私は学校帰りに夕暮れ時の土手沿いを歩いていた
彼女視点です。
先に読んで下さい。
私は学校帰りに夕暮れ時の土手沿いを歩いていた。
「あぁ、今日あいつから誕生日祝って貰えなかったな。」
土手沿いの風は強く、私はマフラーをきつく締め直した。
「あいつなんて、私の誕生日知らないだろうし。」
思い浮かべるのは、隣の席のあいつ。
いつも口をひらけば喧嘩になり、クラスのみんなから夫婦漫才と揶揄われるが、私は夫婦と言われてちょっと嬉しい。
今日学校で友達から「誕生日おめでとう」って言われた時は、あいつは私に背を向けて男子とバカ話をしていたし、その後も何も無かったかのように、「ヤベェ、数学の課題やってねー。おぃ見せてくれよ。てか写メ撮らしてくれよ」って私に言ってきた。
「バカじゃないの!見せてあげるからせいぜい書き写しなさいよ!」って返すのは当たり前でしょ。
もっと素直になればいいのかな。
心の中も木枯らしが吹いたように寒い。
「おーい、待てよー」
遠くから声が聞こえる。あいつみたいな声だなぁ。あいつの事思っているから幻聴が聞こえたのかな。
「ハァ・・ハァ・・おい、待てよ。」
突然、すぐ右隣から自転車のブレーキ音と共に呼び止められた。
あいつだ。
えっ!なんで!あいつの家は反対方向じゃん。
「おい、お前、今日、誕生日だろ。コレやる」
頬を真っ赤にしながらあいつが手渡してきたのは、綺麗にリボンが巻かれた大きめな箱。
「えっ、いいの?」
突然で驚いたけど、心の底から嬉しさが込み上げてくる。
箱は結構重い。なんだろう。
「ありがとう。ねぇ開けていい?」
「いや、もうあげたもんだし、煮るなり焼くなり好きにしてくれ。」
恥ずかしがっているのかな?
「もう私の物だから、煮たり焼いたりなんてしないよ。大事にするよ。」
「じゃそういう事だから、また明日学校でな。」
と言うと、自転車を反転させ、立ち漕ぎで急いで帰って行くあいつ。
「何が、じゃそういう事なの。」
そんな軽口を言いながら、あいつを見えなくなるまで見つめていた。私の頬が赤くなっているのは寒さのせいだけではないだろう。
「ただいま」
「あら、おかえりなさい」
台所から母さんの声が聞こえる。
私は、自分の部屋にダッシュで飛び込むと、早速、あいつから貰った箱のリボンを解く。
あいつ、私のことを思って買ってくれたんだよね。もうドキドキだ。
包装紙を剥ぎ、箱を開ける。
「はぁぁ〜あぁ?」
箱の中から出てきたのは「贈答用安納芋」
意味がわからない。あいつは私のことを気になっているのか、からかっているのか。
あぁモヤモヤする。
部屋のドアがノックされ、返事も待たずに開けられた。母さんだ。
「帰ってきたら、手洗いしなさい。あら〜美味しそうなサツマイモね。早速、焼き芋にしましょうね」
「ダメダメ。えーと、そう、このイモは焼いたり煮たりしちゃダメなの。蒸して欲しいな」
サツマイモは美味しかったが、あいつからのLINEで「俺の誕プレよろしく」に溜息しか出なかった。
続きの彼氏視点です。
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