隣国交流会
士官学校での生活も半年が過ぎた。
「来週、帝国で隣国交流会が催されます」
それぞれの学校で教師から発表があった。生徒達は皆楽しそうにしていた。
「確かあちらの学校の級長は皇子様ですのよね? 当然のことながらお美しいのでしょうね。もしかしたら求婚されることも……?」
アリスは一人の世界に入り込んでいた。そんなアリスに呆れながら、
「おいアリス、美しい男ならここにいるだろ?」とアダムが自身を指差す。
「まあシェーンも美しい顔をしていますわね。よく考えれば、リンくんも整った顔立ちをしているかも」
シェーンはともかくリンハルトの名前が出て自分の名前が出ないことにアダムは頭を抱えるのであった。
級長の話題に沸いているのは帝国の学校も同様だった。
「向こうの学校の級長は王子様ですって! 楽しみね!」
「レイナード様もかっこいいですけど、どちらがかっこいいんでしょうか?」と、カリーナとマチルダの二人は楽しそうに話していた。
二人の話を小耳に挟んだレイナードが二人の間に割って入る。
「そんなの、俺に決まってるだろ?」
レイナードの方を見ると、彼はドヤ顔でそう言った。
「やっぱイケメンはドヤ顔も嫌味がないなあ」
「僕もレイナード様みたいに自分に自信を持ちたいです」
「ギーヴ、お前だってイケてる顔してるぜ。それに、お前らもな!」
声高らかにそう言うと、レイナードは四人を一斉に抱きしめる。
「レイナード様は身分関係なく接してくださるので好きです」
ギーヴの言葉に、教室内は柔らかな笑いに包まれた。
隣国交流会当日。交流会は帝国で行われる。
両国を分かつ壁は取り壊されたが、王国は緑が生い茂る平原、帝国は石畳と国境はくっきりと分かれていた。
交流会の最初は聖イシリア大聖堂で皇帝と英雄について学ぶことだった。この大聖堂で二つの学校の生徒は初めて出会う。お互いの級長を見た女生徒達は黄色い歓声をあげていた。はしゃいでいると、大聖堂から二人のシスターが出てきた。
「聖イシリア大聖堂のシスター、ステラ=フォン=ベルセルクよ。よろしく」
「同じくシスターのロゼッタ=セラ=ストーンです。よろしくお願いします」
ステラとロゼッタは同時に頭を下げた。それに倣い、生徒や教師達も頭を下げる。
「では、早速中を案内しますね」
ロゼッタの案内で皆は大聖堂に入っていく。窓はステンドグラスになっており、外部からの光で中を美しく照らす。オルガンが置かれており、その上の壁には美しい男の像が飾られている。
「あの像はかつてヴァルト帝国を治められていた魔王ヴィルヘルム様よ。で、地下にアルベルト様とオスカーが眠っているの」
ステラの後に続き地下へと降りていく。地下も美しい内装だった。ステラとロゼッタは棺を開ける。開けられた棺の中を見た生徒達は、アルベルトとオスカーのあまりの美しさに息を呑んだ。
「綺麗ですわね。亡くなっているとは思えませんわ」
「そうだな。このまま動き出しそうだぜ」
アイザックはアルベルトの遺体を見つめていた。久しぶりに見るアルベルトは、昔から全然変わっていない。城で過ごした日々の記憶が、昨日のことのように思い出される。アイザックは泣きそうになったが、自分の手を抓り、何とか涙を堪えた。
そこから少し離れた所で、リンハルトを見つめる一つの視線があった。
その日の夜。ヴァルト城で会食が催された。料理は帝国一と謳われる料理長が作っているが、どうやって調べたのか、王国の生徒達が好きな料理も並んでいた。この時リンハルトは思っていた。右隣の席にリリアンがいるのは分かる。でも、何故左隣の席に皇子のレイナードが座っているんだろうと。だが、会食が終わるまで何事もなかったので、レイナードが隣に座っていたのは偶然だったのかもしれない。
会食が終わり入浴を済ませた皆は各々用意された寝室へと入っていく。ベッドに横になったが中々眠れなかったリンハルトは、一人部屋を出てバルコニーに行き星を眺めることにした。その後ろからレイナードがそうっと近付くと、リンハルトを抱き締めた。
「うおぉっ!」と思わず出た自分の野太い声にびっくりしたリンハルトは咄嗟に口を覆った。
「ははは、女みたいに可愛い外見とは裏腹に野太い声だな」
「もう、後ろから驚かされるの苦手なんですよ。そのまま死んじゃうんじゃないかと思ってしまうんです」
「流石に驚かして殺しはしねえよ。それにしても、お前可愛いな」
レイナードはそのまま耳にフッと息を吹きかける。リンハルトは「あっ……」と少し声を漏らし、彼を振り解く。
「僕、男性に興味ないですから! おやすみなさい!」
走り去っていくリンハルトを、レイナードは舌なめずりをして見つめていた。
「本当に可愛い奴」
翌日。リンハルトが目を覚ますと、まず最初にレイナードが目に入った。
「おはようリンハルト。よく眠れたか?」
レイナードはリンハルトの顔を覗き込み、優しく声をかける。
「レイナード様⁉︎ どうしてここにいるんですか?」
「俺のことはレイでいい。家族からそう呼ばれているんだ。それに敬語も使わなくていい。これは皇子の命令だ。お前のことはいつも見てたいんだ。俺にお前の色んな表情を見せてくれねえか?」
「それずるいよ。皇子の命令って言われたら絶対聞かなきゃ駄目じゃん。それに、色んな表情って? 口説き文句? 変なの」
「お前って結構言うんだな。うーん、この台詞、誰かに言われたことあるんだよな。誰かは思い出せねえが。ま、お前じゃねえってことは確かだな」
「当然だよ。僕とレイは昨日初めて会ったんだから」
二人がベッドの上で話しているとコンコンとノックが聞こえ、「レイナード様」と女の声がした。
「どうしたエルトリア」とレイナードは女の声に応える。
「朝食のお時間です。皆様は既に席に着かれています。レイナード様とリンハルト様をお待ちですよ」
「分かった。すぐ行く」
レイナードがそう言うと、エルトリアが寝室から離れていく足音が聞こえた。
「リンハルト、そういうことだ。この続きは今夜、な?」
「続きって何? 僕は君と何かするつもりはないからね!」
ダイニングに入ると、皆が一斉に二人を見る。
「リンくんったら、もう皇子と仲良くなりましたの? 意外と隅に置けませんのね」
最初に口を開いたのはアリスだった。クスクスと笑いながら言う。
「まあな。俺はこいつを一目見て気に入ったぜ」と言うと、レイナードはリンハルトの頬に軽くキスをする。
バッとレイナードから離れるリンハルト。そして、ダイニングの空気が騒然となった。
「レイナード、もしかしてお前男が好きなのか? 皇族ジョークってやつか?」
「そうよね。きっとジョークよね。男性同士の恋愛なんて認められるはずがないわ」
クリストフとカリーナの言葉に、ギーヴとマチルダは、そうなんですか?、という表情をレイナードに向けた。
「ジョークに決まってるだろ? 俺は男より女が好きだ」
「その発言もどうかと思うわよ」
カリーナのツッコミに全員が笑い、騒然となったダイニングの空気が一瞬で柔らかくなる。レイナードも笑っていたが、その笑顔はどこかぎこちなかった。
朝食が終わり、帝国と王国の合同授業が始まった。内容は魔道の授業であった。シェーン、アダム、アリス、リリアンは着々と力を着けていったが、他の生徒達は四人のレベルには勿論、魔力が目覚めるような兆しも見られなかった。
授業が終わると、レイナードはリンハルトの姿を探したが、彼の姿は見当たらない。それどころか、王国生徒の全員がいないのだ。不思議に思ったレイナードはまさかとは思いつつ、学校の裏に回る。そして、レイナードの予想は見事的中。リンハルト達が言い合う声が聞こえた。
「シェーン様、流石に言い過ぎですよ。リンハルトも大切な学友です」
「ザックは少し黙っていてくれないかい? 僕達は皆魔法を使えるのに、君だけが使えない。身内だけなら何とか我慢出来たけど、帝国の皆にもバレちゃって。僕は級長として恥ずかしいよ」
はあ、と大きい溜息を吐くシェーンにアダムとアリスが乗っかる。
「王国の恥晒しだよお前は」
「人の力には個人差がありますが、リンくんにはもう少し努力をしてほしいと思っていますわ」
「うん……。ごめん……」
三人に幼馴染を侮辱されたリリアンは日頃の怒りを吐き出す。
「何なのよ貴方達! 貴族のくせに寄ってたかってリンをイジメて! リンは恥晒しじゃない! 貴方達の方が王国の恥晒しだわ!」
それを聞いたシェーンがリリアンを殴ろうとする。リリアンが目を瞑りアイザックが止めようとした、その時だった。人影が横切り、シェーンとリリアンの間に立つと、拳を受け止めた。
「あら皇子様! 素敵♡」
「皇子がここに何の用だい? 君には関係ない。向こうへ行ってくれないか」
「その頼みは聞けねえな。女に手を上げるなんて、貴族以前に男じゃねえよ。この子の言う通り、お前らが恥晒しだ」
レイナードに強く言われたシェーンは彼の手を振り払うと、
「分かったよ、僕が悪かった! ごめんなリン、リリー。これでいいだろう? 行くぞザック!」と吐き捨てその場を去った。
シェーン達が見えなくなったのを確認すると、レイナードは二人の方を振り向く。そして優しく声をかけた。
「大丈夫だったか? いつもあんなこと言われてんの?」
「まあ……。でも、シェーンは家では次期国王として色々と期待されてるんだろうし、ストレスが溜まってるんだと思う。それを溜めすぎると体調を崩すし。僕で発散してシェーンが日々のストレスからちょっとは解放されるなら、僕は我慢するよ」
「なあ、こいつはいい奴なのか? ただの馬鹿なのか?」というレイナードの問いに、
「いい人と馬鹿は紙一重って言うわよね」と応える。
「俺だったら、お前に悲しい思いなんてさせねえよ」という呟きは二人に聞こえていた。
レイナードは顔を真っ赤にし、
「いや、今のは違うから! お前に言ったんじゃない。そっちの女に言ったんだ。どうだ? 今のかっこいい台詞、惚れただろ?」と咄嗟に言い訳をする。リリアンは何かを言いかけたが、レイナードは足早にその場を去ろうとする。だが、その歩みはリンハルトの前で止まった。
「もし俺を受け入れてくれるなら、今夜俺の部屋に来てくれねえか?」
セクシーな、そして心地よい低音がリンハルトの耳を刺す。同時にレイナードの甘い息が耳にかかり、リンハルトの色々な神経を刺激する。刺激された彼の体温は高くなるのを感じた。
「ねえ、今の台詞、リンに向けて言ってたわよね?」
リリアンはリンハルトに問うが、レイナードの囁きに心を奪われていた彼は上の空だった。
「ねえ聞いてるの? 今のリンに向けて言ってたわよね?」
「今の? ああ、悲しい思いなんてさせないってやつ? 確かに、僕の方を見て言ってたよね」
今日も無事に一日が終わり、夜も更けた頃だった。リンハルトはレイナードの寝室に近づいていた。部屋に向かっている時、彼は何度も耳にかかる甘い息、心地よい低音を思い出していた。思い出す度にあの感触達がリンハルトの感覚を刺激する。
部屋の前に着き、扉を開ける。レイナードは窓の方を向いてベッドに横になっていたが、扉が開いた音に気付くとベッドから飛び降りリンハルトに勢いよく抱きついた。
「まさか本当に来てくれるとは思わなかったぜ」
レイナードは抱き締める力を強める。身長差でリンハルトの顔はレイナードの胸に埋まり、彼の鼓動が速くなっているのを感じる。レイナードはリンハルトにキスをする。
「ちょっと、何するの?」
「相変わらずお前は可愛い奴だな」
まあこっち来いよ、とレイナードに手を引かれリンハルトはベッドに押し倒された。レイナードはその上に跨る。美形の皇子に見下されている。そんな状況が恥ずかしく、そしてどこか興奮を覚えたリンハルトは顔を背けたが、それも虚しく顔を両手で掴まれぐいっと戻された。
「恥ずかしいのか? 顔が真っ赤だぜ」
ははは、とレイナードは楽しそうに笑う。今朝のぎこちない笑顔とは違い、今回は心から笑っているようだった。リンハルトは思い切って聞いてみる。
「レイって、男性が好きなんだよね? どうして自分を偽るの? 今朝も冗談だって笑い飛ばしてたし」
笑っていたレイナードが急に真顔になる。その鋭く突き刺さりそうな冷たい目にリンハルトはビクッとした。その表情に怖がらせてしまったと、レイナードは彼の頬を撫でる。それはとても優しく、温かかった。
「そう見えるか? 俺だって、自分に正直に生きたい。ただ、やっぱり認められねえんだ、同性婚は。貴族は家を存続させる為に世継ぎを作らなきゃならないから特にな。当然男同士で子供なんて出来ねえし、男が妊娠することもねえ。アルベルトとオスカーは恋人同士だと聞いたが、二人も世間から冷たい目で見られてたのかな」
リンハルトに心配かけたくないのか平然とした顔を装っているが、心で泣いているのが分かる。頬に当てられた手を優しく握り返した。
❇︎
レイナードは帝国皇家の長男として生まれた。彼は貴族だからと偉ぶることなく、出自で差別しない優しい少年だった。そんな彼はある平民の少年と仲良くなった。少年と一緒にいると、楽しいという感情と、もう一つの感情が生まれた。
“俺はずっとお前と一緒にいたい。お前を離したくない“
これは所謂恋愛感情というやつだろう。とにかく、人といてこんな感情を持ったのはこの少年が初めてだった。
いつも通り二人で遊んでいたが、終始少年の顔は暗かった。どうしたのか訊いてみると、
「レイくん、僕ね、引っ越すことになったんだ。だから、もう君とは会えないよ。でも、離れても僕達は友達だからね!」
それは突然の告白だった。思いもしなかった別れに、レイナードの頭は一瞬真っ白になる。
「レイくん? 大丈夫?」
少年の呼びかけで正気に戻ったレイナードは、ある決意をした。伝えよう、お前が好きだと。
「なあ」
「何?」
「あのさ、俺、お前が好きなんだ」
少年も、レイナードの突然の告白に驚いていた。
「好きって、友達として?」
「違う。お前を見るといつもドキドキして、普段の自分が出せなくて、自分が自分じゃないような感じがするんだ。恋……だろうな」
その時だった。今まで柔らかく優しい表情だった少年が一転して顔を顰めさせる。そして、まるでゴミでも見るかのような目でレイナードを見つめた。
「僕のことそんな目で見てたの? 君男だよね? 何、男同士の恋愛って。気持ち悪いんだけど。ごめん、もう僕と関わらないで。君は普通の人だと思っていたのに……。さようなら」
そう言い捨てると、少年はその場から去ろうとする。行かないでくれ、という気持ちもあり、「待ってくれ!」と少年を呼び止めようと手を掴んだ。だが、
「離して! 僕に触らないで!」とその手は振り払われてしまった。
段々と遠のいていく少年を黙って見つめるレイナード。彼の初恋は幕を閉じた。
城に帰ると、父と母がレイナードの帰りを待っていた。最初に母が口を開く。
「レイ、あの子から聞いたわ。告白したらしいわね」
「いいかいレイ? お前は皇帝になる男なんだ。そして、世継ぎを作らねばならない。冗談で言ったんだよな? 男同士で子供が出来ることはないと、分かるだろう?」
「冗談に決まってるじゃん。ちょっと場を和ませようとしただけだよ。それなのに本気にしちゃってさ」
レイナードは、はははと笑い飛ばす。それを見た両親も笑い出した。
「良かった、お前は普通の子で」
「そうね。アルベルトは男好きの異常者だと言われていたけど。レイは普通に育ってくれて、わたしは嬉しい。わたしの子育ては間違っていなかったと証明される」
❇︎
人を好きになるのは普通のこと。だが、同性を好きになるのは異常。この考えに、レイナードは理解出来なかった。相手が誰であれ、人を好きになることは素晴らしい。それが当たり前になる世界を、レイナードは皇帝になった暁に創りたいと思っていた。
「アルベルトとオスカーの悲恋から大聖堂を作ったとか言っていたが、きっと皆鼻で笑ってるんだろう。男同士の恋はハッピーエンドになることはないのにって。俺はこの世界を変えたい。自由に恋が出来る世界に」
「レイはかっこいいね。僕は好きだよ、君のこと。勿論、男性として」
「え? 今なんて?」
別に聞こえなかったわけではない。はっきりと聞こえていた。聞き返したのは、それが空耳ではないことを確かめたかったのだ。
「だから、男性として君のこと好きだよ。二回も言わせないでよ。恥ずかしいんだから」
「本当か? こんな異常な俺を受け入れてくれるのか?」
「君は異常じゃないよ。それに、君に後ろから抱きしめられた時、どこか心地よかったんだ。あの時感じた心地よさ、初めてじゃない感じがして」
「初めてじゃない? 初めて抱いたのに変なことを言うな」
レイナードが大口を開けて笑う。そこにはもう悲しい笑顔はなかった。
「良かった。いつものレイに戻ってくれて。あと、僕のことはリンでいいから。大好きだよ、レイ」
「俺も。愛してる、リン」
二人はそのまま熱いキスを交わした。
この夜から交流会最終日まで、毎晩のように二人は共に夜を過ごした。そこでどう過ごしたのかは、二人だけの秘密である。
楽しい時は時間が早く過ぎるとはよく言ったもので、隣国交流会最終日。リンハルト達が王国に帰る日だ。帰るまでの自由時間、レイナードはリンハルトを庭の花壇に招いた。
「これ、最初に見た時から綺麗だなと思ってたんだよね。アルジナの花、小さくて可愛いなあ」
「よくこの花の名前知ってるな。帝国でしか咲いてねえが」
「そうなの? でも僕、これ見たことあるんだよね。どこで見たんだろう?」
「帝国に来たことあるのか? まあいいや。今日お前を呼んだのは、これをあげる為だ」
ほら、とアルジナの花のブローチをポケットから取り出す。
「俺の手作りだから少々不恰好かもしれねえが。受け取ってくれ」
「ありがとう! 大切にするね」
リンハルトはそれを自分の制服に付けた。目を輝かせ、ずっと見つめている。
「そんなに気に入ってくれたか?」
「勿論だよ。すごい嬉しい。いつもこれを見てレイのことを思い出すよ。……そうだ。今度、僕の村にも遊びに来てよ」
「そうだな。エルトリアに言ってみる」
「絶対だからね! 約束だよ!」
そう言うと、リンハルトは背伸びをしレイナードの唇に軽くキスをした。
「約束破ったら、僕のお願い何でも聞いてもらうからね」
「リン……。お前なあ」
「レイナード様、お楽しみのところ申し訳ありませんが、そろそろお時間です」
二人が振り向くと、そこにはエルトリアがいた。門の外には全員が既に集まっている。
「もうこんな時間か。楽しい時はあっという間だな」
「レイナード、今度は君達が王国に来なよ。とても豪華なおもてなしをするよ」
「そうだな。今度の交流会はそっちにお邪魔するさ。もうリンのこといじめるんじゃねえぞ」
「気をつけるよ」
二人の級長は固い握手を交わした。