決意
布団に入ってからがまた大変だった
なるべく反対を見ないようにお互いにベッドの両端で
横になったのだが
もし後ろを振り向けばアリスが...
Tシャツに下着だけというあられもない格好で...
背中ごし、布団づたいに感じる微かな温もり
僅かに動く際に香る情動を掻き立てるような
アリスの魅惑的な香り
15歳の体をもつおれ...
(落ち着け落ち着け、落ち着けおれっ)
(よく考えろっ)
(おれは30年すでに別な世界を生き、
15歳の体で転生したが、良い大人なのだ)
(そうだあれだ、
見た目は子供、頭脳は大人っ、な状態なのだ)
(相手は16歳だぞっ)
(16歳か...)
そう、16歳なのだ
前の世界では30歳と16歳が関係を持てば
犯罪となるだろう年齢
(はぁ、そう考えると転生にもデメリットがあるのかな
体と同年代くらいの人に対して思いを寄せるのには罪悪感を
感じてしまう)
改めて思う
(おれ30歳なんだよな...
30歳と16歳か...)
ドキドキしていた気持ちも落ち着き
逆に少し悲しくなった
(転生以後、夢中でやってきたから感じなかったが、
肉体年齢と精神年齢のギャップは
思ったより大きな障害と成りうるかもしれない)
(辛いかも...)
(...)
(なんでこんなことで悩んでるんだろう...)
(小説なんかで読む異世界は
もっと自由だと思ってたのになあ...)
(自由か...)
(ん?
本当に自由じゃないのか?)
(自由じゃないと決めつけてる
やりたいことがあればやってみれば良いんじゃないか)
勝手に前の世界の常識を当てはめて
自分を鎖で縛っているような気がした
前の世界では人の目とか世間体ばかり気にして生きてきた
(もっと自分のやりたいことやっても良いのかな?)
(やりたいことがやれるようなヒト)
やりたいってそういう意味じゃないぞ
(そんなヒトになれるよう異世界では頑張ってみようかな)
(「エゴだよそれはっ!」)
人類に新たな心の変革をもたらした偉大な方の言葉だ
(危うく自分のエゴという名の重力に魂を縛られる所だったぜ)
(せっかく女神が楽しめるように送ってくれた異世界
そうここは異世界なのだ
楽しまなくてどうする)
(ヒトに迷惑をかけたくないのは変わらないが
周りを気にしすぎずに自分を信じて頑張ろう)
心のつかえが取れた気がした
(これも偉い人のセリフだけど、
いま言いたいから、いま言おう!)
(いつやるの!?)
「今でしょっ!?」
自然と口から言葉が紡がれていた..
(おれの異世界生活、いま、始まったな...)
その余韻にひとり酔いしれていると
アリスが口を開き始める
「いま...よね、そうよね」
「ナユタは、対等な立場を望んでいると思ったから、
その、そういうのは今じゃないと勝手に思っていたの」
「ナユタに甘えてしまったのかもしれないわ」
「わたしは奴隷なんだもの
ナユタが今と言うのなら今からでも、その、
応じるから...それこそいつでも」
そう言いながらアリスが動き
おれの背中に先ほどまでとは違う
たしかなアリスの温もりを感じる
(ち、ちが
アアア、アリーーースッ!?)
急いで振り返りアリスの肩をつかみ抑える
アリスは更に勘違いをし目を閉じる
(こ、この美しさはマズイっ)
「ちちち、違うんだアリスッ!?」
「あれは、その、偉い人が言っていた言葉でっ
自分に向けて言った言葉でっ」
「これからの人生を頑張ろうっとか、そういう意味の
気合いの表れだよっ」
(バカなっ、なぜこうなる!?)
心拍数はみるみる上昇し
(おれの下半身もいつもの3倍のスピードで...
いやいやそんなこと考えている場合か!?)
「え、あの...その、てっきり...」
アリスは戸惑いと恥じらいで顔を赤く染める
(余計に可愛いっ!?)
「おおお、落ち着こう」
それからしばらく沈黙しあう
(とにかくこういうのは
お互いの気持ちがあって初めてする事だ
奴隷だからとそういう行為をするのは本意ではない)
(...はずだ)
「アリス、勘違いをさせてごめん
おれは無理やりそういうことをさせるつもりは
無いから安心してくれ」
「あと多分アリスが思った通りの
対等な立場を望んでいるから
それを分かってくれてありがとう」
「いえ、ええと..
私こそ勘違いをしてしまったわ」
「その、これからは私も一緒に頑張るからね」
(アリーーースッ)
(可愛いすぎるっ、アリーーースッ!!)
「あ、ありがとう」
そのままお互いの位置に戻り
目をつむるふたり
自分の味方をしてくれる人ができ
心がポカポカと温かくなり
気持ちよく眠りにつくのであった




