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『参ノ巻』予告
「あんたなんかしねばよかったのよ」
暗闇の中、音だけが響く。
「ころして、あげる」
うっとりと、蜜が広がるように。
「姫に差し上げます」
「は?」
「姫に」
「も、貰えないわよ、そんなの」
「ではその御髪が伸びるまで、預かっていてください」
「瑠螺蔚、すまん!この不甲斐ない父を許してくれっ!」
「無責任よー!」
聞き終わった瞬間、あたしは叫んだ。
「側室なんて、イヤー!」
「側室?」
「え、側室じゃないの?」
「正室ですよ」
「でもイヤー!」
「ねぇ、髪!」
「眠い。俺は寝る」
惟伎高はごろんと横になると、ぐーぐーと寝始めた。
「えっ、ちょ、ちょっと…何なのよ、もう!」
「知ってたわ」
あたしは何でもないことのように言った。
「…えっ?」
「まぁ、言うつもりはなかったけどね。あたしが、あんたたちを別れさせたのよ」
霧の向こうに、高彬の顔が見える。
…何よ、泣いているじゃない。男のクセして。
「僕が瑠螺蔚さんのことを忘れられるのはいつだろうな、由良」
「瑠螺蔚さん」
予告です。内容は変更するかもしれません。
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