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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
BGO!外伝 アーサー王伝説
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外伝第23話 恐怖の圧政者

 カフェインを仲間にし、吸血鬼ヴァンプの住処に向かうアーサー一向から場所は少し変わり、魔王軍に対抗すべく集まった連合軍の一兵団。


 ぽつぽつと冷たい雨が降る中、同盟国であるリョーマから魔王軍襲来の情報を得た新米領主は、他六大領主と共にボケハザマに来ていた。


「まさか連合軍を結成した次の日にこんな大戦が仕掛けられるとはな!」


 だが魔王軍も運が悪い。

 新米領主はかつてのぶにゃがが、ヨッシー今川を倒したボケハザマを見渡し不敵な笑みを浮かべる。 


 そこには現ランキング106位、凸トツ凸の領主ピトラーを含めた6大陣営・・・総勢数千。

 リョーマから聞いた情報だと、相手の数は数百にも満たないらしい。

 いくらランキング1位様だろうと、侵略に向ける兵士の数なんてたかがしれている。


「それでも数百なんて兵士を簡単に派遣するなんて、流石としか言いようがないけどな・・・しっかし静かだなー」


 これから小規模とはいえ戦が起きると言うのに、なんというか静かすぎて違和感を感じる。

 今回は余裕な戦だし、本来ならもっとこう・・・和気あいあいとしてるもんだが・・・


「まぁ良いか」


 どうせ俺達の圧勝で戦は終わる。


 新米領主がへらへらと笑っていると、近くで鉄と鉄がぶつかる音が聞こえてくる。

 どうやら戦闘が始まったようだ。


「これは早く行って手柄の一つでも奪い取らないとな!敵はどこだ?」


 嬉々として剣の柄に手を置いた新米領主は、しかし戦闘の方角を見て顔を顰める。


「自軍の後ろ・・・?おいおいどっかの領主が臆病風に吹かれたか!?」


 背後から迫る喧騒に舌打ちを一つ、オープンチャットで他のギルドに緊急チャットを流す。


「くそっ!こんな時に内乱なんて・・・リョーマさんとの同盟契約で見方はターゲット出来ないはずだぞ・・・!?」


 しかしここに来て新米領主は違和感の正体に気が付く。

 襲ってきた連合軍の一団体と、襲われている自軍以外の軍が一切動いていない事に。


「おい・・・まさか・・・まさか!?」


 急速に減っていく自軍の士気ゲージを見ながら、微動だにしない魔王軍の士気ゲージを確認。


「いくら魔王軍のアバターが個最強といえ明らかにおかしい・・・まさかスパイか!?」


 絶望に顔を歪める新米領主の近くに、何か重たい物が落下したようなSEが鳴り響く。

 画面を音の方角に向けると、赤髪の軍服女・・・ピトラーが巨大な機械のアームで自軍の兵士を拘束しているのが視認出来る。


「なるほど良い練度の兵士だな」


 ピトラーは冷たい眼差しのまま感心したようなチャットを流すと、背後に控えていた軍服の兵士から白い液体の入った注射器を受け取る。


「なん・・・で・・・?」


 何故味方を攻撃できる?という問いを口に出そうとするが、うまくチャットが回らない。

 しかしピトラーは何を言いたいのか察したのか、はてと首を傾ける。


「貴様らが契約したのはリョーマであろう?私には関係ない話だ」

「なぁ!?」


 そんな横暴あってたまるかと叫ぶ新米領主を無視して、ピトラーは口を歪ませる。


「このまま殺すには惜しいコミーだ」


 そう言いながら、もがく兵士の首に注射器を突き刺す。

 すると先ほどまで暴れていた自軍の兵士は、機械のアームに宙ぶらりんにされたまま、だらりと四肢を空中に投げ出す。


 それはただのNPCに過ぎず、いつも決まったテンプレートしか話さない雑魚兵士の末路。

 だが仲間と思っていた軍に裏切られ、窮地に追いやられていた新米領主は、何故だか頭の中で何かが切れる音が聞こえた気がする。


「おい・・・俺の仲間に・・・何をしたぁぁぁ!」


 自分でも驚く程の声で叫び、隣の部屋から壁ドンを受けながらピトラーに向けて剣を引き抜く。

 レベル80から繰り出される渾身の一撃、新米といえ領主は領主、このゲームを始めた初心者という訳ではない。

 領主になる為、それなりのレベルとそれなりの金を集めた猛者だ。

 だがしかし。


「くう!?」


 新米領主の攻撃は、いともたやすく機械のアームに受け止められる。


「愚かだな、感情に任せて剣を振るう軍人がどこにいるか」

「黙れよ外道が!お前だけでも道連れに」


 してやる!と言おうとした新米領主の画面が真っ赤に染まる。


「出血の・・・状態異常・・・?」


 ピトラーは何もしていない・・・?

 困惑に顔を歪ませながら腹部を確認すると、何かが刺さっているのを確認出来る。

 背後からの奇襲・・・しかしそこに敵がいる筈が・・・


「なぁ・・・!?」


 背後を確認した新米領主の目が大きく見開かれる。

 そこには先ほど何かを注入された自軍の兵士。

 ピトラーに攻撃する為、乗り越えたNPCの姿。


『イエスマイロード!オールハイル凸トツ凸!!』


 瞳孔を見開き、狂信者のような表情を浮かべた自軍の兵士は、狂ったようにチャットを垂れ流す。


「流石禁制チートアイテムだ、中々良い具合のようだな・・・さて」


 尚も混乱が解けない俺の四肢を、機械のアームが掴む。


「貴様はPCのようだな、使えそうも無さそうだ」


 次の瞬間、自分のアバターの四肢が裂けるのを視認した新米領主の画面に、YOUDEADの文字が表示される。


 ・・・・・・


 バラバラに解体された物を見ながら、ピトラーは顔芸を披露しながら静かに宣告する。


「さて諸君、戦争を始めよう」


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