表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第一章 空の王者と愉快な仲間達
12/135

第十一話 青葉家の一日

 

 今日は一日緊急メンテナンスだ!

 最近はBGOばかりで積みゲーが溜まってきているし、良い機会だから消化しよう


「そうと決まれば!」


 お菓子の調達をする為一階に降りた所で、普段ほんわかな姉が珍しく怒ったような様子で馬鹿兄を正座させているのを確認する

 珍しい事もあるものだと思いつつ、菓子棚を漁ろうとしていた所を姉に止められる


「ひ~ろ~?貴方の席はこっちよ~?」


 姉が有無を言わさない顔で自分の膝を叩く

 思わずヒィッっと情けない声が出る


 姉は俺を怒る時、歳を考えず膝に座らせ抱きかかえながら怒る


 そう、とてつもない精神攻撃と共に怒るという鬼畜技を所持している(本人にそのつもりはない)

 馬鹿兄はうらやましい事にいつも正座で真正面から怒られている


 しかしこうなってしまった姉は止められない

 捨てられた子犬のような目で兄に相対し、姉の膝の上に座る

 兄は兄で、表情はいつもの厨二顔だがその目は捨てられた子犬のような目をしている

 正座をされながらも右手でポーズを保つ兄を無視して姉に尋ねる


「して姉上様、私めは一体何をしてしまったでございましょうか?」

「二人とも?ゲームに夢中なのはわかるけど・・・」


 気づく、そういえば昨日は姉の当番の日だった

 緊急メンテナンスが始まり不貞腐れた俺は、枕元のカロリーメイトを食べてそのまま寝た

 つまるところ昨日は一度も食事に降りてない


 途端にお腹が鳴り、嫌な汗が流れる

 兄は両手で顔を覆い、「この世の終わりだ・・・」と呟いている


 昨日は姉の当番ということで、腕によりをかけて料理をつくったらしい

 が、二人共一日中降りてこず、朝昼晩すべての料理を冷蔵庫の肥やしにしたらしい

 姉の怒りが収まるまで1時間ぐらいの説教を受けることになるのであった




「ところで馬鹿兄、BGOではどんな感じになってんの?」


 反応は無い

 いや、わかっているのだ・・・兄を呼ぶ時に馬鹿兄と言って反応するわけない


「ところで太郎兄、BGOではどんな感じになってるんですか?」


 反応はない

 いや、わかっているのだ、馬鹿を呼ぶときに兄と言って反応するわけない

 溜息一つ、普段呼ぶ気にもならない言葉を綴る


「漆黒の羽を持つ我が兄エンドシャドウ・・・BGOではどんな感じなの?」


 手で髪をかき上げながら、兄は不気味な笑みを浮かべて返事をする


「漆黒の魔王にして最強の勇者たる我は・・・新たなる組織の王としてグラフの地に降臨した」


 つまる話クランを友達と作ってマスターになったよ、って事だろう


 唐突だがクランとは!他のゲームで言うところのギルドといえばわかるだろうか?

 PTを拡大したもので、より多くの仲間とチャット等でやり取りを出来、週に何度か行われる領土戦に勝利するとその地域を占拠する事が出来る!

 領土を持っているクランはその地域の税金を免除されたり、クラン用特別スキルが常時発動したりその他にもいろいろあるらしいがここでは省く


「馬鹿兄は新しいクランに入ったのか、この前言ってた忠臣って人と?」

「然り、我が忠臣と共にグラフ城東のグラフ草原に拠を構えている」


 ちなみに一回エンドシャドウの言の葉を言えば反応してくれる制約になっている

 昔姉が返事をしない兄にお怒りになり、大いなる血縁の制約という名の下兄が泣きながら一回だけだ!一回だけだ!と土下座していたのは良い思い出だ


 しかし・・・馬鹿兄は馬鹿兄で楽しんでるようで何よりだ


「まったく太郎ちゃんとひろは仲が良いなぁ」


 頬に手を当てこっちを見ている姉


 姉もBGOしないかな?

 今日のようなことを起こさないためにも布教しないといけないかもしれない

 まずはヘッドギアを買うところからだ、あの姉ならプレゼントと言えば喜んで受け取るだろう


 馬鹿兄に視線を送ると、わかっているとでも言うように、片手を目で隠したままウィンクしてくる

 食事が終わり部屋で積みゲーを消化すべく二階に上がろうとしたところで姉が抱き着いてくる


「ひ~ろ~今日は一緒に買い物行こうよう~太郎ちゃんが今日はできないからひろと買い物行けるって言ってたよ~」


 あの馬鹿兄、俺を売りやがったな!


「い・・・いや~今日は他のゲームをしようと思って」

「そういえば昨日のご飯まだ冷蔵庫の中にあるからいつでも食べていいよ~」

「いたのですが折角なのでお供いたします」


 姉の目から怪しい光を感じて同行を願い出てしまった


「じゃあ今日はお買い物で決まり~!」


 姉が両手を上げてバンザイ

 諦めの目で眺めつつ支度をすることになった



[ショッピングなう]

[どんまい、姉さんによろしゅうな]


 フーキにLINEを送ると速攻で帰って来る、相変わらずの即既読おつである


 近くの商店街に付いた俺達は

 食品の買い出し、姉の洋服や俺の洋服等を見たりして色々回っている

 ほとんど買ってないが、これがウィンドウショッピングというものだろうか

 姉が眩い程の笑顔で手を引いているので何も言うまい、というか


「手を繋ぐな手ぉ!歳を考えろぉ!」


 振りほどきながら後ずさる、流石に人前でブローはまずい


 うだる暑さで意識が曖昧になりながらも涼しさを求めて近くの店を見て回る

 そんな風に歩きながら一つの店の前を通る、ここは・・・ジロー(現実)を買った店だ


 懐かしさを感じてお店を見ていると、姉がニコニコとこっちを見ながらお店に入っていく


「・・・仕方ないなぁ、お供するって言ったもんなぁ」


 そう言いながら店に入る

 前来た時は大分昔だったので品物が入れ替わったらしく、新しいぬいぐるみが追加されている


「しばらく来ないうちに見たことない商品が増えたな」


 サルのぬいぐるみを手に取る、手の平と手の平でくっつけたりしてぶら下げれるタイプのぬいぐるみだ

 首にぶら下げて遊んでいると不意に聞いた事のある声が聞こえた


「あんらぁ?あなたその子が気にいったのぉ?」


 聞き覚えのある、聞こえるはずのない声が聞こえる

 変な音を鳴らしながら後ろを向くとやつがいた

 現実にいるはずのない紫髪の巨体



 そこからの記憶は曖昧で気づいたら家にいた

 晩飯時、姉に店員の事を聞いても普通のお姉さんだったよ?と首をかしげる


 食事を終え、ベッドでゴロゴロしながら思考を巡らせる

 ゲーム内のNPCを見た?暑さで幻覚でも見たのだろうか?


「これがゲーム脳ってやつか・・・?」


 一人見当違いな事をぼやいていると、隣の部屋で「我!混沌に陥った世界を救う為!いざゆかん!」という大声が聞こえ正気に戻る


「一応勇者とはいえ魔王なんだよな?設定では」


 まぁそんな事はどうでも良いや

 馬鹿兄の事は無視、急いでPCを確認する


<緊急メンテナンス終了のお知らせ>


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ