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5話 教室
私はまだ授業の始まっていない教室で優と二人っきり。
すごく静か。
太陽の光が優を指しているみたい。
まるでスポットライトのように…
「春…」
優はなにか言いかけたみたいだった。
「何…」
優とは目を合わせていない。
いや、合わせられない。
優が近づいてくる。
「…なあ、春…」
優は私の机の上に手を置く。
(これは、ヤバいんじゃ…)
「ゆ、優、どうしたの…」
私は混乱している。
優は今までこんなことなんてしたこと無い。
優の手が当たる。
「放課後…スニーカーショップ行かね…」
その瞬間、一瞬時が止まった様に固まってしまった。
「…は、え…」
優は顔を近づける。
「春…返事は…」
(優のそんな笑顔、見たこと無い。)
「うん…行く…」
私は深く頷いた。
彼の笑顔は太陽、いや新品のスニーカーのように明るかった。