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1.【自宅と一緒に異世界に転移しました】

 祖父が亡くなって天涯孤独になった。都会の会社でまじめに働いていたら祖父から電話があり、持っていた山が高額で買い取られたため戻ってきて資産管理をしてほしいとのことだった。


 年寄りの一人暮らしは危険だし、都会暮らしにも未練がなかったので20代にもかかわらず祖父との生活をSNSに投稿するのが唯一のルーチンというファイヤーのような生活に突入した。


 帰ってきて分かったのだが、田舎暮らしで純朴な祖父は、使いもしないものを進められるがままに購入していた。

 まあ、祖父の金だし、そこまで大きな金額でもなかったので自由にしてもらうことにして、私は山奥にあるため無駄にでかい家の防災対策とスマートホーム化に力入れていた。

 防災については社会インフラがいつ使えなくなるかわからない山奥なので水は地下水汲み上げ、電気は太陽光と風力を組み合わせた自家発電型にしてオール電化の家にした。超大型の冷蔵庫と冷凍庫に一か月は外に出なくて済む食料も備蓄した。

 防犯対策に力を入れなかったのは祖父が売りつけられたものの中にいろんな武器があったためだ。


 最後にスマートスピーカで全家電を管理できるようにして祖父も不自由なく暮らせる家が出来上がったと得心した数日後に祖父が亡くなった。

 祖父は十分に長生きたし最後は裕福な生活ができたうえ、かわいがっていた孫に看取られたせいか、満足そうな死に顔だった。


(明日からどうしようかな、生活には困らないし、特にやることもないから人の役に立つことでもやってみるかな)

 ぼんやりと考えながら目を閉じた。


 翌日の朝はすっきりとした目覚めだった。

 のんびり朝食をとってからようにいつものようにケーブルTVのスイッチを入れた。

 画面には砂嵐のようなものしか映らなかったのでチャンネルを変えた。

 どのチャンネルにしても砂嵐しか映らなかったのでとりあえず電源を切りパソコンを立ち上げた。

 起動画面が立ち上がったのでブラウザをクリックするとくるくる回る表示が出るだけで画面が変わらなかった。

 TVもPCもだめだとするとケーブルが死んだのかもしれない。


 状況を確認するために外に出ようと玄関を開けるといつもと違う風景だった。

 一度扉を閉めもう一度開けてもやはり見たことのない風景だった。


(落ち着け、重要なのは状況把握だ、まずここがどんなところなのか把握しよう)


 玄関を開いて見える範囲の景色を確認する。

 目の前は草原で、遠くに森と山が見える。植生は温帯のようだ。

 空を見上げると綺麗な青空だ。

 ここまで澄み切った空はここ数年見たことが無い気がする。


(な、なにっ、太陽が二つある、ここは地球じゃないのか、落ち着け、落ち着けまだ確認することはたくさんあるぞ)


 玄関を閉めて窓から外を観察することにした、不思議とどの窓からの風景も玄関からの風景と全く変わらなかった。


(落ち着け、今やるべきことは何ができるかを確認することだ)


 まず、外には出ずに家の中をチェックしていく。

 電気OK、上下水OK、食糧OK、通信NG、どうやら通信以外は今までと全く変わらいようだ。


 通信は死んでいるがスマートホームの機能は生きていたのでパソコンを立ち上げ、スマートホームのアイコンをクリックすると何故だかアップデートが始まり、あっという間に更新と再起動終わってしまいスマートホームの画面が立ち上がった。


 スマートホーム:異世界の家

 レベル:0

 所有者:ヨシト

 使用可能スペース:ダイニングキッチン・リビング・寝室・応接間・客間・倉庫

 スキル

 外部接続1:所有者が行ったことのある場所と玄関を接続できる(最初は草原)

 帰宅接続1:所有者が家に帰りたいと思うとダイニングキッチンに戻れる

 アカシックレコード1:地球のすべての書物が閲覧できる

 治療0:制御前

 回復0:制御前

 使用者権限:権限1-所有者-異世界の家の機能をすべて使用できる

 権限2-副所有者-所有者の承認があれば家の機能をすべて使用できる

 権限3-管理スタッフ-未発生

 権限4-メンバー-未発生

 権限5-ゲスト-未発生


(どうも、家ごと異世転移の対象になったらしい。次にやることは外の調査だがとりあえず家の中から時間の経過で外どのように変化するか観察してみよう)


 家の中から外を観察すること丸2日、1日は24時間で地球と変わらないが、太陽と月はそれぞれ2個ずつあった。


 3日目の朝、玄関を開けるとここ3日変わらぬ風景だった。

 水と携帯食料を大量に詰め込んだバックパックを背負って外に出た。


(久しぶりの土の感触、草を静かに踏みつけるとつぶれて足跡がついた、これも地球と一緒だ)

 こわごわ10歩ほど歩いてから振り返った。


(な、なにっ、家が、家がない。今出てきてたった10歩しか歩いてないのに家が見えない・・・・・いや、見えないだけであるかもしれない)


 パニックになりそうな気持を押さえて、自分の足跡をたどって10歩戻った。もう一歩踏み出すと家にぶつかるはずだが11歩目も何の障害もなく先に進めた。


(どうやら家は消えてしまったようだ)


 呆然と立ちつくしたが、まず家を探そうと、1歩目の足跡にバックパックから出したシャベルを目印にして渦巻状に歩きながら家を探したが半径100メートルの範囲には家はなかった。


(待てよ、確か帰宅接続1に所有者が家に帰りたいと思うと戻れるって書いてあったよな。切実に戻りたいぞ、スマートホーム君帰してくれよ)


 無事ダイニングキッチンに戻れた。


(いつでも戻れるならバッグパックに入れる荷物は最小限で良いな。だったら歩きやすさを最優先にして進んでみよう。待てよ、ダイニングキッチンに戻った時床が泥だらけだったよな。)


「家に戻るとき倉庫にも戻れると掃除が楽なのになぁ」

 ぼそっとつぶやいた。


 この時、家の照明が点滅した。

 スピーカーがドラムロールをならし、「所有者の指示により帰宅接続1が帰宅接続1+になりました帰宅時に帰宅場所を選択できます。」と奏でた。


「ヨシッ、心置きなく先に進もう」


 家にある武器の中からマチェットを取り出して草を薙ぎ払いながら草原を進む。


「痛っ」 草の葉で手を切ってしまった。

(まあ結構進んだから絆創膏でも張りに家に帰るか。倉庫に帰宅っと)

 思った通りに倉庫に帰ることができた。


 この時、家の照明が点滅した。

 スピーカーがドラムロールをならし、「所有者が怪我をして帰宅したため治療0・回復0がそれぞれ治療1・回復1になりました」と奏でた。


(治療1って……手を見ると傷が治っていた、何この効果、どうなってるか画面を確認しようっと)


 リビングに戻りスマートホームの画面を確認する。

 治療1:所有者が帰宅すると怪我が直ちに治癒する

 回復1:所有者が帰宅すると所有者のステータスが全回復する。


(ステータスってなんだ、まあ疲れは回復してるよな。もしかしてこれだと大けがしても家に帰れれば治るのかな、この世界では病気や老衰以外では死なないってこと)


 次の日から快調に草原を進んでいく。魔物とかに会うこともなかったので安心して

 外部接続1<所有者が行ったことのある場所と玄関を接続できる>を検証する。

 想像通り歩いたとこならどこにでも接続できた。


(すごいなこれ、はじめは自分で移動しなくちゃならないけど後はテレポートし放題だよな、でもまずは人に会いたいよね)


 数日間同じ作業をしながら進んでいくと少し先に橋が見えた。


(人工物があるってことは人も近くにいるってことだよな)


 喜び勇んで橋に向かっていくと橋の下に何かうごめくものがある。

 慎重に近づくとうごめくものは手足を縛られ猿ぐつわをされた私と同年代の男性だった。良く見ると体中に怪我をしておりかなり衰弱しているようだった。


(さすがにほっておけないよな、家に連れてけるかな……倉庫に帰宅っと)

 無事男を連れて倉庫に戻れた。


 この時、家の照明が点滅した。

 スピーカーがドラムロールをならし、「所有者が人を招き入れたことによりスマートホームがレベルアップしました。

 治療2の機能でゲストの怪我を治すことが可能です治療しますか」と奏でた。


「そりゃあ治すよ、そのために連れてきたんだし」

 声に出すと男の怪我がきれいに治った。


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