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学校の七不思議 ~隠された八つ目~

作者: 流美

皆さんは、学校の七不思議を知っていますか?

トイレの花子さんだとか、誰もいないのにピアノの音が聞こえてくるだとか。


多分、誰もが一度は聞いたことあると思います。

ほら、トイレの花子さんは特に有名でしょう?


そんな七不思議に、隠されたもうひとつの怪談があるって、知っていますか?


いえ、七不思議を全て実証したら起こる八つ目のことではありません。



今からお話するのは、私の友達がくれた手紙に書いてあった、隠された怪談……八つ目の不思議のお話。


 私の学校には、各教室にひとつはテレビがある。それは、授業でDVDを見るため、というのが理由。だから、授業以外でテレビを使うことなんて、めったにないことだった。



 少し話が変わるけど、

 ある日私のもとに、こんな噂が流れてきた。


深夜に黒板に落書きしている生徒がいるらしい。



深夜ということは、学校に忍びこんでいるのだろう。一体誰なんだ、という話題になったが、誰なのか分かる前に、忍びこもうと思えば忍びこめることが分かった。


 どうやら、中庭から使われていない教室に繋がる窓が、鍵のかからないそうだ。不用心なことに、壊れた鍵は何年も放置されていて、先生達は誰も気にしていないらしい。


 学校なのに、それで良いのか、と思うものの、一度くらいは深夜の学校に忍びこんでみたかった。私の好奇心は、その日のうちに行動へ移すことになった。


 別に私が進んで行動に移したわけではない。噂を聞いた友達の1人が、私と同じ思考をしていただけだ。


 小さな恐怖と大きなわくわくで、少しそわそわしながらも全ての授業を終え、持ち物と集合時間を友達と確認してから帰宅した。


「何か良いことでもあった?」

私のお母さんが夜ご飯のときに、そう聞いてきた。多分、聞かれるほど顔にでてたのかもしれない。嬉しそうね、とも言われた。


「何でもないよ」

って答えてその場はやり過ごしたけど、お母さんにバレるんじゃないかっていう恐怖が、思い出したかのように襲ってきた。


 でも好奇心には勝てない。約束もしてるから、その日学校に行くことは変えなかった。



 夜11時。仕事で疲れているお母さんは、もう寝てた。懐中電灯と腕時計だけ用意して、静かに玄関の扉を開ける。


 お母さんが寝たフリだったら、どうしよう。バレたらなんて言い訳しよう。


 なんて、どうしても考えてしまうお母さんに対する怯えが、私の足を遅くした。でも待ち合わせの11時半に間に合わなかったら嫌だから、考えを振り切るように走った。


 夜道は怖い。誰かと歩くなら楽しいのだけど、独りだと辺りの静けさや暗さが身に染みる。実は幽霊とかに耐性がないから、幽霊がでてくるんじゃないかってビクビクしてた。あと警察にも。



 なんとか学校に辿り着いた私は、時計を見る。確か11時20分で、予定よりもだいぶ早く着いてしまっていた。

一応裏門から入ることになったんだけど、勿論空いてるはずもなかったから、なるべく静かに乗り越えた。


 集合場所は中庭から入る、空いた教室だった。門のところじゃないのは、外だと誰かに見られそうだから、という理由。


 流石に先生はいないだろうけど、念のため警戒しながら中庭へ向かう。草を踏んだときの音でさえ、いるかもしれない先生に見つかるのが怖くて、とにかく必死で静かに歩いた。


 空き教室の窓を開けようと手をかけたら、後ろから草を踏んだ音が聞こえた。体跳ねあがらせて、恐る恐る振り向いたら、友達がいた。ついさっき来たみたいで、ナイスタイミングだったの覚えてる。


 お互い、周りを気にしながら、ゆっくりと窓を開けて中に入る。空き教室は少し埃っぽくて、使われてない壊れた机とかが置いてあった。


 それらを横目に、私達は空き教室を出る。ドアだと、鍵を開けるときに大きな音がしちゃうから、わざわざ教室の窓を開けて廊下に出た。


 電気なんてついてるはずなくて、廊下は真っ暗。唯一言えば、窓からさしこむ月の光くらい。持ってきた懐中電灯をつけて、自分達の教室に向かう。


 やっぱり、ちょっと怖いね。緊張するね。

なんて会話を小声でしながら、目的地に着いた。綺麗でも汚くもない、自分達の教室。


 基本的に、教室の前のドアは鍵がかかっていない。こんなところも不用心。でもおかげで教室に入れるのだから、今は感謝だ。


 入ってまず見たのは、黒板。落書きされてる、という噂を聞いて来たのだから、黒板を見なければ始まらない。しかし期待に反して、黒板には何も書かれていなかった。


 何もないじゃないか。ほっとする気持ちと、残念な気持ちが混ざり合って、何かつまらなく感じた。

だから「私達が黒板に落書きしちゃおうよ」という提案をしてしまって、友達も提案に賛成してしまった。


 何描く? あれ描こうよ。


 チョークを手に取り、好き勝手に黒板に描いた。好きなキャラの絵を描いたり、わざわざ黒板に文字を書いて会話したりもした。


 まだ残っているスリル感が私達を更に楽しませて、何も起こらないまま、時間はすぐに過ぎていった。


 ふと、音が聞こえた。大人には聞こえないと言われる、高くて細い機械音。絵を描く手を止めて、私達は同時にテレビを見た。


 テレビには黒板が映っていた。教室なんてどこも一緒だから、どの教室の黒板かは分からない。薄暗い教室に、ぼんやりと明るいテレビが、やけに不気味に見えた。


 おそらく、お互い何か思ってはいたのだろうけど、言葉を交わすことなくテレビに夢中になっていた。

 だってこんなの、噂では聞いてない。

確かに怖い。夜中にテレビがつくなんて。でも、逃げることはできなかった。なんだか、ドキドキした。


 画面下から、1人の少女が黒板のほうへ歩く。セミロングの髪が滑らかに揺れている。その少女は、私達の学校の制服を着ていた。


 チョークを手にとった少女が、画面に背を向けて黒板に手を伸ばす。黒板に文字を書く、カツンとした音が響いた。


 私達はすかさず黒板の方を見た。その音は耳元から……私達が今さっきまで落書きをしていた、黒板から響いていた。


 消してない落書きを無視して、黒板にずらりと書かれていくのは、漢字や数式。チョークも少女も、実際には見えていない。なのに次々と増えていく文字。


 2人して完全に固まってしまって、震える体で文字を見つめるしかできなかった。


 やばい。逃げたほうが良い。


脳内では何度もそう言っているけれど、体は言うことを聞かない。ただ震え続けた。


 黒板の端から端まで漢字や数式で埋め尽くされたところで、不意に文字は消えていった。

 テレビに視線を移すと、黒板消しで右から消している少女。私達の見ている文字も、右から消えている。


 テレビの少女の行動が、現実になっていた。信じられないと思う。私達も、信じられなかった。


 私達の落書きは残されたまま、少女が書いた文だけが消された。全て消されたときテレビに視線を移したが、何もなかったかのように画面は消えていた。


 未だ震えている友達に声をかけ、急いで帰ろうと話す。そしてもう一度黒板に目を移した時。私は出そうになった悲鳴を飲み込んだ。



『どうして?』

『大嫌い』

『お勉強しなきゃ』

『見て満点』

『帰りたくない』



『死んじゃった』



 数式などは消されて、私達の落書きしかなかったはずの黒板に、一瞬で書かれた言葉の数々。赤いチョークで乱暴に、同じ言葉が繰り返されている。


 ちゃんと見れば哀しく見えたかもしれない。でも私は、中心に大きく、チョークとは違う赤で書かれた『死んじゃった』に恐怖しか感じなかった。



 申し訳ないけど、そこから記憶は曖昧。落書きをそのままにして、震えながら無我夢中で走って帰った気がする。


 よほど怖かったのか、翌日、友達は学校を休んだけれど、数日したらいつも通り学校に来た。私は学校休まずに行ったが、黒板やテレビを見るのが少し怖かった。


 怪談が好きな友達と話したんだけど、多分、学校の七不思議の一つじゃないかって。七不思議の秘密の8個目かなって言っていた。



 長々と読んでくれてありがとう。私の学校は鍵が壊れてたり、空いていたり不用心で、つい夜中に学校に忍びこんでしまったけど、危険だからやらないでね。


 私達は安全に帰れたけれど、もし体験してしまったら、絶対に安全に帰れるという保証はないんだから。

ーー以上が、私の友達からの手紙の内容です。少し省略などした部分はありますが、ほとんどは そのままになっています。


 学校の七不思議……隠された八つ目。どんなものなのか、危ないものなのか、どの学校でも存在するものなのか。詳しくは分かっていません。


 何か似たような話を聞いたり、情報を手に入れたら、私に教えて下さい。



では、これで終わりにします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 心情表現が良く出来ていたと思います。あとその場その場の登場人物の感情を良く汲めていたなーと思いました。 [気になる点] 幽霊?少女が出てくるところが山場だと思うんですけど、盛り上げが不十分…
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