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夜行バス

 久しぶりに二日の連休というまとまった休みが取れるという事で、俺はいつかは行こうと思っていた東京へ遊びに行くことにした。

 休みの前日に夜行バスで東京行き、一日東京観光をし夜には同じく夜行バスに乗って帰る。

 そんな簡単な予定を立てスマホで行きと帰りの予約をし、東京へ旅立った。 


 しかし、東京の人の多さと密度に思ったより楽しめず、押し寿司の気持ちがわかった事とスカイツリーを近くで見た事しか思い出に残らなかった。

 少し早いが予約をした夜行バスに向かおうとバス駐車場に行こうとするが、建物の密度や駅の複雑さで迷いに迷い。

 なんとか目的地に到着すれば乗るはずのバスがもうすでに動き出していた。

 俺は今思えばかなり危ないが動いているバスの前に飛び出し止めたが時間通りに来なかったからと乗せてはもらえなかった。

 なんとかならないかと夜行バスの予約サイトを開くとちょうどキャンセルが出たのか席が空いていた。

 さっそく予約して送られてきたメールの指示通り料金を納め、指定された建物へ向かう。

 階段を上り、ドアを開けるとバスを待っているのだろう客がいる部屋に着いた。

 バスの運行状況だろうか大型の薄型テレビが壁にかかっている。

 まずは受付を済ませると出発の時は呼ぶのでそれまで待つように言われ、テレビに映る運行表を見るとバスの発車時間まで30分以上ある。

 しばらくかかりそうだと座ろうと思ったが待合室の休むため用意された椅子はすべて埋まっている。

 立って待っている間、壁に貼りつけられた行方不明捜索のポスターを見たり、検索サイトのトップページにあるニュースを見て時間を潰し、しばらくするとバス会社の従業員の一人が大きな声で俺が乗るバスの場所まで案内すると言っている。

 やっとかと思いながら他の行き先が同じ客と一緒に従業員に先導されぞろぞろとついていく。

 

 バスに着くと順番に名前を呼ばれ、荷物があれば荷台に入れると言われるが特に大きな荷物もない俺はそのまま一番後ろの右から二番目の予約した席に座る。

 左を向けばトイレがあり、すぐ行けるのはありがたいが臭いが来そうだ。

 他の乗客もどんどん入り空席が埋まっていく、俺の隣にいる窓側の客は乗り慣れているのか早くも寝る体勢に入っている。


 その後、バスは時間通り出発し俺のようにバスの前に飛び出して止める愚か者もおらず、バス内の電気も消え遮光カーテンもたまに外の様子を見るために開く人がいるくらいでほとんど閉まっている。

 時々、スマホの光で顔を照らす人の光とバスのフロントガラスから入る外の灯りがバス内の闇を軽減している。

 しばらくは周りを見ていたがそれに飽きて俺は眠りについた。


 意識が覚醒し、瞼を薄く開けると光が入り、眼球を刺激する。

 朝だろうかと目を開けるとバス内がよく見えるほど明るくなっていた。

 閉まっていたはずカーテンが全部開いている。

 添乗員が開けたのだろうか?

 窓を見ると外は明るく霧が濃くて外がよく見えない。

 俺はこんな中よく走れるなと運転手に感心したが、視界の隅に映った隣の客の異変に気付く、寝る体勢に入っていたので最初は顔にタオルをかけてまだ寝ているのだと思っていた。

 椅子の背から少し背筋を浮かしピンと伸ばしたまま顔を天井に向けている。

 顔はタオルとは違う白い布で顔を覆っている。

 なんだこいつはと思い周りを見渡すと普通に寝ている客も僅かにいるが、ほぼ全員が同じように白い布を顔にかけていた。

 この状況はおかしいと思い、状況を知っていそうな運転手がいる運転席へ行こうと、途中で転ばぬよう席の肩に当たる部分を掴みながら進む。

 運転席までたどり着くと運転手は左手だけで運転している。

 「お客さん運転中に車内を歩くと危ないですよ」

 そんな遅い注意が飛んでくるが構わず、車内の異常を伝える。

 運転手が顔をこちらに向けその顔と体を見て俺は固まった。

 「あぁ、お客さん乗るバス間違えたんですね。なら、早く降りた方がいいですよ。」

 俺の顔を見て顔の右半分と上半身の右半分が潰れた運転手はそう言った後、頭からピンク色の塊が零れ、運転手のズボンを汚す。

 俺が目の前の事が理解できずに固まっていると後ろのドアが突然開いて俺は吸い込まれ意識が途切れる。


 映画のフィルムをまったく違う場面と場面繋ぎ合わせたように意識が戻り目を開く、心臓が飛び出るのではないかと思えるほど激しく脈打ち、脂汗が流れる。

 先ほどの光景を思い出し、吐きそうになるがグッと堪え周囲を見渡す。

 バス内は薄暗く隣の客のいびきが車内に響いている。

 閉まるカーテンからは外の明かりが漏れ出ている。

 立ち上がりバスの前を見ると外は霧も無く前進するバスに合わせ建物が流れていく。

 夢で良かった。

 しばらく吐き気が収まるまでジッとし、落ち着き余裕が出てきた。

 スマホを見るとまだ予定到着時間までまだ時間がかかりそうだ。

 俺は何か面白いニュースでもないかと検索サイトのトップページを開き、ニュースのタイトルを下から上へ流し気になる単語を見つける。

 『バス崖から転落』

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