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02.死霊と死者と死体と空

僕はありとあらゆる魔法を覚えている。


魔王になった特典として付いてきた魔法もあるのだけれど、それだけでは物足りなかったのだ。


「マオウサマ ココヲ サルノカ?」


肌が紫色のゴブリンが僕に語りかける。

本来ゴブリンという生き物は緑色なのだが、こいつはゴブリンの死体から作られたアンデットだ。


「ああ、用意は出来てるか?」


「ハイ 120年前カラ デキテイル」


このゴブリンの首は常に水平方向に若干の傾きがある。ただでさえ不細工なゴブリンなのだが、若干の傾きが醜さを何千倍にも強調させる。


実の所これは比較的初期に作られたゴブリンアンデットだ。最新型には何もかもで劣るが愛着があるので側に置いている。


まあ知能だけは少し高めに後付けしたのだが。


「では行くぞ。フランケンついて来い。」


フランケンというのはこのゴブリンアンデットの名前だ。由来はフランケンシュタインからだ。


フランケンは右足を引きずりながら僕の後方に付いてきた。


部屋を出ると薄暗い廊下に出る。


ポキ、ポキと足音が所々から聞こえる。

僕のお手製のスケルトンがそこらへんをうろちょろしている。


魔王城に挑みに来るバカは思っているよりも多い。


国家や冒険者ギルドは臭い物には蓋をせよと魔王の存在をタブー視し、魔王城周辺の地域を立ち入り禁止区域に指定した。


それでも勇敢さと愚かさを履き違えた無謀な間抜けが四年に一度ペースでやってくるのだ。


スケルトンやアンデットが彼らを普段は排除しているが、今回はそうもいかないかもしれない。


僕は普段から人間を水晶の力によって監視している。


しかし、今回は勇者。


それ程強いとも思えないが、対魔王特化とかしてそうな気がする。多分。


完全な憶測だが、前世の記憶からして勇者は何時も魔王を倒している。勿論ゲームやラノベの話だ。


僕もアンデットちゃん達を送り込んで様子見しようかとも思ったが、それは完全に宣戦布告となる。


僕はまだ勇者に喧嘩を売った訳でもない、勝手にあっちが怒っているだけなのだ。


罪なき者を倒す勇者がいるだろうか?いいやいない。

いたとしても、その時ばかりは勇者の力とか主人公補正とかそういったことは起こらないだろう。


ただのジンクスというか何て言うか、引っ越す理由が欲しかっただけなのかもしれない。


僕はそんな事を思いながら階段を降りる。


「魔王に従いし全ての者に通達せよ、至急だ。」


「ハイ」


フランケンは気味悪く首を捻る。


「引越しの準備をさせろ。訓練通りだ。」


もしもの時の避難訓練は万全である。

僕も死ぬリスクはなるべく減らしたい。


「根源せよ人形」


床に使われている石を媒体としてゴーレムを召喚する。

石のゴーレムが五体現れたので、


「荷物を船に詰め込め」


と指示をした。


ゆったりと大きな足音を立てながら去った。


僕は再び歩みを進め、階段を降りる。

降りた先にあるのは吹き抜けになった大広間、巨大な飛行船が空を飛ぶ準備をしている。


これはこの世界に来る前の記憶を元に手探りで作り出した最高傑作。


「全テ ノ 準備ヲ 完了シマシタ。」


僕の背後から完了の合図が出た。


魔力を動力源としたこの飛行船を浮かばずには僕の魔力が必要がある。魔力を蓄える石があるらしいが、貴重なものであり城から出ない僕には到底手に入れられそうもなかった。


「全ての者を飛行船に乗せろ」


「了解シタ」


大量のアンデットやスケルトンがやってきた。しかし、彼らもせいぜい百体ほどしかいない。何せ死体を媒体として作成できるのだが、その素材が圧倒的に足りていないのだ。


「魔王らしいことしようかな…」


カアカア_____


カラスの鳴き声がするが、こいつはカラスのゾンビである。

カラスゾンビの視界にアクセスし、周囲に障害物が無いか確認する。


水晶での覗きを防止するアイテムがある以上、最後は目視だ。


「全員ノリオエマシタ」


「では行こうか」


飛行船に乗り込み、先頭部分へとつながる通路を歩く。


船内にいるだけで魔力は自動的に吸収され、この船の動力源となる。

僕はレバーを下げる。


「後は頼んだぞ」


操縦はフランケンに任せる。


飛行船はだんだんと浮かび上がり、無理矢理くり抜かれた大広間の吹き抜けが一見できる。


この廃城も少しずつ少しずつ小さくなって行き、僕たちは空へと旅立った。





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