姉
最初は天国だと思っていた高校も世間で夏休みになるころには退屈になっていた。代り映えのない日常、ほとんど見てしまった”ネトフラ”のアニメの数々、似たものばっかのソシャゲ、明らかに足りないのだ。いや、足りなくなってしまったのだ。刺激が、興奮が、期待が、、、高校受験真っ只中のあの時と比べて明らかに意欲が薄れていくのをより明確に感じる。
思えばあの時は死ぬ気で努力した。今まで特に何も考えずに過ごしていた昔の私には”死ぬ気で努力した”という出来事はまさに革命的というほかなかった。なんとなく友達と同じ部活に入って、なんとなく流行りの音楽を聴いて、なんとなく過ごして、、お姉ちゃんとは大違いだ。なんでもできる姉はいつも、、、
「映画見にいこー!」
部屋の外から天真爛漫な声とともに扉が開く。
「おねー、扉開けるときはノックして!!!」
そんなことは言いつつも、お姉ちゃんと話す時間イコール唯一の話す機会ってのもあって少し嬉しい自分がいる。
「えぇ↓、いぃ↓、がぁ↑、見ない?」
「急に?」
「いいじゃん、どうせ暇でしょ?、おや?それともなにかぁやることでもあるんですかぁ?」
「そりゃぁ、、、無いけど、、、」
「よっしゃー!決まりで、準備しといて」
「えっ、今から?」
「よく言うじゃん、”急がば回れ”って!」
使い方をバキバキに間違えているのに彼女は得意げな顔をしている。何にせよ私は映画を見に行くことになった。それも半ば強制的に。暇だったからいいけどさ、、、。