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2-4


翌日。


外来受付ロビーと言うのは、どうしてこう落ち着かないのだろうか。


雅人は、診断書を持ってこない限りは無断欠席で落第にすると教授からメールで告げられ、再び病院に戻ってきていた。

診断書は事務手続きで済んでしまう。

雅人が言う前から悠里が申請をしてくれていたことが発覚し、今日は受け取るだけでよくなった。

診断書のことを悠里に話した時に心底呆れられてしまったが、本来ならこんなことでいちいち落ち込んでいたら生きていけない。

しかし、雅人が発症した「感情アレルギー」のせいで、悠里がどれほど不快に思っているのかを心で感じてしまった。

いくらアレルギーであっても、症状は変わらない。

人の心が流れ込んでくるというのは結構つらい。

それを悠里に言ったところ、さらに呆れられてしまった。


「それさ、なんで昨日気づかなかったの?」

「え、なんで?」

「いいから早く行け」


半ば追い出されるようにして家を出てくることになった。

一度はアレルギーということで納得した問題だったが、やはりどうにかする必要があるかもしれない。

知らなくてもいいことが、この世にはあふれている。

診断書を受け取るついでに、越谷に話して精神科を紹介してもらうつもりだ。


平日でも病院は混雑している。

八割が年配の人で、越谷と話すにはかなり時間がかかりそうだ。

悠里は大学の授業が無いらしく、今日は一日家にいると言っていた。

帰って来る時に連絡しろと言っていたが、遅くなるのも連絡しないとまずい。

出直すこともできるが、きっといつ来ても同じ状態なのだろう。

一回座っていたカウチから立ち上がり、エントランスまで行ってから悠里に電話をかける。

家には固定電話を置いていない。

だから悠里の携帯にかけるのだが、これが彼女は恐ろしいほど早く出る。

毎回留守電行きになってしまう雅人からすれば尊敬に値する。


「何?」


いつものようにぶっきらぼうな返答が返って来る。

この雑な電話対応も毎度のことだ。


「悠里、もう少し丁寧に電話に出るようにしたら……?」

「用が無いならかけてこないで」


雅人は丁寧に言ったつもりだったのだが、悠里は気分を害したらしい。

軽く舌打ちした音がした気がする。


「違うんだ、切らないで!!」

「だから、何?」

「今受け付けしたんだけどさ、なかなか進みそうにないんだ」

「あっそう。 切るよ」

「え?」


あまりにも冷たいので雅人が悠里を引き留める。


「お昼間に合わないかもしれないんだ」

「別に、私昼ごはん作るなんて言ってないし」


気を使った自分が馬鹿だったのかもしれない。


「じゃあ、どうして帰って来る時に電話しろって言ったの?」

「帰りに買い物があるかもしれないからに決まってるでしょ」


はやり彼女に優しさは備わっていなかったようだ。

期待した自分が悪かったのだろう。


「お忙しいところ申し訳ありませんでした」


雅人は皮肉を込めて言ったつもりだったのだが、悠里には伝わらなかったらしい。

ほんとだよ、と言い残してさっさと電話を切られてしまった。


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