復讐は笑顔で隠すことができるのか
明るい丸い月が僕を見ている。
なんだか不思議だ。バカにされているような気もするし。共感してくれている気もする。だけど、心境としては怖い。
この薄暗い部屋で1人、月しか僕を見るものはいない。生憎、母親はずっと、下の部屋で、取り憑かれたように画面を覗き込んでいるし、父親は家より外の方が父親のようだ。
2人と話したのなんてもう一ヶ月前になる。
「飯、ろくに食ってないな。でも、どうせ今日も母さんは何も作ってくれていないんだろうな。」
口に出してみて、悲しくなった。
今日は僕の誕生日だというのに。
こんな狭くて薄暗い世界に1人だ。
自分を自分として見るのではなく、他人として見ている感覚に陥る。孤独と虚無感からくるこの目頭の熱さは、なんの意味も持たないことに僕は気づき始めていた。
当然、気にかけてくれる友人だって、恋人だって僕にはいない。初めこそ寂しくて辛かったけど、今じゃもう完璧にそれが当たり前になっている。
でも、それはやはり、自分に起きている物事全てを他人事のように感じているから。
母親にガミガミ文句を言われたり、
父親に愛が有るのかわからない笑顔でみつめられても、これは僕には関係のない出来事であり、どうでもいいことなのだ。
泣きじゃくったあの日が懐かしい。
愛を求めていたあの僕が、今もいるかと聞かれたら、それにYesと答えることは出来ない。