3.【自宅がレベル2になりました】
突き飛ばされて地面を転がる私の目にゴブリンの持つ剣に貫かれているマシューが映った。
(私を守るためにマシューが、マシューを助けなくては)
「マシューと一緒に帰宅」 思わず叫んでいた。一瞬で倉庫に戻る
「マシューを治療してくれ」 再び叫んだ。
マシューが青い光に包まれる。青い光が消えるとマシューが目を覚ました。
「ヨシト様、良かった無事だったのですね。あれっ私は剣で貫かれてましたよね」
「マシューさんありがとう、私をすくために命を懸けてくれて。幸いにして家のスキルが間に合ったので安心してください。ともかくリビングに戻りましょう」
リビングで話を再開する
「ヨシト様にまた助けていただいたのですね、今度はまさに死に至る直前に救っていただいたのですよね。あの傷で命があるとは思っていませんでしたから。ありがとうございました。」
「いや、助けてもらったのは私だ、私の身代わりになってくれてありがとう。そして今まで申し訳なかった」
「申しわけないって、謝られるようなことはなにもされてないですよ」
「違うんだ、私はマシューさんをまだ疑っていたのでいろいろなことを詳らかにしていないんだ、必要以上に用心深くなっていたようだ。今まで隠していたことも話すのでそれを聞いたうえでマシューさんの態度を決めてくれると嬉しい。」
私はこの星の生まれではなく地球にある日本という国から来た転移者であること、私個人の能力はおそらく平凡で、マシューが崇めている力はこの家の能力であること。
この家の能力は登録さえすれば誰でも使えること。
それから現在のこの家の能力について。
これらを話し終えマシューの反応を待つ。
「わかりました。でも家の能力ってヨシト様に属しているのですよね。例えば私がこの家の能力を使えるようになってもそれはヨシト様のおかげなのですよね。
このような自分に不利になるようなことを教えてくださるヨシト様にますますお仕えしたくなりましたし、こんなすごい能力が私にも使えるようにして頂けたら一層お役に立てると思います」
「マシューさん、ありがとう。私の生まれた国では仕えるという考え方はあまり一般的ではないんだ、なのでマシューさんには友達として、互いに支えあう関係になれると嬉しい。これからは『ヨシト様』などど呼ばずに『ヨシト』と呼び捨てにしてほしい。私もマシューと呼び捨てにさせてもらう。それから転移者であることはできる限り隠したいので協力してほしい」
「わかりました、私を友達と思っていただけるなんてありがたいです。ただ、呼び捨てにはできないのでヨシトさんと呼ばせてください。」
「ありがとう、ではまずマシューにはメンバーになってもらおう」
この時、家の照明が点滅した。
スピーカーがドラムロールをならし、「マシューがメンバーになりました。スマートホームがレベルアップしました。」と奏でた。
レベルアップの内容を確認する。
スマートホーム:異世界の家
レベル:2
所有者:ヨシト
使用可能スペース:ダイニングキッチン・リビング・寝室・応接間・客間・倉庫
スキル
外部接続2:所有者が行ったことのある場所と玄関を接続できる。(最初は草原)
:メンバーとして行ったことのある場所と玄関を接続できる
:玄関を通らずに接続できる場所直接に出ることができる
帰宅接続2:所有者が家に帰りたいと思うと家の中の好きな場所に戻れる
:メンバーが家に帰りたいと思うと家の中の好きな場所に戻れる
資源調達1:家にある消耗品が24時間後にすべて補充される。
アカシックレコード1:地球のすべての書物がディスプレイで閲覧できる。
治療3:所有者およびメンバーが帰宅すると怪我が直ちに治癒する
:所有者が指定したゲストの怪我が直ちに治癒する
回復3:所有者およびメンバーが帰宅するとステータスが全回復する。
:所有者が指定したゲストのステータスが全回復する。
通訳1が学習1に変化
学習1:メンバーを選択するとメンバーが使用できる言語とメンバーが認識している一般常識を瞬時に取得できる。
:言語を取得した後はディスプレイ表示を取得した言語に変換できる
:所有者は通訳機能のオンオフを随時切り替えられる。
使用者権限:権限1-所有者-異世界の家の機能をすべて使用できる
所有者は家の利用者の権限を設定できる
権限2-副所有者-所有者の承認で家の機能をすべて使用できる
権限3-管理スタッフ-未発生
権限4-メンバー-マシュー
:メンバーはホーム内を自由に移動できる。
:メンバーは自分の意志でホームの出入りができる。
:メンバーは屋内にあるものを使用できる
権限5-ゲスト-
ゲストは応接間・客間を移動できる。
(とりあえず言語の取得だな、そのあとマシューへの説明と使い方の練習だな)
マシューに説明して言語と常識を取得させてもらう。
そのあとリビングに映した大画面ディスプレイで機能の説明をしていく。
マシューは家の使い方を練習し私は一般常識を確認していく。
一般常識にステータス確認があったので自分のステータスを確認してみる。
【ヨシト】
LV1
人種:人族
HP:50/50
MP:10/10
攻撃:3
防御:3
体力:10
速さ:5
賢さ:200
職業:未取得
スキル:逃げ上手
低い、賢さ以外は4,5歳児並みだ。これだと一撃で死んでしまう。早々のレベル上げが必要だけど、それまでの間は防具を着こんで防御力を上げておかないとまずいな。
当面の安心を確保するために、髪の毛を茶色に染め、防刃ベストとネックブレースを身に着け、上から毛布を加工したローブを身に着けることにした。
マシューも家の使い方の確認を終えたので認識合わせを始めた。
「マシュー、明日には町に着くと思うが、私が町に入るにはお金が必要だと思うがどうやって手に入れようか」
「ヨシトさん、すみません秘密にしていたわけではないのですが、私は小袋程度の亜空間収納魔法が使えるのです。万一のためのお金を入れてありますのでこれを使いましょう」
「ありがとう、それから職業と身分証明書を得るためにギルドへの登録が必要だと思うが何を選べばよいだろう」
「そうですね私と一緒に商業ギルドに登録して職業を商人にしてカードを受け取りましょう。そのあと冒険者ギルドに行って冒険者登録もしましょう」
トヌムの町の門番はマシューの知り合いだったので私のこともあまり疑わずに町に入れてくれた。
「ヨシトさん、あそこにある3階建ての赤い屋根が私の店になります。あれっ店の前で何かもめてるぞ」
「すみません、この店に何か御用ですか」
「なんだ手前は、関係ない奴は引っ込んでろ」
たむろしていた破落戸のが私にすごむ。
「兄さん、生きていたんだ、良かったあ」
「もちろん元気さ、いったいどうしたんだ」
「え、お前はマシュー、死んだんじゃなかったのか」
「物騒なことを言わないでくださいよ、何か私が死ぬという話でもあったのですか」
「なんでもねえ、お前ら今日のところは帰るぞ」
破落戸がいなくなるのを確認してからリタに話しかける。
「ただいま、心配かけたね。こちらは私の危ないところを助けてくれたヨシトさんだ、店の中に案内しておくれ。あと店は閉めてしまおうか」
「リタ、すまないが話をする前にヨシトさんを3階の客間に案内したい。すぐに下りてくるので私の部屋で話をしよう。少し待っていてほしい」
ヨシトさんには3階の客間から家に戻ってもらい私だけ2階に降りると廊下で待っていたリタが話しかけてくる。
「兄さん、ガラハドがけがをして兄さんの部屋を一時的に使ってもらっているの。今も寝ていると思うので話は私の部屋で良いかな」
リタの部屋で話を聞く。マシューがいない間にマシューたちの周りはひどいことになっていた。
ガラハドはマシューが臨時に依頼した冒険者の名前を聞くと『マシューが危ない』と言って怪我を押してマシューを追いかけた。
ところが町を出た早々に、どこからともなく飛んできた矢に肩を射抜かれ、どうにかこうにか戻ってきたところをリタが見つけて看病しているとのことだった、もう右腕は動かないらしい。
教会にいるアイリーンは司祭が交代空いたせいで、新しい司祭から役立たずだから早く出て行けといじめられているそうだ。
リタはグレー商会から店を売れと迫られ、破落戸に商売を邪魔されたので衛兵に陳情に行ったそうだ。
陳情室に代官が現れ『マシューが死んだという情報が入った。一人で店の経営はできないだろうからグレー商会に店を売って私の妾になれ』と迫られたそうだ。
その時扉が開いてヨシトが入ってきた。
「リタさん、マシュー申し訳ない、心配だったので盗み聞きをしてしまった。
代官とグレー商会が店とリタさんを手に入れるために工作しているのは間違いなさそうだな。 今は皆の安全を図るため町を出て私の家に避難しないか」
「ヨシトさん、ご恩返しどころかこれ以上世話になるのは」
「マシュー、何を言ってるんだ僕たちは友達だろう。マシューの大事な人を助けるためならいくらでも僕を使ってくれ。
具体的にどうするかはマシューの考えに従うので好きなようにしてほしい。私はいったん家に籠るから」