4.【メンバーが増えました】
「ガラハド、大怪我をしたと聞いたがどんな状態だ」
「マシューすまん、リタに迷惑をかけた。肩に矢を受けて右腕が動かない。あと失血が多かったらしく長い時間は動けない」
「そうか、分かった。治療については私に考えがあるからあとで話そう。ところでこのまま代官やグレー商会にやられる訳にはいかない。手伝ってもらえないだろうか」
「マシュー悪いがこんなざまだ、手伝いたくても手伝えねえ、俺のことは放り出してくれていいので自分たちの身を守ってくれ」
「治療については考えがあるといっただろ。治療の前に相談したいことがあるんだ」
「ああ、分かった」
「ガラハドが心配してくれたように臨時の護衛には裏切られて、放置された。
その時、助けてくれたのがヨシトさんだ。素晴らしい人なので今後一緒に行動したいと思っている。できればガラハドにも行動を共にしてほしい」
「俺は知っての通り気ままに生きてきた人間だ。面倒くさいことを考えるのも嫌いだ。だがマシューのことは信じている、マシューが俺のために良いと思って誘ってくれているのもわかる。でもそのヨシトというやつは信じられるのか」
「ああ、信じられる。私の命を懸けてもいい。だから私を信じるように信じてほしい。と言っても会ってもいないのにそれは無理だろう。だから頼みがある、ヨシトさんには秘密がある、これからそれを明かすのでその秘密だけは守ってほしい。この点は約束してほしい。」
「わかったそれは約束できる。でもこんな状態の俺を誘って、そのヨシトというやつの迷惑にならないのか」
「ああ、大丈夫だ、じゃあヨシトさんに挨拶に行くぞ、立って手をつないでくれ」
マシューはガラハドと一緒にリビングに戻ることを念じる。
「ヨシトさん、こいつが私の親友のガラハドです」
「ガラハドさん、初めましてヨシトと言います。お加減が良くないとお聞きしていますので挨拶は結構ですのでソファーにおかけください」
「いや、え、マシュー、ここはどこだ、お前いつの間に転移魔法が使えるようになったんだ」
「説明はこれからするのでまずはソファーに座ってくれ。
ヨシトさん申し訳ありませんが治療と回復をかけていただけませんか」
ガラハドが青い光に包まれる。青い光が消えると続いて緑の光に包まれる。
「うわっ、なんだこれ、えっ腕が動く、動くぞ、体もだるくない、軽快になってる」
「ガラハドよう、治療については考えがあるといっただろ。それとこれが守ってほしい秘密だ、約束だぞ」
「あ、ああ、分かった約束は守る。ヨシト様ありがとうございます。もう動かないといわれていた腕が治りました。ご恩返しをさせてください」
「ガラハドさん、治ってよかったですね。でもお礼はマシューさんにしください。私はマシューさんの指示に従っただけなので、それから私のことは『ヨシト』と呼び捨てにしていただいて構いません。私もガラハドと呼ばせていただきますので」
「は、はい」
「マシュー、ガラハドへの説明をお願いしますね。
それから、今後のことを考えてマシューを管理スタッフとして登録させていただきますのでお手数をおかけしますがよろしくお願いしますね」
スピーカーがドラムロールをならし、「マシューが管理スタッフになりました。スマートホームのレベルが2+になりました。」と奏でた。
「続いて、レベル2+の変更点をお知らせします。管理スタッフは所有者の承認した範囲においてスマートホームの機能を所有者と同レベルで使用できます。
また管理スタッフの財産をスマートホームに移すことができます。
併せて移した財産用のスペースもスマートホーム内に構築されます。」と奏でた。
「ヨシトさん、店の2階でガラハドに説明しておきますね、そのあとで商業ギルドに行きますので準備をしておいてくださいね」
しばらくするとマシューが戻ってきた。ガラハドは理解が追い付かないようであったが秘密を守ることと、まだ具合が悪いふりをするため部屋から出ないように指示しているとのことだった。
「リタ、今からヨシトさんと商業ギルドに行ってきます。店は閉めたままにしておいて、誰が来ても開けないようにしてくださいね」
商業ギルドでの手続きは簡単に終わった。マシューはその足でアイリーンを迎えに行くとのことで、ギルドの前で別れ、私は店に向かって歩き出した。
「あのう、先ほどマシューさんと商業ギルドで手続きされた方ですよね、副ギルド長がお話ししたいということでお呼びですのでついてきていただけませんか」
(おかしい、私に用などないはずだ、でも断ると面倒なことになりそうだな。ここは素直に返事をしておこう)
「はい、承知しました商業ギルドに戻ればよいのですか」
「いえ、副ギルド長はグレー商会の会長なのでグレー商会にご案内します」
(ますます怪しい、お、ちょうど人並が途切れたな、ゴーホームっと)
家に戻ってレベル2+の機能を確認する。
これはずいぶん便利だが確認が結構手間だぞ。
考えていたらマシューと女の人があらわれた。
「マシュー突然どうしたのですか」
「ヨシトさん、申し訳ありません。アイリーンを連れて店に向かって歩いていたら突然変な奴らに絡まれて。隙を見てゴーホームで戻ってきた次第です」
「そうですか、ちょうどいいですね。治癒やメンバー登録をマシューさんがやってみてください。管理スタッフだとできるみたいですからね。それからアイリーンさんへの説明もお願いします。
ご挨拶は全部すんでからにしましょう。私はキッチンで夕飯の準備をしていますね。
今晩はリタさんも含めてダイニングで食事をしましょう」
夕飯メニューはタンドリーチキン、ナン、カレー、ラッシーにすることにした。
全部冷凍かレトルトなので私のすることは温めることと盛り付けることだけである。
ダイニングテーブルに食器のセットをしているとマシューとアイリーンが入ってきた。
アイリーンが私の前に跪き話始めた。
「ヨシト様、ありがとうございました、再び光を見ることができるようになるなんて考えてもいませんでした。
マシューから説明を受けました。私もヨシト様のお役に立ちたいと思いますぜひともお仕えさせてください」
「マシューさあ、なんか説明間違ってない?アイリーンさん信者みたいになっているし。アイリーンさんを治したのはマシューだよね。感謝はマシューにするように説明しなおしてよ」
「というわけで、アイリーンさん、ヨシトです、お友達ということでよろしく。あと私を呼ぶとき様はつけないでね、ヨシトと呼び捨てがいいけど、無理だったらせいぜいさん付け程度にしておいてね」
「も、申し訳ありません。ヨシト様、いえ、ヨシトさん。
もしかして夕食の準備されてますか?ご指示いただければ私がしますので、幸い目も治していただきましたし」
「そうですか、じゃあ手伝ってもらいましょうか。でもあとはチンして盛り付けるだけなので皆がそろってからにしますね」
3人そろって部屋を出ていく。ガラハドも呼んで四人そろったところでマシューにリタを呼びに行ってもらう。
「ヨシトさん、私に話があるってお兄ちゃんから聞………」
リタが固まってしまった。
「アイリーン、アイリーン目が明いているよ、見えるの見えるのよね」
「そうね」
「ガラハド、腕が動いてるよ、治ったの、それに元気そうだよ」
「そうだな」
「お兄ちゃん、お話って、なにこれ、どうして、どうしてなの。」
「リタさん、お越しいただいたのはこれからのことを相談するためなのです。
一緒に夕食を食べながら話しましょう。
マシュー、皆でダイニングに移動していてください。少ししたら私も行きますので」
遅れてダイニングに行くとリタがマシューに食って掛かっていた。
一応の説明は済んでいるようで私がダイニングに入るとアイリーンに促されしぶしぶ席に着いた。
「じゃあ、夕食を出しますので、あ、アイリーンさん手伝っていただけますか」
「ヨシトさん、私が手伝います。これでも料理屋の娘で料理も得意でしたので」
「ありがとうございます、じゃあみんなでやりましょう。ところで怪我の全快祝いも兼ねたいのでお好きな方はお酒も出しますよ。飲めない方だけ手を挙げてください」
もちろんだれも手を挙げなかった。
チンは私がしたが配膳はみんながやってくれた。ビールをゴブレットに注いで食事の準備が整った。食べるのはカレー系だし飲むのはビールだしまるで友達ときたキャンプ飯のようだった。
「く~、これビールって言ったっけか、冷たくて、シュワシュワしていて、苦くてうめえな、もしかしてお代わりしてもいいのか」
「いいですよ、でも食事の後に酒精の強いのを出しますからまず食べてください」
「これ、カレーとナンという食べ物ですか、すごくおいしい。私これ作りたい、作り方教えてください」
「ヨシトさん、実はリタは料理スキル持ちなのですよ、美味しいものを作れると思いますよ」
「それは楽しみですね~、でもごめんなさいこれ私が作ったわけじゃないので教えられないのですよ。作り方が書いてあるものはありますのでそれを見て作れるといいのですが。あとでお見せしますね」
食事が済んだのでリビングでグラッパを飲みながらリタへの説明と明日以降の相談をした。
皆に気を付けてほしいこととやっておくことの確認ができた。
まず家のスキルと私が転移者であることを知られないように行動すること。
あとは町を出るまでにマシューの財産を増やして家に備蓄することだ。
最低でも人数分の馬と馬車は買うことにした。
勿論メンバーが家の使い方の練習も重要だ。
マシューは店の権利を売りに出す。
売れたお金で馬車と荷馬車、それから馬と飼い葉を買う。
買ったものはガラハドと私が運び込む。
ガラハドには怪我が治ってないふりをしてもらう。
リタは女性の着替えと食料品を買ってもらう。(レトルトだけだと侘しいし)
アイリーンは目が治ったことがばれるとまずいので家の中で地球の書物を読んで過ごしてもらう。
教会で清拭魔法を使っていたので衛生関係に興味があるようだった。
準備は快調だった、店の権利はすぐに売れ、購入した馬車を家に入れると車庫が解放された。馬を家に入れると馬房が構築され、飼い葉も馬房に格納された。
馬に乗れないと逃げることも難しいので練習のために馬房で馬に乗ってからガラハドと最初の草原にでた。
しばらく練習をして一人で常歩ができるようになったタイミングで、いったん馬を降り手綱をガラハドに預けて家に戻る。
実は、管理スタッフの財産をスマートホームに移すことができます。っていう説明気になっていたんだよね。
(私の乗っていた馬よ馬房に戻ってこい)
と唱えると案の定馬房に馬が戻ってきた。
すぐ馬に乗って草原に戻るとガラハドが唖然としていた。
やったことを話すとそれなら飼い葉は買わなくてよかったなと指摘された。
まあ、草原が大雨の時にでも食べてもらうとするか。