第10章:カナタと不人気な悩み相談部
くすんだ色合いのオーク材の開き窓が、時折吹き付ける午後の風に抗っていた。建物の外で擦れ合う木の葉の音に混じり、古い校舎特有のギィギィという木のきしむ音がかすかに響く。薄オレンジ色の夕日が、ほつれたカーテンの隙間から長く伸び、磨き上げられながらも歳月の跡を留める板張りの床に落ちていた。
光の筋の中では、目に見えない踊り子のように微細な塵が舞っている。何十年もの知識を蓄えた古い本の紙の香りと、廊下に落ちたピクンの花の淡く冷たい香りが混ざり合い、静寂と不気味さの境目にあるような奇妙な雰囲気を醸し出していた。
ここは学校の死角。ほとんどの生徒が存在すら忘れてしまった場所だが、そこには「青少年と超常現象の悩み相談部」が置かれていた。乱雑ながらもどこか惹きつけられる魅力のある部室だ。中央の長い木製テーブルには厚手のハードカバー本が山積みされ、壁には星図がテープで無造作に貼られ、色とりどりの瓶には奇妙な鉱石が収められている。これらすべては、カナタという少年の溢れんばかりの野心の産物だった。
カナタは、動くたびに抗議の声を上げるクッション付きの木製椅子に深く腰掛け、足を組んでいた。鼻の先までずり落ちた黒縁メガネをかけ、重要な予言を待つ賢者のような佇まいを見せているが、実際には壁にかかった時計の針がゆっくりと進むのをただ眺めているだけだった。
「世界が忘却した秘密の司令部へようこそ!」
カナタの声が静寂を破り、天井の高い部屋の隅々に響き渡った。彼は古い板で作った部活の看板から埃を払った。できるだけ「おどろおどろしく」書こうとした文字は、多少ゆがんでいるものの、彼のこだわりが感じられる。周囲には風の音以外に誰もいなかったが、それでもこの小さな王国に対する彼の誇りが揺らぐことはなかった。
風が少し強まり、ピクンの花の香りが濃くなる。それはまるで何かの前兆を告げているかのようだった。この永遠にも思える静けさは、実は大嵐の前の静けさに過ぎないのかもしれない。この古い教室での平凡な日常を、忘れがたい伝説の序章へと変えてしまうような嵐が。
実のところ、この部に公式な部員は彼一人しかいない。しかし、毎日の昼休みになると、この場所は食堂の喧騒を嫌う「特別な面々」が集まる拠点と化していた。
騒々しい家政実習のチャイムが鳴り響いた後、寂しいはずの午後の空気は、古い校舎の廊下を歩く足音で満たされた。部室のドアがゆっくりと開き、一見共通点のない、しかしこの場所ではお馴染みとなった面々が姿を現した。
まず、サエルが優雅で完璧な所作で入ってきた。彼女は磨き上げられた松の木製の弁当箱を、まるで中身が食事ではなく宝物であるかのように大切に抱え、中央の折りたたみテーブルにそっと置いた。わずかな振動さえも、中の料理という名の芸術を損なうのを恐れているかのようだった。彼女はテーブルの清潔さを一度確認し、満足げに薄く微笑んだ。
すぐ後ろから、魂が抜けかかったような姿のエンマが入ってきた。肩を落とし、先ほどの実習での「決死の試食」による極度の疲労が目に滲んでいる。彼は古い木製の椅子に倒れ込むように座り、舌に残る塩辛さと苦味を追い出そうとするかのように、長く深い溜息を吐いた。
同時に、ソフィアが図書館の空気感を纏って入ってきた。腕には外界からの盾であるかのように分厚い専門書を抱え、もう片方の手にはビニール袋に入った弁当を持っている。眼鏡の奥の瞳は紙面の文字に釘付けのままで、誰に挨拶するでもなく、日当たりの良い角の席に座ると、頭の中で静かに作業の計画を立て始めた。
続いて、驚くほど平然とした様子のケーレンが悠々と入ってきた。先ほどの授業の重苦しい雰囲気などどこ吹く風で、口には焼き立てのパンを頬張り、サクサクと規則正しい音を立てていた。彼女は壁に寄りかかり、今日これからどんな面白いことが起きるのかを見極めるような、冷ややかだが鋭い観察者の目で仲間たちを眺めていた。
最後尾を飾るのは、小さな体から溢れんばかりの活気を放つルリヒメだ。彼女は普通の歩き方ではなく、鼻歌に合わせてスキップをしながら入ってきた。手には魔法の杖のようにピンク色のイチゴミルクのボトルを掲げているが、以前と違うのはラベルを凝視するその鋭い目つきだった。「コーヒー」や「塩」が混ざっていないか、ボトルの口を執拗に嗅いで確認する。安全を確信すると、彼女は満面の笑みでエンマの隣に元気よく飛び込んだ。
松の木の香り、パンの匂い、古い紙の臭い、そしてイチゴミルクの香りが、蜂蜜色の陽光が差し込む部室で混ざり合う。公式な休息の時間が始まった。しかし、そのリラックスした空気の底で、全員が理解していた。先ほど起きた奇妙な出来事が、今まさにこの木製テーブルの上で話し合われようとしていることを。
「結局……今日も相談者は来なかったみたいだね、カナタ?」エンマが唐揚げの香りを漂わせながら弁当箱を開けて尋ねた。
「人は来ないさ! だがお前らが常連だろうが……っていうかお前ら、弁当を何箱用意してるんだ? 昼休みにもう食べたんだろ」カナタは潰れたようなサンドイッチを手に取り、腰を下ろした。「まあいい。今日はそれより重要な話がある……最近、俺たちの周りで起きている『異常事態』について会議をしようじゃないか」
「だが、その前に!」カナタは真剣な声で言い、ソフィアを恨めしそうな目で見つめた。テーブルの空気が一気に張り詰める。
「おいソフィア! はっきりさせようぜ。今朝のあれ……わざとクラスのみんなの前で俺に恥をかかせたろ!」カナタはテーブルを軽く叩いた。「俺の世界政府の秘密兵器説は、大衆を惹きつける魅力的な理論だったはずだ。なのに、お前が基礎地質学なんて持ち出すから、みんな俺をバカ扱いし始めたじゃないか!」
ソフィアは専門書から目を上げず、箸でサラダを冷静に口に運んだ。「恥をかかせたわけじゃないわ、カナタ。私はただ、科学の歴史から『非論理性』を排除しただけよ」
「お前は『この地域の断層構造と整合しない浅層振動の振幅値』なんて言ったんだぞ!」カナタは嫌味っぽくソフィアの声を真似た。「誰が理解できるってんだよ! たとえ俺が理解できたとしても、みんなが聞きたいのは秘密兵器とか宇宙人とか、ワクワクする話なんだ! 重なった岩石の話じゃない!」
ソフィアは本を「バシッ」と閉じた。その音にエンマが飛び上がる。彼女は眼鏡の位置を直し、氷のように冷たい視線でカナタを射抜いた。「自分の『役割』をカッコよく見せるために自然現象を捻じ曲げるなんて、実データを持たない負け犬のやり方よ、カナタ。お前が流した情報は、お前の脳内の知識と同じくらい穴だらけだったわ。……まあいいわ、どうせ教室で私が言ったことも、真実ではないもの」
「おっと……痛そうね」ルリヒメがイチゴミルクを啜りながらクスクスと笑った。
「あの現象は今の知識では証明できない。でもカナタ、あんたはデマを流して混乱させるばかりで、状況を分析し、今何をすべきか判断する脳みそが足りないのよ。私が介入しなかったら大きな問題になっていたわ。あんたの場合、『知識は深いが、バカは広い』と言っても間違いじゃないわね」
テーブルの雰囲気が再び変わった。ソフィアは箸を置き、表情を険しくした。「私が言っている奇妙な出来事……それは、先日ケーレンと家で遭遇したものよ。あの影は、単なる幻覚なんかじゃなかった」
「それに、あの妙な地震もね」ケーレンが付け加えた。「余震がなかった。それに震動の波形が、地殻の動きというよりは空気圧の衝撃に近かったわ」
エンマはしばらく沈黙した後、口を開いた。「僕も……妙な夢を見た。外の時間が止まっている教室の夢だ。でもその夢の中では、すべてが気味が悪いほどリアルだったんだ」
「カナタ、あんたはどう思うのよ。あんたの『想像力』を披露してみなさい」ソフィアは腕を組み、被告の供述を待つ裁判官のような態度をとった。「もしあまりにくだらない内容だったら、ここで物理学の図解を使ってあんたの面目を丸潰れにしてあげるわ」
カナタは咳払いをし、度も入っていない眼鏡をクイッと上げて信憑性を演出した。「そうだな……超常現象研究部の部長として言わせてもらえば、あれは誰かの戦いか、あるいは何かを奪い合っている世界政府の仕業かもしれない。生き物の本質は尽きることのない欲望だからな。進化の魔法は何百万年も前に失われたはずだが、今でもそれを探している奴らはいる。そして最近の異常事態を考えれば、その魔法が発見された可能性も否定できない」
カナタはもったいぶった声で語り始めた。「古代の文献によれば、神のごときプラトンは真実に到達するために哲学と魔法を築こうとした。想像してみてくれ。一人の画家が『ベッド』を描いているとする。プラトンの目には、その絵は最も卑しい存在だ。なぜなら、それは物体の模倣に過ぎず、その物体さえも完璧な『イデア』の模倣だからだ」
彼は弁当を頬張る仲間たちを見渡した。「プラトンは、多くの人間がこのレベルで生きていると考えた。作られた美に惑わされ、芸術に溺れ、噂話に興じ、スマホの画面を眺める。これらは真実から遠ざかった幻に過ぎない。深淵に触れることのできない水面のさざ波だ。だからこそ、存在の次元を高めるために『アセンシア・アルカナム』が生み出された。俺たちの基礎的な現実が単なる反映に過ぎなくなるまで高めるために……。確か『自然』に関する何かのデータもあったはずだが、本がシロアリに食われてボロボロで読めないんだ」
「自然、ですって?」興味なさそうにしていたルリヒメが、唐突に口を挟んだ。「それなら知ってるわ! 私の故郷、ルルシアにはそれを詳しく説明しているアニメがあるのよ。見てみる? 重要な情報があるかもしれないわ」
彼女は動画ファイルを開いたスマホをテーブルの真ん中に差し出した。弁当を囲む中、アニメの劇伴が微かに流れ、深遠な話をしようとしながらも妙なコミカルさが混ざった映像が映し出された。
『神とも呼ばれる至高の自然……』アニメの吹き替えが流れる。『神は、下層の自然が持つあらゆる存在の枠組みを超越している。「神」「解脱」「ブラフマン」といった言葉は、すべて我々の精神が作り出した比喩に過ぎない。低品質なメーカーが製造し、年末セールで50%引きになっている歪んだ鏡に映る影のようなもので、真の姿を映し出すことはできないのだ!』
『神を説明しようとする者は、言葉の邪見と無明、すなわち「喋りすぎ」に迷い込むであろう』
『神を概念に留めようとする者は、執着に囚われる。なぜなら神は、我々が理解する四聖諦の上にあり……真実の茂みの後ろに隠れ、我々が他へ目を向けるのを待っているからだ!』
テーブルの全員が呆然とした顔をしたが、アニメの音声は続く。
『至高の真理とは、SNSでの口論のような限定的な見解や、ひいきのサッカーチームのような二元論、あるいは「すべてはくだらないから美味いものを食いに行くべきだ」という哲学以外のあらゆる哲学によって到達できるものではない!』
『真の智慧とは生まれ持ったものではなく、あんたの使っている魔法が血圧の低下による幻覚ではなく、本当に効果があるのだと証明された時に得られるものなのだ!』
『神が縁起(原因によって生じるもの)であると言うことはできない。なぜなら神は、生まれるのを面倒くさがっているからだ。神が分析(壊れるもの)であると言うことはできない。なぜなら神が壊れるためには7つの書類に記入し、世界の理事会の承認を得る必要があり、その審査期間は全生物の寿命を合わせたよりも長いからだ!』
『そして、凡夫が理解する空でさえ、世俗を理解するために精神が作り出した概念に過ぎない。神はこれらすべてを超越し、定義不可能な無我であり、万物はカルマ、すなわち「トイレの順番待ちシステム」という運命の下にあるのである!』
アニメの最後はこう締めくくられた。『運命でさえも、より上位にあるもの、すなわち神の「何か面白いことを変えてみたい」という気まぐれの下にある。真の解脱とは、同じことの繰り返しばかりのタイムラインから抜け出し、外の新鮮な空気を吸いに行くことなのだ!』
画面が消え、しばらくの間、静寂が広がった。
「ええと……ルリヒメちゃん、それってギャグアニメじゃないの?」サエルが引きつった笑顔で尋ねた。
「大部分はデタラメでくだらないけど……」エンマが口を挟んだ。彼の瞳には真剣な色が宿っていた。「でも、アポファティック(否定神学)の本質が含まれているように聞こえる。僕が以前見たデータによれば……母さんが昔、そんな本を読み聞かせてくれたことがあった」
エンマは箸を置き、雲が厚くなり始めた空を見上げた。「アポファティックな自然とは、『定義を捨てること』で真実に近づこうとする考え方だ。『~である』と言う代わりに『~ではない』と言うことで、人間の限られた言葉による粉飾を避け、真実に近づく。もし神を『愛』だと言えば、それは神を人間の定義の中に閉じ込めることになる。でも『人間が理解できるものではない』と言えば、より真の姿に近づけるんだ」
「要するに……」ソフィアが分析を始めた。「カナタの言うアセンシアの魔法やエンマの夢、そして私たちが遭遇している異常事態は、この世界が……より広大な何かの『反映』に過ぎないことを示唆しているの?」
「そして私たちは、その反映から『引きずり出されよう』としている、とかね」ケーレンが壁の亀裂を見つめながら付け加えた。
雰囲気が重くなったのを感じたカナタが、慌てて状況を立て直そうとした。「おいおい! 反映だろうが真実だろうが、この最後の唐揚げは本物だぜ! 早い者勝ちだ!」
彼はルリヒメの抗議とエンマの呆れ顔をよそに、サエルの弁当から唐揚げを素早く奪って口に放り込んだ。
冷たい風が吹き抜け、遠い地平線に薄い霧が立ち込め始めた。午後の時間帯であるにもかかわらず、太陽の光は奇妙に弱まり、まるで世界が運命の調べに合わせて長い「まどろみ」へと入る準備をしているかのようだった。




