12 いつも通り?な日常
文芸部に沙莉が入部して、2週間ほど経った。沙莉はすっかり、活動内容を覚えて小説を書いている。どうやら、頑張って異世界系を書くようだ。異世界系も俺自身書いたことあるがとても難しい。
沙莉の書いている様子を見ているとやはり、異世界での地名や通貨、人名などに苦労しているようだ。主人公の名前を決まっているが、物語の背景もどうしたらいいのかわからないようだ。
「れ、麗杜先輩、これってどうしたらいいですか?」
「ちょっと、見せて」
「あ、はい…最初しか書けてないですけど」
どうやら、異世界系ではおなじみの女神が転生させるところまでは書けているが女神の名前をどうするかというところが迷っているようだ。
「ふむ…名前の候補はあるの?」
「えっと、いくつかは…」
「正直、自分が付けたい名前を直感でつけたらいいよ」
「そういうもんですか?」
「そういうもんだよ」
そうして、俺のアドバイスを受け沙莉は無事に書けたようだ。まだ、物語は序章。頑張ってほしい。
高橋先生が俺達の部活を訪れた。
「様子はどうですか?」
「先生、心配しなくても大丈夫ですよ、というか珍しいっすね、先生が部室に来るのって」
「ええ、時間に余裕ができたので」
「どうですか?葉山さん部活には慣れましたか?」
「そうですね、麗杜先輩のお陰で慣れてきました。」
「そうですか、高校生作家として、これからも頑張ってくださいね、荒崎君」
といって、そのまま職員室に戻ってしまった。
「あ、あの先輩…さっき高橋先生が言っていた高校生作家はわかるんですけど…書籍化されたものとかあるんですか?」
「そうだな、『ヘル・エンジェル』って知ってる?」
「アニメ化をされていて、それに映画化を決定してる…もしかして…!」
「そう、作者は俺だ」
「ま、マジですかっ!?!?サ、サインくださいっ!!私、あの作品の大ファンなんですっ!!」
「お、おう…そうか」
こういう事を言ってくれるのは嬉しいが、恥ずい。
「はいよ、これでいい?」
「ありがとうございます!」
「恥ずかしいから、これ以降はなしでお願い」
「わかりました」
俺は、『ヘル・エンジェル』の作者として、バレたくないからこうして黙っているわけだが…
「このことは内密にしてくれないか?」
「はい、わかりました」
沙莉は何か察したのか何も聞いてくることはなかった。
俺は、まだこのことを隠し続けないといかない理由があるから。