悪魔の光
悪魔の光。
その言葉を最初に口にしたのが誰なのかは正確にはわかっていない。
そもそも悪魔という言葉自体はこの世界にもあるものの、それが実際どのようなものを指すのかについてこの世界で統一された解釈は存在していない。
もちろん、人間世界でいえば、悪魔とは魔族と同義語であるため、魔族によってつくられたその光を「悪魔の光」と称するのは間違いではない。
だが、話はそう簡単なものではない。
なにしろ、それを口にしたかもしれない者たちはその直後すべてこの世の住人でなくなっていたうえ、それ以外のフランベーニュ人も誰一人として自分がその言葉を最初に口にしたわけではないと証言したのだから。
そうなると、当然その言葉を最初に口にしたのは、その「悪魔の光」を使ってフランベーニュ軍を攻撃した魔族となるわけなのだが、それがこの問題を複雑にしている要因なのである。
つまり、そうなるためには魔族が自らを悪魔と称したということになるわけなのだが、誇り高い魔族が自らを信仰する八百万の神々に抗う邪悪の者を意味する悪魔と称することなどありえないという高い壁がそこに立ち塞がるのだから。
結局その言葉を最初に発したのは、間近でそれを見て恐怖し思わず口にしてしまった魔族兵ということになっており、これに関してはいつもならどのようなことについても揉める歴史家たちもその説を支持することになる。
ただし、名がわかっている中でもっとも早くその言葉を口にした者はハッキリしている。
アルディーシャ・グワラニー。
つまり、この軍の司令官で自らの結婚相手にその光を顕現させるように指示をした者である。
多くの記録に、彼がフランベーニュ側にこの言葉を伝えたと残されているためこれは確定した事実である。
そして、このことがこの言葉の出どころは魔族であるという根拠の大きな理由なのだが、実を言えば、彼こそが真の意味でもその言葉を最初に口にした者である可能性は高い。
その理由はいうまでもないだろう。
おぞましきあの兵器の記憶。
もちろん実体験があるわけではない。
だが、それがもたらすものがどのようなものかという知識は、それに対する恐怖と憎悪ともに持っていた。
そして、その彼が、光の収束したあとに目の前に平がった光景を見た時に、憎しみを込めて、「悪魔の光」という言葉を口にしたことは十分に考えられるからだ。
もちろんそれは裏話的なものであり、この世界の部外者だけが知る事実でもあるのだが。




