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人間


その男はモリエンス・サルバトーラというらしい。

人間の街と亜人の街の貿易を円滑にするために、それぞれの仲を取り持ちに来た商人と名乗っている。

しかし、私はまず疑心を持った。なぜなら彼は亜人のフリをした人間だったからだ。

頭に付いている獣耳は微かに動きもしていないし、何より人間の匂いがするということで、それは瞬時にわかった。


人間。

私の父を殺し、母をおかしくしたのも恐らくあの主人、人間。あの葬式の日に見た人間の気色の悪い顔は忘れることはできない。もし人間が私たちに手を出さなかったら、父も母も姉も死ななかった。ずっと幸せな夢を見れた。

そう考えると途端に憎悪と怒りの熱が湧き出し、自分の顔が歪んでいくのを感じた。人間なんて。人間なんて大嫌いだ。

そして瞬時に、言葉が口をついて出てきた。



「私はお前について行くつもりは無い!!!!そんなお粗末な偽装で騙されると思ったのか?そんなわけないだろう!!!お前ら人間が私達の幸せを壊しておいて今更何を助けようって言うんだ!!!失せろ!!!!!」



私はとてつもなく酷いことを言ったと思った。

しかしその男はこう言った。


「…ごめんね。酷いことしちゃったね。」


その瞬間私はとてつもなく言ったことを後悔した。

1歩後ずさる。

二人の間に重い沈黙が流れる。


しばらくして男が言い出す


「じゃあ僕はもうこれで行くね…」


そう言い、男はその場を離れようとした。私は言わないといけないと思った。


「…ごめんなさい!!!一時の感情で貴方の好意を無碍にしてしまって…本当にごめんなさい…」


そう言い切らないうちに罪悪感と男の優しさに涙が出てきた。

男は言った。


「大丈夫だよ。確かに僕が悪くなくても同じ人間の誰かが君に悪いことをしたのは事実だから。しかもその人間は君の人生を壊したみたいだね。…僕に感情をぶつけるのもしょうがない…ほら、泣かないで、ハンカチ貸してあげるね。」


そう言って男はハンカチを出てきたので、受け取って涙を拭いていた。すると

ぐぎゅうう〜

空腹からか、お腹が鳴ってしまった。


「ははは!お腹空いてたんだね。どうだい?とりあえず一緒にご飯食べに行かないかい?ご馳走するよ!」

「すみません…」


男を良い人だと確証した私はとりあえずここに居ても死ぬだけなので、ついて行ってみる事にした。

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