君を待ってる
※主に独視線です。完結ものです。
『―――――、君は今何処に居るの?
ずっと……ずっとずっと待ってるよ。
お菓子だっていっぱい作って待ってる。
例え長い月日が経ったとしても、
ボクは待ち続けるからね!』
久々にそんな懐かしい夢を見てしまった。
起き上がると体が重たかった。
「……………。お菓子作らなきゃ……。」
「イタリア?どうかしたのか?」
そんなドイツの声は俺の耳には届かずキッチンへと向かう。
「…………………。」
俺はイタリアが呟いた言葉を不思議に思い問いかけたが返答が無かった。
ほぼ無意識なのだろうか、目にはいつもの輝きが見られないのだ。
イタリアの様子がおかしいと見た俺はイタリアの後を追い、キッチンまで来た。
「……。帰ってきて………。」
何故かその言葉が引っ掛かった。
イタリアの肩を掴んで軽く揺らした。
すると、揺らした途端にイタリアの体から力が抜けた。
慌てて支えたイタリアの体に触れて初めて気づいたことがある。
それは、イタリアが熱を出しているということだ。それに、苦しがっていた。
「イタリアしっかりしろイタリア!」
すぐに寝室に連れ戻り体を横たわらせた。
だが、どう対処すればいいのか俺には分からなかった。
仕方無く、イタリアが幼い頃にずっと一緒に過ごしていたと言うオーストリアに連絡を入れることにした。
「ドイツいきなり連絡を寄越してくるとは何事です。」
「あ、あぁ、実はな………。」
イタリアが熱を出した事、イタリアが呟いていた言葉、病人の対処法、それらを全て伝えた。
「……そうですか……もう、そのような時期なのですね………
あの子は毎年この時期になると体調を崩しやすいんです…。」
「そ、そうだったのか………」
「一日もすればきっと良くなりますよ」
やはりオーストリアはイタリアの事をよく知っている。
俺なんかとは比べ物にならないくらい。
俺は、自分の無力さを痛感させられた。
「……ドイツ、あなたが気負うことはないのですよ?」
一瞬その言葉に驚いた。オーストリアには、俺の考えがお見通しなのかと感じた。
「今あの子に必要なのはドイツ、あなたです。
あの子の側に居ておやりなさいこのお馬鹿さん」
俺はその言葉に励まされた気がした。
いや、気がしたんじゃない、励まされたんだ。
「お、オーストリア」
「何も言わなくて結構です。後は任せましたよ」
「Ja.」
そうして電話での会話を終え、急いでイタリアの元へ戻ると、寝かせたはずの相手が体を起こし、外を眺めていた。
「イタリア、まだ寝ていろ」
「....................」
イタリアに近付いて驚いた事がある。
それは、イタリアの目から涙が流れている事だ。
取り敢えず涙を拭い抱き締めた。
「し........い.......ま...............」
何を呟いたのだろうか、、、。俺には分からない。
だが、きっとそいつの事を想っているのだろうと
それ位は俺でも分かった。
「寝ていろイタリア」
イタリアの肩を押し、体をベッドに戻してやる
「...........................」
イタリアを眠らせた後も看病を続けた。
そして、いつの間にか寝てしまっていたらしい。
俺は心地の良い揺れによってその事を知った。
揺らしていたのは、熱を出して寝ていたイタリアだった。
「ヴェ、、ドイツ、起きて?風邪引いちゃうよお」
「イタリア、、もう熱はいいのか?」
「ヴェ?熱?俺熱出てたの?」
どうやらイタリアには自覚は無かったらしい。
額に手を当て確かめるとすっかり下がっていた。
「良かった。もう熱はないみたいだな」
「隊長、もしかしてずっと看病してくれてたでありますか?」
「あ、あぁ、そうだが、。」
「嬉しいであります!お礼にお菓子作ってくるであります!」
敬礼をしながらそう言ったイタリアはキッチンに向かっていった。
その時の俺の顔が安堵の表情に染まっていた事を、俺以外の誰にも知られることは無いだろう。