ずっと一緒
私が小さい頃友達といえるものがいませんでした。
ただそんな私にも一人だけ、A子という親友がいました。
いつ出会ったのかは覚えておらず、おそらく物心ついた頃にはすでに一緒にいたのでしょう。
そのA子は絵本やテレビで見たような女の子が憧れるお姫様のような子で、私が一人でいる私の傍に必ずいました。
遊ぶときも何をするにも一緒で家にもいました。
私は一人っ子のはずなのですが、当時の私は疑問にも思わず日々をA子と一緒に楽しく過ごしました。
「ずっと一緒にいようね!」
「うん!」
今ではA子とのあの約束も覚えています。
私は中学生になりA子以外にも友達ができ、その友達とお洒落や好きな男子の話等それなりに充実した毎日を送っていました。
その時にはA子はおらず私もA子という人間がいる事も忘れていました。
ある日の事、私は嫌な勉強の逃避で押入れの整理をしていました。
小さい頃のおもちゃ箱を見つけ中に入ってる物を見て、思い出に浸りながら過去の思い出達をどんどんゴミ袋に入れている時、下手糞な絵を見つけました。
すぐに捨てようとゴミ袋に入れようと袋の入り口に持って行った時
(どんな事描いてあったんだろう)
と自分が過去に何を思って描いたのか興味を覚え絵を見ました。
その絵には女の子が2人描かれていました。
(一人はたぶん私だ。じゃぁ、もう一人は?)
私がもう一人が描かれた部分を見て数分、私はA子という親友がいたことを思い出しました。
(あぁ!これA子だ!あれ?でも何で忘れてたのかな?)
私はしばらくA子がいついなくなったか思い出そうとしますが思い出せず、もやもやした気持ちを抱え私はなにか思い出すきっかけになるものがあるかもしれないと押入れの整理を再開しました。
部屋が暗くなり始め、部屋の電気を点ける頃、押入れの奥にまるで隠すようにあった金属製の缶を見つけた。
元は菓子類が入っていたのだろうその缶には乱雑にガムテープや紐で開けられないようにしてあった。
私は何が入っているのだろうという好奇心とA子についてのヒントがあるかもしれないという思いで、缶を机に置きカッターでその厳重な封を切り、蓋を少し開いた時、私は思い出しました。
あの時は雨が振っていた日、外で遊べない私達は家でできる遊びは無いかと相談した結果、かくれんぼをしていました。
じゃんけんをして、私が負けて鬼役になり、A子は隠れていました。
家の中だからすぐに見つけられると思っていたがなかなかA子が見つけられず、私は最初に探した自分の部屋に戻り、探していました。
その時、部屋の隅にあった缶から声からA子のかすかな笑い声が聞こえ、私はその缶を開けました。
そこにはいくら幼いとはいえ人間が入れないはずの大きさの缶に無理やり体と手足を入れ、顔だけこちらに向けるA子を見つけたのでした。
私はあまりの怖さに缶を閉め、開かないようにし押入れの奥に入れたのです。
それを思い出した時、手に持った床に蓋を落としてしまいました。
視線を遮るものは無くなり、缶の中を見えます。
そこには何もない空箱で、私はホッと安堵しました。
(そうだよね。こんなのに人が入るわけないよね)
私はきっとA子は子供が作るという架空の友人だったのだと思い、押入れの片付けをしようと後ろを振り向いた。
そこには人が立っていた。
背は私と同じぐらいの女の子、服は子供が着てるような何かのキャラクターが描かれている。
その服には覚えがある、あの時A子が着ていた服だ。
女の子がゆっくりと顔を上げる。
その顔は同性から見ても綺麗と思えるほど整っていた。
女の子は無邪気に笑うと言った。
「つぎはわたしのばんね」
その後のことは覚えていない、急に目の前が暗くなり、それからずっと暗闇の中にいる。
ただ外の音は聞こえる。
車の音、多数の賑やかな声、聞き慣れた母や父の声、そして最初はあの声が怖かった。
でも、あの声だけが私に話しかけ孤独じゃないと思わせる。
私とそっくりな声が毎日の挨拶のように今日もあの台詞を言った。
「ずっと一緒にいるからね」