治している団体名を聞くと、あんまりカッコよく思えなくなった不思議


「・・・・頑張って下さい・・・俺も街に戻ります」


 今日は慣れないPVPもどきで疲れたし、はやく帰りたい


 適当にメアリーさんが見えなくなるまで見送った俺は、ちゃっちゃと街に戻ってちゃっちゃと宿でログアウト

 そのまま明日の献立を考えながら深い眠りにつくのであった


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