第十話 本日の成果!
無事グラフ街まで帰ってきたアズ一向は、そのままの足で酒場に来ていた
ヌレー河川より帰還し、酒場に来た俺とルピー
厨房を借してほしい事を伝えると快く快諾してくれた、人助けはやっとくもんだね
ただし借りるには条件がある、その条件はこれからの時間厨房を手伝うということだった
手伝いさえすればある程度の食材の提供と、調理器具を無償で貸してくれるという豪快さ
相変わらずの太っ腹な、今はコック帽をつけてないおっさんに礼を言い、早速厨房に立とうとしたところで
「おめぇ・・・コック帽つけたほうが良いぞ、あと折角だ、ここはそこまで調理人の身なりを気にするやつはいないがこれに着替えるといいぞ」
そう言って新品の、かつ俺の背丈にピッタリの装備を一式渡される
<システムログ:料理人の上着、料理人の下着、エプロンを手に入れた>
すると近くのスタッフが笑いながら小声で俺にささやく
「ドルガの旦那、またあんたが来てくれると信じて買ってきたんだぜ」
「おい!おめぇ・・・聞こえてんぞ!それは内緒だぞ!」
スタッフはニヤニヤしながら持ち場に戻る、心なしかおっさんの頬が赤く染まっている
おっさんのデレとか誰得だよ
そして装備をもらえてうれしいのだがこれをつけてコック帽はつけませんとは・・・言えないよなぁ・・・くさそうなんだよなぁ・・・
覚悟を決めて帽子をかぶると、戦場へと向けて歩み出す
今日の俺には帰りを待ってるやつがいるんだ!こんな所でもたつくわけにはいかない!
それから数時間の手伝いの後、調理中もずっと自費で食べ続けていたルピーに閉店後もひたすら調理を頼まれ、作り続けた結果
精根尽き果てたアズがそのまま2Fの宿屋に運ばれる事になった
◇
見慣れぬ天井
目が覚めたアズは昨日の事を思い出し頭が痛くなる
ルピーの飢狼のスキルをなめていた
飢狼のスキルは永続的に満腹状態にならなくなる・・・つまりどんなに食べても99%で止まってしまう
どーりでいくら食べても大丈夫なはずだと納得し
「自然のスキルと良い・・・他のスキルにも、もっと隠された能力がある可能性があるのか」
新たな未知の情報に心躍らせながら、ステータスウィンドウを開くとレベルが2も上がっていた
<Lv6
<HP38 MP14 力7 防御5 知力17 俊敏5 運17 残18P
<スキル:見切り、料理人、精霊術、自然、独力 枠外、人形使い、隠密術、精霊術、自然界の盟友
ものすごいステータスの伸び!そして新たなスキルを覚えていた
今まですべてのステータス合わせて精々5-6ぐらいの増加だったが
今回はHPとMPが倍、それ以外のステータスは合計で20も上っている
一番高い上昇値を見せたのは知力と運だった、おそらくルピーとの共同戦線
フーキへの援護等で後衛のステータスが大幅に上昇したのだろう
次にスキルだ
<自然界の盟友>
精霊、自然を使った技の威力が上がり、より上位の精霊を使役できる
かなり優秀な能力だ!これである程度の戦闘方法が決まったと言っても過言ではない
隠密、見切りで相手の弱点を確認してスキルをいれかえ
人形使い、精霊術、自然界の盟友とエピックスキルでの人形を囮にした遠距離キャラだろう
ここまでくれば残っていたステータスを割り振る
<HP38 MP20 力7 防御5 知力26 俊敏5 運20 残0P
PVPではまた違った動きになるだろうが基本はこれで問題ないだろう
お次はジローのステータスだ!
ジローも基本5-6づつの成長を見せている
<Lv6 (耐久値2%)
<HP28 力12 防御3 俊敏9 運1
<スキル:囮、サポート
流石にプレイヤー程のステータスアップはないようだが、いないよりは断然ましだ
一番の問題は耐久値がもう無いに等しい事
BGOでは耐久値の回復にその専門の店に行く必要があるのだが、フーキの情報曰く
「今までで人形屋なんて見つけられてるプレイヤーアズだけやで」
との事だった、実はレアNPCだったのか・・・
だがこのままではジローがヤバイ、今日はジローの為に露店で人形屋を探す事に専念することにしよう
俺は料理服一式をポイポイとインベントリにしまい、扉に手をかける
「さぁ!新しい冒険の始まりだ!」
そんな掛け声と共に勢いよく扉を開けた瞬間、ゴツンというが聞こえてくる
何の音だ?と外をのぞくと、緑髪の男が廊下をのたうち回っている
『いってぇぇぇ!?なんだいきなり!?』
あ、これはあれですかね?俺のせいかな?
「あ、ごめんな・・・」
いや・・・待てよ?
相手は廊下をのたうち回ってるせいで俺を視界にいれていない
昔誰かが言ってたな・・・ばれなきゃ犯罪じゃないと
緑髪の男が怒り心頭に立ち会がった瞬間、俺は隠密スキルを使う
男はしばらく鼻息荒く周りを見渡し、首を傾げながら自室に戻って行った
「これは使えますねぇ!」
『ほんと!センスあるでありますな!』
ミッションの成功に歓喜の声を挙げた俺は、どこからか聞こえてくる子供の声にビクリと体を震わせる
「・・・・?あれ?」
しかし周りには誰もいない
「確かに子供の声が聞こえてきたようなぁ!?」
首を傾げていると、チクリという痛みが首筋に走る
それと同時にクスクスという子供の笑い声が聞こえてくる
『アンタは面白そうだから楽しみでありますな!』
そんな声が聞こえたような聞こえなかったような・・・
ここは幽霊でも出るのか?・・・俺はそういうのは苦手なんだよ・・・
◇
宿屋で恐怖体験に会い、急いで宿屋から飛び出した俺は当初の目的通りアリスを探しに露店通りまで来ていた
結論からいうとすぐに見つかった、運が良かったのかなんなのか
頬に手をあて大きな体で女座り、憂鬱そうな表情の紫髪のモンスターに話しかける
「こんにちは、先日ここでぬいぐるみを買った者なんですが修理してくれませんか?」
「あんらぁ・・・あなたはあの時の子ね・・・そのくらいお安い御用よぉん、って言いたいところなんだけど今少し悩みがあるのん・・・相談に乗ってくれたら修理は無料におまけで良いものあげるわよん」
との事だった
「それは内容次第ですが、一体どんな内容でしょうか?」
「実はねん・・・最近気になる殿方が出来たのよん・・・その人はいつも酒場で働いてて、前はコック帽をつけてた素敵な漢なのん」
「ふむふむ・・・酒場で働いててコック帽をつけてた・・・ん?」
なんだかそんな人物に最近会った気がするぞ?いやまさか・・・ドルガさんだよな?
「その人と付き合うとまでは行かないまでもお知り合いになりたいのよん・・・」
ドルガさんはなんやかんだで良い人だ、こんなモンスターに紹介して大丈夫だろうか?
いや・・・ドルガさんもモンスターに近いといえば近いか
「その人多分俺の知り合いのドルガさんって人です、今度紹介しましょうか?」
すまんドルガさん・・・あんた達なら良い関係になれると思うと信じている
決して修理費が惜しいと思ったわけじゃない
「あんらぁ!ほんとぉ!?是非お願いするわぁん!そうと決まったらまずはジローちゃんを修理してあげないとね!あといつでも連絡が取れるようにこれを渡しておくわん!」
<システムログ;アリスのフレンドカードを手に入れた>
どうやらNPCとはフレンドカードによって情報のやり取りができるらしい
フレンドカードに手紙を書くと、相対するフレンドカードに文章が写され相手に見えるといった形らしい
というかこのモンスターアリスって名前なのか、似合わねぇ
しかしこれでいつでもぬいぐるみの修理を依頼できる
ホクホク顔の俺にアリスがほぼ0距離で詰め寄りながら修理されたジローを渡す
俺は一瞬で顔を引き攣らせる
「くれぐれもよろしくねぇん?」
ものすごい圧力だ、もしかしたらNPCも威圧とかのスキルを持てるのかもしれない
「あとこれはさっき言ってたおまけよぉん」
<システムログ:ぬいぐるみのカタールを手に入れた>
興味深いアイテムを手に入れた、とりあえず料理人装備と一緒に後で見てみよう
そそくさと酒場に移動、ドルガさんを見つけた俺は、会って話がしたいという女性がいると伝えておく
「お!おらに会いたい女性だか!?」
顔を真っ赤にしたドルガさんから空いてる時間を聞き出し、待ち合わせ場所を決め
それをアリスのフレンドカードに送る、あとはもうなるようになるだろう
ちなみにこの後二人は交際をはじめ、3年の月日の後無事ゴールインするのだがそれはまた別の話
宿屋の二階に上がった俺は今日の戦利品を整理する
<料理人の上着>
防御力1 調理加工レベル+1
<料理人の下着>
防御力1 味付けレベル+1
<エプロン>
清潔なエプロン、洗わなくても一度アイテムストレージに戻せば汚れは消える
<ぬいぐるみのカタール>
攻撃力+1 俊敏+1
全体的にうれしいがぬいぐるみのカタールは特にうれしい
アリス様様である
料理人装備は料理の時使うとして・・・明日はいい加減浮浪者装備から新しい装備を買いに行こう
なぜ今からではなく明日からだって?
緊急メンテナンスが30分後に始まるからです