第14章:ペンは剣、議会は戦場、されどロリ姉はシスコン瑠璃姫(いもうと)に跪くシスコンなルリヒメ
世界議会の大ホールに、大理石のテーブルを叩く木槌の音が響き渡った。数十基のスポットライトが、毅然と立つ一人の少女の小さな体に集中する。漆黒に金の縁取りがなされたフォーマルスーツを纏ったロリータ。その姿は人形のように愛らしいが、その瞳に宿る力強さに、居並ぶ名誉ある議員たちの多くが思わず目を逸らした。
「私がこれまで見てきた中で最も忌まわしいもの、それは国民の信託を得ていない、民意との繋がりを欠いた『安全保障顧問会議』です。彼らは世界議会と共に世界大宰相を選出する権限を持ちながら、歪んだ世界憲章の影に隠れ、いかなる責任も問われることがありません!」
その言葉が終わるや否や、議場は一瞬の静寂に包まれ、直後に抗議の嵐が爆発した。保守派の議員や平和維持軍の代表たちが、椅子を蹴立てて立ち上がった。
「議長! 抗議します!」
安全保障顧問会議の一員であるソムスィー夫人が、マイクがハウリングを起こすほどの悲鳴を上げた。「ロリータ議員の『忌まわしい』という言葉の撤回を求めます! 事実に反し、風刺的で、時と場合を弁えない、この10年間の世界平和を支えてきた主要な政治機関に対する侮辱です!」
世界議会議長は眼鏡を直し、溜息をついた。「……撤回していただけませんか。確かに、彼らの主張通り風刺的な表現と言わざるを得ません」
ロリータは冷ややかな微笑を浮かべた。
「分かりました、議長……。安全保障顧問会議が『忌まわしい』という言葉は撤回します。代わりに、『泥に汚れた顔』と言い換えましょう」
「議長! 『泥に汚れた顔』もです! 明らかな侮辱です!」ソムスィー夫人が机を叩いた。
「分かりました……。撤回して、『お綺麗な顔』にいたします」ロリータは無表情に答えた。
「嫌味な褒め言葉も控えてください、ロリータ議員」議長が制した。
「いえ……心からの賛辞ですよ。では、中断された続きを」
ロリータは議場を見渡した。彼女の背後にある巨大なホログラムスクリーンが点灯し、オレンジと濃い赤に染まった世界地図が映し出された。
「世界統治統計局(GBGS)が作成した『8大加盟国・透明性指数』によれば、世界中が同じ法の下にあるはずなのに、その執行は国ごとに異なり、質も解釈も不平等かつ千差万別です!」
ロリータは地図上の濃い赤の地点を指差した。
「この図を見れば一目瞭然です。高い透明性を示す緑から、危機的な汚職を示す濃い赤まで。私たちの世界の大部分は濃いオレンジから赤の圏内にあります。平和維持軍が書いた、皆様が声高に叫ぶ『汚職撲滅憲章』がありながら、汚職が有意に増加し続け、あまつさえ立件が困難になっているのは、奇妙だと思いませんか!」
「嘘だ! データの捏造だ!」政府与党の議員から罵声が飛ぶ。
「捏造ですか? どこがどう捏造されているのか、説明していただけますか?」ロリータは即座に切り返した。「2060年に制定された『第60次憲章』は、監査権限を縮小し、国民のリコール権を奪い、監査を困難にし、汚職を容易にしました。それなのに、なぜ今だに『撲滅憲章』を自称できるのですか? 『未来変革党』から『民衆党』、そして現在の『平等党』に至るまで、私たちは314回も憲章改正案を提出してきましたが、皆様はそのすべてを否決してきた! 心の底からお聞きしたい……皆様、一体何を恐れているのですか?」
「馬鹿げたことを……。我々は何も恐れていない」護界党の代表、セルと呼ばれた男が叫び返した。「国民が求めているのは安定だ! 政府が機能しなくなるような執拗な監査ではない!」
「誰のための安定ですか? 私の父が『未来変革党』を立ち上げたあの日、世界は闇に包まれ、自由は負の権力の鎖に繋がれていました。人々は政治家に絶望し、世界議会を無視し、民主主義がまだ出口になり得るのかと問いかけていました……」
彼女の声は、攻撃的なものから、柔らかくも力強いものへと変わった。
「あの日……父は私たちに目覚めるよう訴えました。政治は他人事ではなく、すべての人の呼吸そのものなのだと。父は、クーデターによって主権を強奪し、権力を世襲しようとした集団に立ち向かった勇敢なリーダーでした。彼は、最高権力を国民の手に取り戻すために戦ったのです!」
「過去の話はもういい!」抗議の声は続くが、ロリータは止まらない。
「政治の核心に触れてから1年2ヶ月と12日。私は涙の裏に隠された希望を見てきました。未来がいかに暗く見えようとも、私が決して投げ出さない唯一のもの、それは『イデオロギー』です。全人類が心を一つにして行動すれば、不可能なことなど何一つないのですから!」
ロリータは拳を固く握り、頭上に掲げた。
「そして来るべき選挙において、私は『平等党』を勝利に導き、すべての人にとって本当に『食べられる』新しい憲章を創り出します! 安全保障顧問会議に座る数人の白髪や黒髪の老人たちを守るための憲章ではなく、全世界の国民の生活を守るための憲章をです!」
「議長! これは議場での選挙運動だ! 直ちに中止させろ!」
「選挙運動ではありません、議長!」ロリータの声が轟き、周囲の騒音を沈黙させた。「私は不義に対する宣戦布告をしているのです! ここに座っている皆様への宣戦布告です! もし今だに国民から略奪した権力に固執しているのなら、覚悟しておくことです……。皆様が無視し続けてきた巨大な民衆の波が、この議場を柱一本残さず押し流すでしょう! 皆様は国民の声によって粉砕されるのです。自らの愚かな試みが無惨に崩壊するのを看取れるよう、せいぜい長生きすることですね」
ロリータは優雅に一礼し、野党側の雷鳴のような拍手と、与党側の殺意に満ちた視線の中で席に着いた。
蜂の巣をつついたような罵声がホールに渦巻いた。与党議員たちは彼女を指差し、卑猥な言葉で罵り、世間知らずの小娘だ、世界の安全保障体制に対する反逆者だと糾弾した。
彼女は深紅のソファに座り、静かに腕を組んだ。演台で見せた激しさは影を潜め、風のない水面のように冷徹な表情に戻っている。議長席を見つめるその瞳には、周囲の「名誉ある人々」が吐き出す呪詛に対する動揺など微塵もなかった。
「分を弁えない異端児め、体制転覆を企むとは」ある世界市民代表の男が、彼女の横を通り過ぎざまに吐き捨てた。
「身の程を知れ、青臭いガキが!」別の者が追い打ちをかける。
ロリータは軽蔑の眼差しを一度向けただけで、手元のタブレットを取り出し、次に採決される政策リストを確認し始めた。彼女の静寂は、燃え盛る炎に冷水を浴びせるようだった。彼らが熱くなればなるほど、彼女は冷えていく。
「静粛に! 皆様、静粛に!」世界議会議長が、ドームの天井に響くほど何度も木槌を叩いた。「ここは神聖な議場です! 市場ではありません! これ以上騒ぎを続ける者は、衛兵に命じて退場させます!」
混乱はようやく収まり、旧権力者たちの怒りに満ちた荒い息遣いだけが残った。議長は眼鏡を直し、緊張した面持ちで手元の書類に目を落とした。
「場が静まりましたので、次の議題に進みます……。次は『世界福祉基本予算配分案(ユニバーサル・ベーシック・ウェルフェア・アクト)』の提案と審議、および世界憲章第120条『加盟国の安全保障に関する規定』の改正案の検討です。次の提案者、登壇してください」
世界議会の熱気は、ナナが立ち上がったことで再び最高潮に達した。『世界察知党』の論客である彼女は、全世代型福祉案を支持するために立ち上がった。濃いグレーのスーツを整えるその仕草は、ロリータの冷徹さとは対照的な、躍動感と攻撃性に満ちていた。
「議長、私はこの福祉案を支持する立場から討論を行います」ナナの声は明快に響いた。「与党側は予算には限りがあると繰り返していますが、私が見るに、安全保障軍の秘密予算は過去最高を記録しています。国民を弾圧するための最新兵器を買う予算はあるのに、貧しい人々に米を買う予算になると、皆様は途端に『節約が必要だ』と仰る!」
「議長、抗議します!」与党代表のマルコ議員が勢いよく立ち上がった。「討論者は『国民を弾圧する』という言葉を使いました。これは重大な事実歪曲であり、不当な告発です! 平和維持軍は国際的な脅威を防ぐためのものであり、彼女が言うような用途には使われていません。撤回を求めます!」
ナナはマルコを真っ向から睨み据えた。
「あなたの仰る『国際的な脅威』とは、未来を求めてプラカードを掲げる学生や、医療費を払えない老人たちのことですか? あなたが潔白だと言うのなら、昨年度の軍備調達会計をこのテーブルに広げて見せたらどうです!」
「議長! 討論者は国家機密、安全保障の核心に触れています!」マルコは顔を真っ赤にした。「これは世界政府の最高機密です! 公表されれば人類の安定を損なう恐れがあります!」
「人類の安定ですか、それとも皆様の椅子の安定ですか?」ナナは議長の許可を待たずに切り返した。「それから議長、私は世界予算局(GBO)から流出した文書を持っています。そこには、災害被災者支援基金から安全保障顧問会議の『特別交際費』へと予算が流用されている事実が記されています……ウィナイ議員、あなたはその金で病院がいくつ建てられるか、ご存知ですか?」
「それは偽造文書だ! 議長、文書の出所を調査してください。討論者は卑劣なゲームをしている!」与党側から罵声が絶え間なく飛ぶ。
「卑劣なゲームとは、議場の外で人々が皆様の『売名のための配給』に列をなしている間に、皆様が控室で一本10万ドルのワインを飲んでいることの方です!」ナナは机を激しく叩いた。「議長、私は与党に一言だけ聞きたい……世界憲章第1条には『主権は人類にある』と記されています。それなのに、なぜ現実には、主権は皆様数人のズボンのポケットの中に落ちているのですか!」
「抗議だ! 激しい嫌味だ!」
「撤回しません!」ナナは議長の木槌の音に抗って叫んだ。「もし真実を語ることが嫌味だと言うのなら、この議場は国民に嘘をつき続けるだけの劇場に過ぎません! 皆様が私を妨害するのは、真実が明かされた時、皆様が権力の玉座ではなく、この10年間踏みにじり続けてきた国民の屍の山の上に座っていることが露呈するのを恐れているからです!」
彼女の瞳に宿る勇気は、他の自由主義派の議員たちを奮い立たせた。「採決を、議長!」ナナは力強い声で締めくくった。「誰が国民の側に立ち、誰がスーツを着た強盗の側に立っているのか、世界に示してやりましょう! タカハシ・ナナ、討論を終わります」
彼女が激しい感情の嵐の中に着席すると、ロリータは「よくやった」と言うかのように小さく頷いた。一方の政府側は、狼狽しながらこの採決を打ち切る方法を必死に探し始めていた。




