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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第3章 うたかたのゆめ
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第百二話 絆(第3シーズン終了)

「冗談じゃねぇ」


 反対側でヤムチャしてるランズロットも大体同じ感想だろう。

 ガクガクと震える足をエクスカリパーで支えて立ち上がる。

 

 いくらステータスがボロ負けしてるとはいえ、前やってたゲームのチート性能武器で全く歯が立たない、いや、俺もランズロットもそれ系統のスキルを持ってないだけともいえるが。


「これは死に戻りして、アズの位置にワープするしかねぇな・・・」


 遠い目で、やめだやめだと力無く腕を振ると、ヤムチャしていたランズロットがくわっと目を見開く。


「ならばせめて!私の最後の一撃をお見舞いしましょう!・・・貴様の貞操、貰い受ける!」


 ランズロットは後方に大きく跳躍し、昔馴染みのセリフと共にケツ・ホルゾを剛速で投げる。

 しかしケツ・ホルゾの弱点である尻にしかターゲットがいかない事はもはや悟られている、あえなく真剣白刃取りのようにヴァンプの人差し指と中指でつままれ、投げ返された槍に尻を貫かれる。


「ああアッーーー!!」


 汚い断末魔と共にランズロットがポリゴンと化して消えて行く。


「わーはっはっは!さて、残るは貴様のみとなったな!」


 周りを見てみれば、メアリーはコウモリにやられ、そのついでにフーキとルピーもやられている。


 ここでお約束の台詞の一つでも来ないかなーとヴァンプを見上げる。

 こう、世界の半分をやろう的なさ。


「一撃で葬り去ってやろう」


 ですよねー。


 諦めの境地に追い込まれる中、ボス部屋の扉の方から青い髪の少女がヴァンプに向かって突進してくるのが見える。


「あきらめない で」


 あれは・・・アズリエルさん!?なんでここに!?

 いや、それよりも・・・。

 俺は聞き覚えのある喋り方に目を見開く。

 ありえないと、心臓が早鳴る。

 だって、あの子はずっと前に。


「わーはっはっは!なんだ、貴様も我と戦いたかったのか!」


 ヴァンプが獰猛な肉食獣のような目を光らせる中。

 ヴァンプの手前まで来た少女はインベントリを開きながら叫ぶ。


「あきらめない で あーさー!」


 グッと体に力が入り、アズリエルとヴァンプの間に剣を構える。


「俺の大事な人に!手を出すなぁ!」


 高笑いを上げながら軽く俺をいなすヴァンプ、やっぱりだめか・・・!?

 ヴァンプの顔が愉悦に歪む。


「脆弱!この程度か人げ・・・」

「これ なんだ」

「さかさまの鏡だと!?いつの間に盗みおった・・・あの時か!」


 楽しそうに笑っていたヴァンプの顔が、アズリエルの言葉で一瞬にして強ばる。


 俺の位置からは見えないが、アズリエルが何かを使ったらしい。

 再び体にマイナスのステータスが付与されるのがわかる。

 いやいやここでマイナスステなんてとも思うが、ウチの策士は優秀だ。意味もなくマイナスにする訳がない。

 偽聖剣と違い、アズリエルは本当に勝利をもたらす者なのだから。


 俺が雑魚スラッシュを放つと、ヴァンプの手首が吹き飛ぶ。

 効いている!恐らくヴァンプにもマイナスがついていると予想できる。


「どうだ悪魔の王様よ、最強から最弱に落とされる気分はよぉ!」

「おのれ!おのれおのれおのれ!」


 ヴァンプの叫びと共に肘から腕にかけてが消し飛ぶ。


 今度はヴァンプが大きく飛び退くと、背中のコウモリがわらわら現れる。

 モンスターにはマイナスは付与されないんだっけか!


 俺は舌打ちをするが、アズリエルは更に爪楊枝のような物を取り出し、白い羽根を羽ばたかせながらコウモリにプスプスさしていく。

 するとコウモリはみるみる小さくなっていき、俺の剣でも倒せるぐらいの雑魚に変貌する。


「流石アズリエル!」

「あとは まかせ た」


 アズリエルが最後のコウモリを小さくさせた時点で、俺はそいつを軽くひとなぎしてヴァンプに突っ込む。


「くぅ!認めよう、いまは貴様が強い!」


 ヴァンプの背後の空間が揺らぐ。

 恐らくワープかなんかして逃げるつもりだろうがそうは行くか!

 俺は歪みごとヴァンプを切り捨て、ヴァンプの断末魔が鳴り響く。

 しかも中途半端にワープしたせいか、歪みが途中で止まり、体が更に分断されている。


「これで俺の勝ちだこんにゃろう」


 俺は動かなくなったヴァンプの欠片に不適な笑みを浮かべる。


 まさか絶対勝てないボスに勝てるとは。

 それもこれも全てアズリエルのおかげ・・・。

 そうだ!今こそ言わなくてはいけない!あの時言えなかった事を!


 俺は急いでアズリエルに振り返る。


「アズリエル!俺はお前の事が・・・」


 しかし、背後には既に誰もいなかった。

 俺は肩をすくめてヘタリ込む。

 ここにアズリエルがいる事はわかった。なら急ぐ必要はない、いずれまた会った時、今度こそ伝えるんだ。


             ※


「かくして、勇者グレイはアズリエルという女神の力で、無事魔王ヴァンプを倒したのである」

「「「「捏造乙!」」」」

「なんでだよー!!!」


 アルルヘルル攻略後、どういうわけか天空城が消えた事の、ことのあらましをグレイから聞いた俺達全員による捏造乙!によって悪魔王ヴァンプの暗躍は収束に向かった。

 戦場で最後まで生き残ってたのがグレイだけだったからといって、捏造はよくない・・・捏造だよな?


 俺は途中から記憶がないから正直わからないが、あの時聞こえた声が水の精霊アズリエルの物であったなら、あながち間違いじゃないのかもしれない。

 いや、勇者だとか魔王とかの時点で捏造だけども。


 俺は後ろでギャイギャイうるさい仲間達の声を背中に、アパートの窓から空を見上げる。


 俺の所持している精霊は水、風、土。

 それら全てに意識があるとしたら、俺はどうなってしまうのだろうか。


 それに・・・多分まだ増えるだろうしなぁ


 次は火あたりだろうか?

 今までが女男女と来てるから次は男なんだろうなぁ。


 そんなメタい事を考えながら溜息をはくが、まぁしょうがない。

 俺は今のこのゲームを楽しむ事しか知らないのだから!


ようやく第三シーズン丁度良い所まで来ました!

次は外伝のほうだ・・・外伝の・・・ほうだ・・・。

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