ペール缶に詰められたものは
その家には子供の泣き声が響いていた。
親であろう男の怒声、ヒステリックな女の叫び、近所の住人は迷惑に思うが誰も注意も児童相談所に報告もしなかった。
そんな騒々しい家がにいつしか光が灯らなくなった。
近所の住人は引っ越したのだろうと静かになった事に満足した。
住民の関心は子供の叫びより自分たちの静かな日常にあった。
それから1年くらい経った頃、ある家族が引っ越してきた。
人の良さそうな夫婦、元気で礼儀正しい子供が2人。
その家族は特に問題も無く、時々子供たちの元気な声が聞こえるだけの平凡な日常を過ごしていた。
ある時、子供の1人がやけに怯えている。
母親はどうしたのか尋ねると
「お化けがいる」と、そう言った。
その時は子供の豊かな妄想だろうと思い、適当になだめた。
それからだろうか子供が痩せ細っていくのは、日々の食事はちゃんとしている。
栄養が足りないとしてもここまで急に痩せるのはおかしい。
病院に連れて行くが医者は栄養が足りないとしかわからないと言う。
親はどうしていいかわからず、遂には布団から起き上がれなくなった。
流石に親は子を入院させると子は快方に向かった。
だがそれと同時に家にいるもう一人の子の元気が無くなり怯えている。
その子もお化けを見ると言う。
幽霊など信じていなかったがこのままにはしておけず、親類縁者にその手の事に詳しい者がいないかと一人の霊能者を紹介された。
霊能者は家に入るなり顔をしかめ、
「ここの天井裏に子供がいる。早く出して供養した方がいい」
と言い出した。
親はいきなり来て何を言い出すんだと思ったが、霊能者の言うとおりに天井裏に入る。
中に入るとペール缶があった。
なぜか蓋を太い針金で開かないようにしてあるそれを持った。
それほど重くはないそれを部屋の中に置いた。
「これは何でしょう?」
「中に子供が入っている。魂の方はまだなんとかなるからこのまま上げる。その後は警察に届けた方がいいだろう」
霊能者はそう言うが、親は信じられないという顔をするが渋々了承した。
その後、警察に事情を話しペール缶を渡したが、警察が本当に入っているか確認のためペール缶を開けた。
中に入っていたのは大量の乾燥剤と共に袋に入れられた子供の死体だった。