6話 ついて来るな
あの盗賊モドキの襲撃から特筆すべき事も無くわたし達の旅はリンデルへ付近へと差し掛かっていた。
「姉御、肩お揉みしやす」
盗賊モドキAのザムザが私の肩を揉みしだく。別に凝ってないんだが。3人衆の中では一番大柄な為か力が強い。普通に痛い。
「アリシアの姉御、髪のお手入れ失礼しやす」
盗賊モドキBのハイジが何故か私の持参した髪梳きを使い私の髪を梳かしだす。
なんか手慣れてるのが腹立つ。お前、梳かす髪ないじゃん。
「姉さん、足お揉みしやす」
盗賊モドキcのレントは何故か私のふくらはぎをそれはもう熱心に揉みだした。結構気持ち良いのが腹立つ。一番小柄なレントだがその分器用らしい。
まぁ、いい常識だとかそういった事はのちのち教育するとして社会貢献の意識があるのはいい事である。これからはギルドの手足となって働いてもらうのだから。
路頭に迷ったこいつらを冒険者として、ドナレスクで使ってやれば人手不足も解消され将来的にわたしは受付に専念出来ると考えたわたしは盗賊モドキ達に我がギルドで冒険者をする見返りとしてギルドへの登録料と当面の生活資金の貸し出しを行う取り引きを申し出た。
まぁ、他に選択肢のないコイツラはわたしの出した条件に乗るしかないので取り引きは滞りなく進み今に至る。
「よしよし。その調子でキリキリ働きなさい。後、これは常識的な事なんだけど、気安く年頃の乙女に触らないように」
先程から肩やら足やら髪の毛やらを無遠慮に捏ねくり回してくれてるが普通にセクハラである。
「やだなぁ姉御。こっちだってそれぐらいの分別は持ち合わせてますぜ。年頃の女になんか気安く触れませんて、ところで姉御。力加減はどうですか?強かったり弱かったら言って下さいね」
何を当たり前の事をみたいに言ってるけど君が力加減を聞いてきたわたしは24歳の乙女なんだよ。
「ザムザ、君が今、揉みしだいてる肩の持ち主は君にとってなんだろうね?ん?」
「はっはぁ。そんなの俺達の恩人に決まってるじゃないですか。なぁお前等!」
「へい!アリシアの姉御にはもう足向けて寝らんねえや、あ、姉御。枝毛がありましたんで少し切っときますぜ」
「本当、アリシア姉さん拾われたこの命これからは世のため人の為、そして姉さんの為に使わせてもらいますぜ。それより姉さんふくらはぎの筋肉凄いっすね。こりゃ世の男が憧れる筋肉でさ」
違う、そうじゃない。わたし24歳。ピチピチの女の子。いやちょっと待て。コイツらわたしの事本気で女だと思ってなくない?いや、でも姉御って……。いかんちょっと傷つく。
まぁ、いい。こいつらが冒険者として独り立ちすれば立て替えた資金は回収出来る。その上でわたしは楽が出来る。恩と借金で縛り付けておけば独り立ちをした瞬間に別の街に逃げられる事も無くなる。我ながら恐ろしい発想である。
「なんだかんだ言ってアリシアちゃんって人がいいんだよね」
皮算用を楽しんでほくそ笑むわたしにサムソンさんが聞き捨てならん事を言った。
「心外ですね。わたしが楽する為の先行投資です。ちゃんと後の利益を考えての行いなので、後この3人への投資にはギルドも噛ませます」
「ふーん。まぁ、それならそれでいいけど。ギルドがお金出すかな」
「出させます」
全部は無理かも知れんが何割かは必ずギルドへ出させる。
「しかし、君たち運がよかったね。ちょっかいかけた馬車にアリシアちゃんが乗ってて」
「「「へい!アリシアの姉御、一生ついて行きやす」」」
いや、ついてくんな。とっとと自立しろ。