クーパの台帳の転章
これから語られるのは、クーパの眠りについた後の話しである。
ロは、クーパとの約束を護るため、最大の努力をし続けた。
周りの人間が誰もそれを止める事が出来ず、そして妃を迎える事も無く、四十前に過労でこの世を去る事になった。
最後の時は、クーパが眠る輝石の前で、眠る様に逝ったと伝えられている。
その後、直系を失ったホーク帝国は、後継者争いで騒乱を呼ぶ事になる。
その中で、ロの忠臣であったバンは、ロの後継者とも言われていたが、後継者争いを鎮めようと死力を尽くしたが、それは、多くの政敵を作り、輝石剣士の象徴的存在だった事もあり、地方に幽閉されて殺される事は、無かったが、自分の無力さに嘆き続けたと伝えられる。
彼に唯一の希望があったとしたら、幽閉先で生まれたといわれる、ロの専属のメイドだったムーメとの子供だったが、その子供もその後の動乱で、行方知れずとなる。
後継者争いの動乱は、クーパが眠る輝石を後継者の証として奪い合う形に移行して行った。
それをよしとしなかったウドンは、その命を懸けて、オシロとクーパの眠る輝石を人の目の届かない山奥に隠蔽した。
その際、多くの刺客と戦い、単独で五百を越す敵を倒し、死しても直、剣を構えたその姿は、後世にも語り継がれる事になる。
大陸を征服直前まで行った帝国の後継者争いは、熾烈を極め、調和竜の目覚めを呼ぶ事になる。
帝国民の多くが死に行く中、異界から来た勇者と輝石を扱う者達が死力を尽くし、後に邪神竜と呼ばれる調和竜を封印する事になる。
その後の大陸を治めたのは、皮肉にもクーパの事件の原因として人間扱いされず、帝国から逃げる様に隠棲し、大きな被害を受けなかったガールマン民族であった。
輝石を嫌う、ガールマン民族の政策によりこの世界から輝石を使った術が失われる事になる。
そして、邪神竜が封印された土地は、聖地と呼ばれ、調和竜の事に関する一切の記録を抹消され、全ては、邪神竜の邪悪な野望だったと伝えられ、人々は、その事を疑わず、新たな文明を作り上げて行くのであった。
長い時を経て、輝石から独りの少女が開放される。
その少女は、子供を身篭っていた。
生まれた子供は、新たな時代の子供とし暮らし、巫女の少女と恋をして、子供が生まれた。
その子供には、勇者を呼ぶ力を秘めていた。
調和竜が封印された後、傍若無人に暴れる竜すら倒す勇者を召喚する力を。
そして、召喚された勇者と巫女は、封印された邪神竜と戦う事になるのであった。