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復讐と彼女

作者: 神名代洸

20年間彼女ができなくて諦めていた僕に彼女が出来た。彼女はおとなしい女性で、とても可愛らしかった。

僕は有頂天になった。

そりゃそうだ。

初めての彼女なのだから…。

彼女はきっともてたに違い無い。なのになぜ僕なんかを選んでくれたのか…。

僕は一目惚れだった。


彼女はいつも僕の後ろを歩いていた。まるで遠慮でもしているかのように。

なかなか腕を組ませてはくれなかった。

「恥かしい。」そう言われたら出来なくなってしまった。デートはいつも駅で待ち合わせ、ウインドウショッピングなどをすることが多かった。

彼女は物を欲しがらなかった。

こんなものかと思ってしまったほど。

プリクラは一緒に撮った。

携帯に貼ってある。

彼女はどうかはわからないが。


時々遠くを見つめている。



今日も別れの時間が来た。

彼女の家では門限というのがあるらしい。なので夜7時に別れた。


その夜久しぶりに学生時代の友人から電話があった。


「同窓会やろうぜ。」


「いいけどあいつに連絡するのか?」

「まっさか、しねーよ。あいつ抜きでいいんじゃね?」「そうだよな。あいつが来たらつまんねーしな。」

あいつとは学生時代にいじめていた相手のことだ。暗くてブスで太ってた女の子の事。

名前はなんだったかなぁ〜、覚えていないということは大した相手ではなかったということだろう。


日にちも決まり、僕は久しぶりに会える仲間を思った。どんなに変わってるのか見てみたい。10年、たったのだから結婚してる奴もいるのかもしれない。僕には初めての恋人ができたのだが。

彼女も同い年なのでどこかであったことがあるのかもしれないが、まさか同窓会で会うことはないだろう。その日は都合が悪いとデートを断ったのだから。


当日、10時からとなっていたので少し早めに会場へ向かった。居酒屋かと思ったがホテルをとったらしい。パーティ会場に案内された。

「よう、久しぶり。」

「誰だ?あっ、お前か。久しぶりだな。ちっとも連絡しねーからわかんなかったわ。」

「そっかぁ〜、俺はすぐわかったぞ。お前だってな。」

「そっかぁ?で、お前今なにしてる?」

「じつわよー、婚約したんだ。相手の女が出来ちまってさ。」

「えー、それで人生終わりにしちまうのかよ。」「そうでもないぜ。そいつのこと好きだし。ちょうどよかったんだよ。」「そっかぁ〜、オメデトさん。」「ああ、ありがとな。それよかお前はどうなんだよ。」

「じつはよ、俺にも念願の彼女ができたんだ。」

「そいつはめでたい。でどんな子だ?」

「滅茶滅茶可愛い。今日なんか二人できたら注目の的になっちまうかもな。」


その時ざわざわとした声が遠くから聞こえた。誰か来たようだ。

その時きたのは僕の彼女だった。会場も知らせてないのにどうして?と思ったが黙っていた。すると「良く来られたわね〜、ブス子が。整形でもしたのかしら?クスクス。」

女子の一人がそう言った。

今のは本当か?

だとしたら僕は…。

ムカムカしてきた。

彼女に騙されたのかと思い、知らん振りを決め込んだ。

彼女は誰かから聞いてきたらしい。

小さな声で「ごめんなさい。」それだけ言って帰っていった。会場の場はシーンとしてしまったが、徐々に賑やかさを取り戻していった。

僕はまだなんとも言えない思いでいた。あの彼女がいじめていたブス子だったなんて…変われば変わるものだ。

二度と連絡を取らないために携帯のアドレスから彼女の番号を消した。

プリクラもはがして捨てた。


それっきり会うこともなくなった。なんせ番号を消した為わからなくなったからだ。大して気にもしていなかった。

彼女からかかってくることはほとんどなかったし、自然消滅かと思った矢先に電話が。見覚えがあったのでつい出てしまったが、彼女だとわかるとムカムカがこみ上げてきた。


「どうして連絡してくれないの?」

「どうしてだって?ブス子が僕に言う?なんで同窓会にきた。まぁ、お陰でお前のことがわかったけどな。」

「そんな…。私の事もう嫌いになっちゃった?」「ったり前だろ?お前のことなんか誰が言えるか!恥だろ恥。二度と電話もかけてくるな!」そう言って一方的に電話を切った。


それから数日は何事もなく過ぎていき、彼女のことも忘れかけていた。そんな時旧友から電話が。


ブス子が自殺したと。


なかなか連絡が取れないと実家の両親がやって来て首を吊った彼女の姿を見たとの事。死亡時は僕との電話の後だった。

携帯のアドレスから僕のことが分かり刑事が来たが、僕はあえて何も言わなかった。

昔の同級生というのはわかっているだろうからそれだけは伝えた。

動機についてもわからないとだけ答えた。


両親は誰かと付き合ってることは聞いていたが誰とまでは教えてもらえずわからないと答えたそう。自殺なので帳場は立たず自殺で処理された。


それから数日後、僕の周りで不可解なことが起き始めた。

誰もいないはずの押入れが勝手に開いていたり、物が少し動かされているような跡がある。

新しくできた彼女とのデートの時にも誰かの視線を感じた。気のせいと思い無視していたが、彼女も誰かの視線を感じると言い始めて怖がってデートにもならなくなってしまった。仕方がないのでデートもソコソコに切り上げて帰る事に。

彼女と最寄駅で別れ、ひとりとぼとぼと歩いていたが、誰かが付いてくるような足音が聞こえてくる。たまたま偶然かもと思い気にもしなかったのがいつまでたってもついてくるその足音に次第に不気味さを感じるように…。何度もなんども振り返るが人影一つ見当たらない。

幽霊?まさか、ね。

僕は一瞬だが亡くなった彼女の事を考えてしまった。彼女のことは実はずっと好きだった。でも、学生時代の事が頭をよぎり自らつながりを切ってしまった。後悔しかない。

朝になるとまたものが動いていた。

よくよく見てみると亡くなった彼女がしていたことと似ている。まさか…そう思ったが間違いないだろう。じゃあ、何をしたいのだろう…。ものが移動されるくらいはなんともない。でも、ハサミが床に突き立てられた時にはさすがにぞくっとした。

亡くなった彼女が怒っているのかも知れない。そしてその日の夜、カーテン越しに人影が見えた時には真っ青になってしまった。

彼女の人影と似ていたからだ。

慌ててその場から逃げ、部屋に戻ると胸がドキドキして止まらない。

すると今度は突然テレビ画面がついたり消えたりした。音量もデタラメで僕は両耳を塞いだ。ふっと目の前に何かが飛んできた。

飛んで行った方を見ると包丁だった。

恐怖した。

「ごめん、君のことは嫌いじゃなかったんだ。でも昔の事を掘り返されるのが嫌だったんだ。ほんっとにゴメン。」僕は必死に誤った。

ガタガタと突然棚が動き出し食器が揺れる。

僕はその間も必死に謝り続けた。


すると突然静かになった。

さっきまでの事が嘘のようだ。

僕は祈っていたので目を瞑っていた。

だから目の前に何があるのかわからなかった。

両目を開けた時僕の目に飛び込んできたのは元カノの悲惨な顔だった。

白目を剥き口から舌を出して血を流していた。

「ギャー!」

僕は驚いて叫んでしまった。


しかしそれ以降元カノは姿を現さなかった。

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