生首
これは俺が中学の時の話だ。
その日は部活がきつく疲れが溜まってたのか、帰ってくるなりベッドに横になると上になにもかけずにすぐに寝てしまった。
どれくらい眠ってたのか、ふいに目を覚ました。
(あぁ、風呂入んないと)
そう思いベッドから起き上がろうとするが体が動かない。
(そういえば疲れてると金縛りになるとかどっかで聞いたな)
そうやって、なんとか動けないかと指先を動かす等思いつく限り色々試すが動かず、仕方がないので金縛りが解けるまで、唯一動く目で部屋を見回す。
いつもは夜中まで何かしら音がしてる隣の兄貴の部屋から物音がしない。
(かなり時間経ってるのかな?それならこのまま寝て朝に風呂入ってもいいかもしれない)
そう思い寝ようと目を閉じた時、
『ボスッ』
腹の上に何か軽いものが落ちてくる衝撃がした。
(なんだ?)
俺は目を開け、腹の上を見ようとするが首が動かないので見れない。
その落ちてきた物は生き物なのか徐々に顔の方に向け動いてくる。
我が家にはペットはいない。
俺は怖くなり、必死で動こうとするが金縛りはまだ解けない。
(頼む!どっかいってくれ!)
そう必死に願うがソレはもうすでに胸辺りまで来ていた。
俺は怖くて目を瞑った、
ソレは左肩まで来てガッと肩を掴んだ。
俺は突然に掴まれる感触に驚いたと同時に金縛りが解けた。
動けるようになった体でそのまま目を瞑って逃げるという事も出来たが、好奇心に勝てず俺は目を開いて、首を左肩に向けた。
おそらくソレは俺が見るのを待っていたのだろう、俺は見たことを後悔した。
間近で見たソレを俺は最初、理解できずジッと見続けてしまった。
ぼさぼさの白髪が僅かに混じった髪、風雨に晒された壁のようにボロボロの肌、ぽっかりと底が見えない真っ黒な二つの穴、三日月のように開いた部分は赤い液体をボタボタと零している。
次第に頭が目がソレを理解し始める。
それが人の頭だと気付いた時、自分でもこれほど大きな声が出るのかと思うほどの悲鳴が上がった。
兄貴がいつの間にか入ってきたのか俺を揺らす。
俺はハッと意識が戻る。
目の前には心配そうな顔の兄貴と遅れて母親と父親が来た。
俺は泣きながら今見た事を話すがベッドの上にはもう何もいなかった。
怖い夢でも見たのだろうと家族に爆笑された。
ふいに兄貴が何かに気付いたのか
「うん?お前、肩に痣できてるぞ」と言ってきた。
俺は洗面所に走り、上を脱いで鏡を見る。
そこにはくっきりと手の痕が残っていた。