24 名前を決めよう 後編
だが、その日まで結構時間がある。考えられるだけ考えておこう。
俺は、ベランダへ出た。少し暗くなり始めた南の空ともう暗い東の空、青、緑、黄、橙の淡い色をした西の空そして、少し離れたところに大きな道路があるため、車の走行音が聞こえる。そこに吹く、夕方の少し冷たい風。そのよさを感じる。こうしていると心が和んでくる。学校での喧騒を忘れ、独りで考えることができる。
「猫の名前…どうしようか…?」
やはり、そのことは脳裏によぎるので考えざるを得なかった。人間っぽい名前がいいのか、それとも普通に模様で名前を決めるのか、はたまたカタカナの名前にするのかと俺はとても悩んでいる。
こうして、いる間にも一刻一刻と時を刻んでいく。その間までに決めなければ……。
「麗杜君…!ご飯できたよ〜!」
「うん、今行くよ!」
俺は、ベランダから部屋の中へ戻る。流石に、この時期ではまだ少し寒い。本格的に考えよう…。
当日になってしまった……。考えたは考えた。だが、いい名前は思いつくことはなかった。それは名前がありきたり過ぎたというのもある。キラキラネームをつけることはないが。
あと、30分後で沙莉が来る時間になる。掃除はしてある。猫のところも一応は綺麗にした。けど、どうしよう…ソワソワが止まらない。名前を決められていない焦燥感などが入り混じった複雑な感情が湧いてきた。
ピンポーン
家のインターホンが鳴った。きっと沙莉が来たのだろう。俺はインターホン越しから会話を始める。
「はい」
「あっ、先輩。私です、葉山です」
「あぁ、今行くから待ってて」
そう言い終えて、俺は玄関に向かい、沙莉を出迎えた。
「やあ、待っていたよ、さあ上がってくれ」
「お、お邪魔します」
すこし、緊張気味だった沙莉は両手に荷物を抱えて、俺達の家に入った。
「沙莉ちゃん!久しぶりだね」
「智華さん!こちらこそお久しぶりです〜!また、遊びに誘ってください」
沙莉と智華さんが軽く挨拶をした。彼女らは、最初は喧嘩をした仲だが今は和解してすっかり打ち解けている。
「それで、早速本題に切り出すんだけど…いい?」
「あぁ…!すみません、そうですね、早速えっと、まずは…」
沙莉は猫を飼う上で必要なことを教えてくれた。ご飯をあげるタイミングや猫の仕草、毛づくろいなどの猫の習性などを教えてくれた。
「結構、あるんだな」
「はい、やっぱり生き物を飼うとなるとそれなりに責任などが入るので」
「そっか、やはり命を大切だね」
「はい、そして次に名前ですね」
「そうなんだよ、なかなかいい名前を決められなくてね…」
「そうですか、一応私の猫は飼い始めた時期が時期だったので「ツユ」って名付けましたけど……。」
「飼い始めた時か…」
「はい、先輩が拾ったのって今月ですよね」
「そう、今月の中旬ぐらいかな」
「なら『さつき』って、名前はどうですか?」
「『さつき』か…いい名前じゃん…!」
どうして、思いつかなかったんだろう。某有名アニメ映画のキャラもいたがいいだろう。
「ありがとう、沙莉…!」
「いえ、そんなことはないですよ」
沙莉にはしっかり、何か返そう。そう思い浮かんだ。
そうして、沙莉は用事を済ませたので帰った。
「これから、よろしくねさつき」
「にゃ〜」
どうやら、もう名前を理解したのだろう。名前を言ったら返してくれた。
もう、可愛すぎでは?
やはり、さつきはこの名前を気に入ったようだ。