第十夜 LOKの歩きかた
現在時刻は十六時半です。
ヨミちゃん家にお邪魔したわたしはLOKの世界に意識を移し、シンパシー大平原西側で第3メインクエスト『恐怖、群れたスライムを退治せよ』のボス——デッカドスライムを倒し、喜んでいたところだったのです。
何気に一時間前から魔物退治に励んだおかげで、随分と戦闘慣れしたんです。
「やったーっ!」
「やったねいのりん、これでランク4じゃーん! ついでにあたしも5まで上がったしー」
「うんっ、でもベトベトで気持ち悪い……」
何せこのスライム系の敵は、体当たりされる度にネバネバした液が体にまとわりつくのだから、堪ったものではありません。
「まあしゃーないね。町に戻ったら落ちるし、それまでの辛抱だよ?」
「うん、我慢する……。でも、たったの1時間でこんなにも上がるものなんだね」
「確かにソロの時に比べれば遥かに早いんだけど、まーだ効率上げられるかなー」
「そうなんだ。1500も断罪度が増えたのになぁ……」
とりあえず、この世界の過ごし方が分かってきました。
「まあまあ、とりあえずこのままいのりんのランクが5に上がれば、地下洞穴に入れるフラグが立つしっ!」
「ヨミちゃん、フラグってなあに?」
「うん、フラグってのはイベントのフラグでね……。んー、まあ簡単に言うと物事を起こす引き金みたいなものかなー」
「なるほど、ヨミちゃんはなんでも知っててすごいなあ」
ESDでメモしとかなくちゃ。
「あっはっはー。因みに地下洞穴に行く事ができれば、貰えるEXPも今より増えるんだってさー」
「至れり尽くせりだねっ」
「ホントにねー。その代わり魔物も強くなるけどね」
「あう、それはちょっと勘弁かも……」
「まあ、あくまでも訓練の一環だからね。強くなるのは仕方ないっしょ」
そうでした。楽して強くなれるなら誰も苦労はしませんよね。
「うん、ヨミちゃんの言う通りだよ。わたしももっと頑張るね!」
「そそ、その調子だよー。じゃあ、そろそろ狩りの続きを再開しよっか」
「うん!」
魔物退治を続けてから一時間経過すると、わたしのランクが5に上がりましたので、ヨミちゃんとシンパシータウン広場へ戻り、メインイベントの為の準備を行いました。
「さってと、とりあえず一旦ステータス確認しとく?」
「うん、改めて強さを確認したいな」
「おし、じゃあ確認しよーっ」
「うんっ」
早速わたしはESDを操作して、ステータス画面を開きます。
>鬼頭イノリステータス
>RANK5 EXP881 TEXP3581
>HP1541 MP435
>STR107 AGI38 DEX43
>INT33 MND54 LUK4
>取得スキル
>STRUPLV2 MNDUPLV2
>スマッシュLV1
前記の様にわたしのステータスが表示されましたが、相変わらず運の低いこと。
いつ見てもへこんでしまいます。
あっ、スマッシュはLOK内でのみ強い一撃を出せる物理スキルなんです。
>卯ノ花ヨミステータス
>RANK6 EXP1210 TEXP5710
>HP1122 MP672
>STR33 AGI73 DEX80
>INT65 MND64 LUK56
>取得スキル
>AGIUPLV2 DEXUPLV2
>稲妻落としLV2
前記が見せて貰ったヨミちゃんのステータスですが、平均的に高くて羨ましい限りです。
なんだかこれ、不公平じゃありませんか?
物理スキルの稲妻落としも、こっそりとLV2になってますし。
「うう、相変わらずLUKが低いままだ……」
「まあそう落ち込みなさんなってー。その代わりSTRなんて既に100超えてるんだしさー」
「確かに腕力はあるけど……この運の無さはあんまりだよっ」
腕力の半分を運に振るシステムをください。
「まあまあ。とにかくメインクエストを進めるから、あたしの後ろをついてきてー」
「うん!」
えへへっ、次のお話が楽しみで仕方ありません。
数分後、わたしとヨミちゃんは第五夜で助けたミントさんのおばあちゃん家に訪れました。
「あらあら、昨日のお客様ねえ」
「はい、先日は大変お世話になりました」
「どーも、おばあちゃん」
「ゆっくりしてってねえ。ところで、うちの孫娘を見ませんでしたか。お隣さんへ花束のお届け物を頼んだのだけど、かれこれ30分は帰って来てないのですが」
おばあちゃんがお隣さんへ確認しに行けば良いのではと思いましたが、もしかしたら足を怪我しているかもしれませんし積極的に手助けしなくちゃ。
「あの、わたし達は見てませんが……確認しますよ?」
「あたしも見に行くよ、おばあちゃん」
「おやおや、それはありがたいことねえ。それでは、お願いしようかしらあ」
「はいっ、行ってきますね」
「オッケーっ」
わたしはおばあちゃんに頭を下げてから、ヨミちゃんと一緒にお隣さん家へ向かいました。
「あの、ごめんなさい」
たぶん三十代前半の主婦っぽい方に、わたしは声を掛けました。
「あら、あなた達はミントちゃんのお友達?」
「はーい、その通りでーす。ミントがこちらに来てるっておばあちゃんから聞いたんですけどー」
「あら、ミントちゃんなら少し前にうちを出たばかりなのだけど」
「あう、そうだったんですね」
「えっと、ミントが他に行きそうな場所って分かります?」
困っているわたしとは違いヨミちゃんは至って冷静で、とっても頼りになります。
「そうねぇ……あっ、そうだわ。もしかしたら北側路地裏を抜けた先の変わった一軒家に住むロゼッタさんの所に行ってるかもしれないわね」
「あの、ロゼッタさんってどんな方でしょうか?」
「ロゼッタさんはいい方だけど少し変わったお人よ。たしか錬金術の研究をしているとミントちゃんから聞いたわ」
「れ、錬金術?」
「よく知られてるのは石ころから純金を作り出したりする術だよ、いのりん」
へえー、すごいです。
「なるほど……」
「それではお邪魔しましたー。さあ行くよ、いのりーん」
「お、お邪魔しましたっ」
わたしの手をヨミちゃんが引っ張ってシンパシータウン北側路地裏へ着き、そこを駆けました。
それから実時間で三分程度でしょうか。
現実世界にありそうな二階建て鉄筋コンクリートの建造物前に辿り着き、呆然とそれを眺めてしまいます。
「えっ、ヨミちゃんこの建物って……」
「うん、なんか古ぼけたアパートっぽいよね、どう見ても」
「やっぱりそうだよね。この街は煉瓦造りの家ばかりで雰囲気が良かったのに、これ見てちょっとガッカリかも……」
そんな時です。
建造物のドアがパタリと開き、とっても小さくて可愛い魔女みたいな女の子が出て来ました。
「なんじゃ、また物好きがわしの家を見に来たのか?」
女の子は羽織っている赤いマントを煩わしそうにバサリと捲ります。
「あわわ、なにか幼い子が出てきたよヨミちゃん――痛いっ!」
指差したのが不味かったのでしょうね。
女の子から杖で頭を叩かれたのですから。
「こりゃお前さん、人に向かって指をさすでない。失礼だぞ」
「ご、ごめんなさいっ」
大正解でしたが、嬉しくありません。
「それと幼いとは何事だ。わしはこう見えても八十を超えるオババなのだぞ」
「えっ、はちじゅ……ええっ!?」
どうみても十歳程度の女の子じゃないですか!
「ふふん、まあそうだよねー」
ヨミちゃんは一切、動揺してませんね。
「なんでヨミちゃんは驚かないの?」
「うん、なんとなく分かってたし」
「どうして分かるの……」
「だってこんな離れた家に女の子一人だもん。それに錬金術師って聞いてるし」
「なるほど……って、錬金術師とこの女の子にどんな関係が――きゃあああっ!」
背後からいきなり女の子が、わたしの軽装鎧の胸部隙間に両手を突っ込んで胸を鷲掴みして来ましたから、金切り声を上げてしまったのです。
「さっきから無礼な女子めっ。しかも若い癖にこんな大きいものぶら下げおってからに……。錬金術で若返ろうとも胸までは大きくならんのだぞ!」
「わお、大胆なおばあちゃんだなー」
ヨミちゃんのイジワル!
「もおっ——面白がってないで助けてよおっ!」
「んー、とは言われてもねー。じゃあこうしてあげよう」
「おわっ、なにをする!」
ヨミちゃんは変な子を引き剥がしてくれましたが、何故か肩車しております。
「ほーら、高くて楽しいっしょー?」
「そ、そんな事ないわい……」
あっ、なんだか嬉しそうです。
「ほら、恥ずかしがらずに両手を広げてみなよー」
「ううう……その手に乗るかーっ!」
ふふっ、口では嫌がってても笑顔で両手を広げております。
「ほれー、走ると風切って楽しいでしょー」
ヨミちゃんがその場を円状に駆けると、女の子ももうテンションマックスですよ。
「わーい、ものすごく楽しいぞー!」
「ええ……?」
ですが、先程まで気難しかったですのでどうも腑に落ちません。
「わーい、ぶんぶーんだぞー」
「キーンでしょ」
「もう……どういうこと?」
だけど二人が楽しそうだし、どうでもいいかな。
わたしも釣られて笑っちゃいましたし。
ですが女の子を充分遊ばせて地面に降ろしたその後と言えば、わたしは散々過ぎるほど説教され、ヨミちゃんは口笛を吹いている間際に頭を杖で叩かれて叱られましたとも。
それでも女の子……いいえ、ロゼッタおばあちゃんの屋敷へ案内されれば、とっても美味しい紅茶と不思議な縞模様のクッキーを振舞われるなどの手厚い歓迎を受けましたので、叱られた事なんて何処かへ吹き飛んじゃいました。
「それで、お前さん達は何しに来たのだ?」
「あっ、実はですね……」
「ミントがここにやって来たって聞いたんだけど」
「なるほど、そうだったのか。だがミントならお前さん達が来る少し前に花を置いて帰ったぞ」
ロゼッタさんは机に飾られた赤いシナジー花に注目しています。
「あの、ごめんなさい。道は一つしか無いのにミントさんとはすれ違わなかったですよ?」
「そーだね、路地裏もやけに静かだったし」
わたし達が困っていると、ロゼッタさんも釣られて困惑しているようです。
「それはおかしいな。本当にすれ違わなかったのか?」
「マジでですよ、おばあちゃん」
「その、本当なんです」
「分かった、少し嫌な予感がするからわしも一緒に探そう」
ロゼッタさんは椅子から立ち上がると赤いとんがり帽子を被り、机に掛けてある木の杖を手に取りました。
「あっ、お願いしますロゼッタさん」
「ありがと、おばあちゃん」
「ふん、いつもわしの話し相手になってくれるミントのためだ」
「あう……」
どうしてこの人、こんなに性格がキツイのかな。
「いのりん、そんな悲しそうな顔しなさんなってー。おばあちゃんはただ素直じゃないだけなんだってば」
「コラ、お前さん!」
「おばあちゃん、そうなの……?」
涙目のわたしがロゼッタさんに目を向けると、バツが悪そうに顔ごと逸らしました。
「ふん……悪かったな。素直になれんババアで」
「い、いえ、そんなっ。わたしの方こそ失礼な事ばかり言ってごめんなさい……」
わたしが謝りますと、ロゼッタさんが照れ臭そうに右手を差し出します。
「あの、これは……?」
「ほれ、仲直りの握手……早く握らんかい!」
「あっ、ごめんなさい」
早く握り締めなきゃっ。
「痛たたたたたた! バカもん強く握りすぎだあああ!」
「あっ、ご、ごめんなさい!」
ひいいっ、力の制御を間違えました。
「この怪力娘め……。まあよい、これでおあいこじゃ」
「あっ……。ありがとうございますロゼッタさん!」
嬉しくて思わず、何度も頭を下げてしまいました。
「ふん、さあ行くぞお前さん達。時間が勿体ない」
「そうだねおばあちゃん。じゃあ案内お願いしまーす」
「お願いしますねっ」
「このオババに任せとけ!」
ロゼッタさんの屋敷を出たわたし達三人は路地裏を何度か迂回しましたが、やはりミントさんの姿が見当たりません。
「ふむ、本当に見当たらんの」
「やっぱりいないっしょ」
「困りましたね……」
そんな時、建物同士の隙間がふと気になって注目してしまいました。
この隙間でしたら、小さな体のミントさんが入れますし。
「あの、二人とも……」
「なんだい?」
「どうかしたの、いのりん」
「そこの細い隙間道……ミントさんが通れたりしないかな?」
隙間を指差すと、二人ともそこに注目してくれます。
「ああー……確かに通れるわ」
「そうだな、ミントならばこれぐらい余裕だの」
「やっぱり、そうですよね」
わたし、いま冴えてますよねっ。
「では、わしが見てこよう。お前さん達じゃ大きすぎて通れないしの」
なんでわたしの胸に注目するんですか二人とも!
「そんな目で見ないでください……」
「あははー。それじゃよろしくね、おばあちゃん」
「任せろ」
ロゼッタさんは体を横にし、隙間道に入って行きました。
「何があるか分からないですから、気を付けてくださいね」
心配で声を掛けたのですが、返事はありません。
「あれ、返ってこないね……」
「きっと足元に集中してて聞いてないんでしょ」
「なるほど」
「だからあたし達はおばあちゃんが帰ってくるのをここで見守ろう」
「うんっ」
わたし達は実時間で五分程待ってましたが、ロゼッタさんは未だに帰ってきません。
「時間掛かってるね……本当に大丈夫かな」
「んー、奥までけっこう距離あるんじゃない?」
「そうだよね。まさか危ない目に合ってるなんてないよね?」
だとしたら、わたしは罪悪感で堪らなくなります。
「おばあちゃんならきっと大丈夫。だからそんな悲しんじゃダメだってば」
「そうだぞイノリ。そんな顔されるとこっちまで気が落ちるわ」
「ロゼッタさん!」
「わっ——コラお前さん!」
ああ、ロゼッタさんが帰って来て本当に良かったです。
思わず抱きかかえてしまいました。
「ご無事で本当に良かったです……」
「まったく……わしはお前さんのオババでは無いのだぞ」
「まあまあ、おばあちゃん。いのりんったら結構心配性なところあるからさ。許したげてよー」
「ふん、今回だけだぞ……」
しばらくして我を取り戻したわたしは、ロゼッタさんに平謝りしてしまいます。
「ご、ごめんなさい!」
「ええいっ、わしはなんも気にしとらんからいちいち謝るな! まったく鬱陶しい子だの」
「あう……」
謝りすぎも良くありませんよね。反省しなくては。
「ありゃ、おばあちゃんの持ってるその花って、ミントが摘んでた花と一緒のヤツだね」
「ほ、本当だ……」
「ほう、お前さん達も気付いたか。このシナジー花が隙間道の一番再奥に数本落ちとった」
「そ、そんな……」
ミントさんの身が心配で仕方ありません。
「参ったね、そこから姿を消した可能性があるじゃん」
「お前さんの言う通りじゃ。まったく……こんな事ならわしが家まで送るべきだった」
ロゼッタさんも悔しそうです。
「おばあちゃん、他に何か手掛かりとか分かる?」
「うむ、一つあるがお前さん達には教えられん」
「そんな……どうしてですか?」
「決まっとるだろ。ミントの友人を危ない目に合わせる訳にはいかんのでな」
ロゼッタさんは喋りながら、木の杖を光り輝く黄金の錫杖に手品の様に変え、肩に担ぎました。
「それってつまり、おばあちゃん一人で危険な場所へ行くって事だよね」
「ふん。本当に抜け目ない奴だの、お前さんは」
「なら話は早いね。あたし達はこれでも罪人を裁く断罪者なんだ。ねえ、いのりん?」
「う、うん! 悪者を裁くのがわたし達の……ええと……使命なんです!」
わたしは背中に斜め掛けしていた太い鞘から大きな剣——業剣アニムスバスターを抜き取り、両手でグリップを力強く握り締めました。
ヨミちゃんも雷電という雷の鞭を手に取り、わたしと一緒に格好良いポーズをし、構えたのです。
「ほう……そうであったか」
「どうよ、おばあちゃん。この立派な姿を見てもあたし達を連れてかない気?」
「わ、わたし達はこれでも強いですからっ」
ロゼッタさんがわたし達の顔をジッと見つめます。
「うむ……練度も充分にあるようだな。本当に仕方ないのう。ならば共に行こうではないか。盗賊のアジトと化したジャンデー地下洞穴へとな!」
「はい!」
「引き続き案内お願いしまーっす」
これで、メインクエスト『消えたミントの行方を探せ!』のフラグが立ちました。
あとは頑張って、ミントさんを探しに行こう!
ですがその前に、わたしとヨミちゃんはロゼッタさんの要望で、ミントさんの家に立ち寄りました。
「おやおや、今日はよくお客さんが訪れますねえ……ハッ!?」
なんだかおばあちゃんがとても驚いています。
「ようババア、相変わらず元気しとるか?」
「ふんっ、この通り古傷のせいで動けんよ。そもそも何しに来た、この糞裏切り者め」
やはり動けないのですね。
いえ、そんな事よりいきなり二人が口喧嘩を始めるとは何事でしょうか。
「ど、どうして二人はいきなり喧嘩を?」
「さあね、昔何かあったんでしょ。まっ、殴り合いを始める訳でもなさそうだし見守ろうよ」
「う、うん。でもいいのかな……」
「大丈夫、むしろ止めようとしたら逆効果でしょ」
「うん……その通りだね」
本当にヨミちゃんの言う通り、です。
「ふん、相変わらず口だけは元気なババアじゃの」
「お前もな、そんな若作りまでしてみっともない」
「これは錬金術の副作用だがらな! 好きでなったわけではないぞ!」
「ふん、どうだかのお」
「ったく……ミントが賊に誘拐されたかもしれんと言うのに」
「それは本当か――ぐぇっ!?」
突然おばあちゃんが立ち上がろうとしましたが、前のめりに倒れてしまいました。
急いで助けなくちゃ!
「おばあちゃん、大丈夫!?」
「くっ……ロゼッタ、お前のせいでミントは攫われたのだぞ!」
それは違うと思いますが、迫力がありすぎて何も言えません。
「わかっとる。だからこそ、わし自らミントを助けに行くのだ」
「ふん、そんな幼体でどうするつもりだい? 満足に魔術も使えんだろうに」
「ふはは、この程度はハンデに過ぎぬ。寧ろ身体能力が高い分ババア姿の頃より全然マシじゃよ」
「はあ……昔から強情なヤツめ。イノリさん、ちょっといいかねえ?」
いきなりですか。
「あっ、はい。なんでしょうか、おばあちゃん?」
「あそこの阿呆は頑固で面倒なヤツだけどねえ。どうか最後まで見守ってあげて欲しいわあ」
あっ、なんだかんだ言ってロゼッタさんが心配なのですね。
「も、もちろんですっ。ロゼッタさんはわたしとヨミちゃんで最後までお護りしますっ」
「ほほほ、優しい子だねえ。まったく、どこぞの若作り老婆とは大違いだわあ」
でも、素直にはなれないと。
「けっ、口の減らんクソババめ」
「あはは……」
「うーん、こわいわー」
流石ヨミちゃん、他人事です。
「さあ、報告も済んだしさっさと行くぞお前さん達!」
「あ、はいっ」
「ほーい、行きまーす」
「それではおばあちゃん、行ってきますね」
わたしは深く頭を下げました。
「ええ、二人とも気を付けてねえ。ロゼッタ、あんたは若者二人をしっかりと護るんだよ」
「ああ、わしの魔術さえあれば二人は安泰じゃ。行ってくるぞ……タイム」
「ふん。簡単に死ぬんじゃないよ、ロゼッタ」
最後は名前を呼び合ってましたので、なんだか安心しました。
さあ、今度こそ洞窟へ向かいましょう!
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