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魔女姫争奪戦  作者: 方円灰夢
第7章 炎と雷
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【8】 二つの戦い

ブレンダが囚われているかも知れないドーム型の石館に到着したトルカ達は、そこの番人・妖婆ヒルニアと対峙することになった。

魔法結界を突破されたヒルニアは、トルカ達5人の侵入に気づき、新たに呪文を唱え、タイスが残してくれていった甲冑武者の人形を呼び寄せた。

その数十数体。

全身を金属甲冑で覆われた彼らは、見た目はヒトガタだったが、動き始めると人間ではないことがわかる。

それら人形兵士が、手に手に剣を持ってトルカ達目掛けてつっこんできた。


5人と言っても、実際に戦闘が可能なのはトルカとルルだけ。

セルペンティーナは兵士人形の中に入ってはいるものの戦闘経験はまったくない。

シュリクもウォリスも斥候向きで、戦闘力は著しく低い。

そんなわけで二人はセルペンティーナを庇う盾になるのが精いっぱいで、とてもあのまがまがしい甲冑武者と剣を交えることなどできない。


だが、ルルとトルカは闘志をむき出しにして、この甲冑武者に向かっていく。

「ようやく機会がきたわね」

トルカが嬉しそうに言うと、

「やっぱりこうやって剣や槍を交えるのが私たちの戦いってことよね」

とルルも飛び出していき、槍の柄で甲冑武者の剣を受け、はね返していく。


ルルが槍で甲冑武者の進路に立ちはだかると、トルカがその後ろから、大きなスイングで湾曲刀を投げた。

トルカの手を離れた湾曲刀はルルと向き合う甲冑の後ろへ飛んでいき、たちどころに数体の甲冑の首を落とした。

手元に戻ってきた湾曲刀をつかみながら、トルカが突進する。

首を落とされた甲冑武者が地面で蜘蛛のようにもがいていたが、トルカがその腕を踏み砕き、切り落としながら、ヒルニアが守る扉へと走っていく。


「もらったぁっ!」

まだ無事な甲冑武者が守ろうとする中をすり抜けて、トルカがヒルニアに迫り、飛び上がる。

咄嗟にヒルニアは新しい術を展開する。


ヒルニアの前に到達したトルカが跳躍。

そして刀剣一閃!

トルカの湾曲刀が妖婆の首をはねた...かに見えた。

たしかにヒルニアの首は胴体から切り離され、宙に舞ったが、その胴体は切り離された頭を受け止め、トルカの前に立っている。

「ちっ! 幻術ね」

そう言ってトルカは玄関わきの花園に植えられている野茨の近くに湾曲刀を投げる。

「ひっ」

何もなかったかのような空間から、ヒルニアが飛び出してくる。

それと同時に、首を抱えたもう一人のヒルニアの胴体が、春の陽炎のように揺れながら消えていく。


「その程度の幻術じゃ、私の目はごまかせないわよ」

トルカが湾曲刀を構え直すと、ヒルニアもまた幻術を展開しようとするものの、既に見切られているためか、なかなか発動できない。

「タネを知られた幻術なんて、そんなものよね」

トルカの目がヒルニアをとらえる。

ヒルニアは幻術発動のタイミングをすっかり失ってしまった。


これで障害が取り除かれた!

そう確信したトルカがヒルニアに迫り、その湾曲刀がヒロニアを真っ二つにした、かと思えた瞬間。

ガキン!

と何者かに湾曲刀が受け止められた。


驚いてトルカがその場からはね跳び、構え直す。

するとトルカとヒルニアの間に黒装束の女が片刃の剣を構えて立ちふさがっていたのがわかった。

まるで幻のように立ち現れたその姿。

一瞬トルカは新たな幻術が発動したのか、と思ってしまったが、そうではない。あまりの素早い動きに、まるで幻が生まれたかのように見えてしまったのだ。


そしてもう一人、ヒルニアの傍らに、派手な民族衣装の風体の女。

「ヒルニア、危なかったな」

と、その女、タイスが言う。

「タイス様、ポーシャ様、助かりました」

トルカの湾曲刀を受け止めた黒装束の女ポーシャが

「ノクトゥルナの目が正しかったってことか」

こう言って湾曲刀の少女と向き合った。




一方こちらは魔王軍後方馬車隊。

向かい合う二人の宝玉少女。

炎の魔神魔焔公を取り込み、高熱の赤い炎に包まれる少女ニレ。

対するは強力な雷撃で周囲を破壊し、青く発光する少女レレカ。


ゲレス隊の獣人、妖精兵、魔法使いと言った面々は、いままさに目の前で見せられたレレカの雷撃のすさまじさを見て、ただ遠巻きに眺めているだけ。

にらみ合っているだけかのように見えて、二人の間のエネルギー量はどんどん増加していく。

ニレの周囲では大地が熔け、溶岩流のようになっている。

レレカの周囲には雷撃それ自身が光を放ち始め、その高熱を押し戻そうかとしているかのよう。

二人の少女それ自体は微動だにせず、といったところだったが、両者から発せられる魔力、エネルギーはどんどん増大していった。


ゲルンもまたゲレス、獣人兵の長モーリーや、妖精兵のリーダー・ヒルペクと同じく二人の対決を固唾を飲んで見ていた。

しかしその頭の中では、この雷撃の宝玉少女を眺めながら、この力の正体、力の源泉について思考が走り回っていた。

魔力、エネルギーが雷撃であることは間違いない。

それはおそらくニレの「魔神級」と同程度かそれ以上。

当然相手宝玉少女が取り込んだ「魔神級」の力、魔物が、雷神かそれに属するものだろう。

しかし西方に「魔神級」の雷撃術師がいる、というのは寡聞にして聞いたことがなかった。

そしてこの幼さ。

さすがに9歳のニレよりはほんの少し年上に見えたが、それでも「幼女」と言っていい範囲の見た目である。

つまり十年前エギュピタスが崩壊した時、ニレの母ナイラーガとともに宝玉を持ち出した巫女アルマリアではない。

するとこの少女はニレがナイラーガの娘だったようにアルマリアの娘、血族だったのか。

だがセルペンティーナは宝玉を継承させるために『器の少女』が集められ、その中から選ばれた可能性を指摘していた。

アルマリアと言う巫女にもともと雷撃の力があったわけではないだろう。

だがそうすると、この雷撃術は、ニレが魔焔公を取り込んだように、この少女が取り込んだ力なのか。

あまりにも情報が少ない。

そうはいっても今、目の前で恐ろしい力を顕現させているこの魔神そのもののような少女をなんとかしなくてはいけない。

自分達個々の剣技、魔力、魔術、などではとても歯が立たないことは明白だ。

とはいえ、このままニレにだけまかせておいていいのか?


ゲルンはゲレス、モーリーの傍らで、必死にレレカを観察していた。

我々の頭上に飛来してから、その武器、特性は徹底して雷撃だ。

それをなんとかしたい。

個々の武器、魔法、力では遠く及ばないにしても。


これほどの常識はずれの雷撃ではなかったが、ゲルンにも雷撃術を使う魔法使いの知り合いは何人かいた。

今、彼らの言葉を必死になって思い出す。

そうだ! あいつは言っていた。

雷撃は空気中を通過するのに膨大な魔力を要するが、真空中や水中ではそこまでではない。

鉄のような金属なども同様。

あるいは伝達しやすい形状、などなど。

そうだ、確かに雷は金属製の避雷針の上によく落ちる。

そして避雷針に落ちた雷撃は、避雷針から地面に繋がる導線に誘導され、力を逃がすことができる...。


ゲルンはモーリーに合図をして、落雷で黒焦げにされた獣人兵の剣を数本借りて、それをレレカの目から届かぬ背後に運び、大地に打ち付ける。

そしてそれぞれに鉄線を巻き付けて、先端におもりを結ぶ。そしてそれを構える...。



レレカの周囲に光球ができ始める。

高圧の雷撃がレレカのからだからあふれて、周囲を取り囲むように、同時にニレに放電できるように半球形の雷撃膜を作っていく。

対するニレもそれに負けないような高温の熱球を周囲に作り上げ、少しずつ拡大していく。

両者の球が接したところに光熱爆発が起こり、光と熱、音とと震動が周囲にこだまする。


「すごいわ、こんなすごい力と戦うのは初めてよ」

レレカが青い光の中で歓喜の声を上げる。

ニレの方もこんな恐ろしい相手は初めてだったが、集中するため、言葉は継げなかった。

「でも、私の方が強いわ」

レレカがそう言って、一気に雷球に力を与えた。

すると雷球が上に向かって浮き上がり始める。

ニレもまた熱球に魔力を注ぎ、半球から光球へと進化させ、こちらも浮き上がり始める。


赤と青の光球が、膨大な魔力に支えられ、放出しながら、お互いに相手を飲み込もうとして膨れ上がる。

だが球の大きさに少しずつ差が出てくる。

最初はほとんど同程度の大きさだったものが空中へと浮かび始めた頃から、レレカの青い光球の方が大きくなっていく。


二人の足が地上を離れる。

そして二人を包む光球も地上を離れた時、グレンは

「いまだ!」

とばかりに、鉄のおもりをレレカに投げつけた。

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